ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~   作:龍翠

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リコリスの歓迎パーティ

 

 魔族との戦争のせいで暗い雰囲気になることが多かった街だけど、今は真逆でどこも明るい雰囲気だ。久しぶりの大きなお祭りということで、大きな通りにはたくさんの露店が並んでる。

 

「お金は……いっぱいある、から……。好きなもの、どうぞ」

 

 なんて言ってもきっと遠慮するんだろうな、と思っていたけど、みんな遠慮なんてしなかった。好奇心の方が勝ったみたいで、たくさんの食べ物を購入してる。

 

「ふしぎ。おにく。やわらか?」

「こっちの果物、甘さがちょうどいいね。ケーキに使えるかも」

「ケーキ……!」

「あはは。また作ってあげるね、エリーゼちゃん」

 

 たくさんの食べ物を買って食べながら歩いていく。わたしは自分でも口数が少ない方だと自覚はあるけど、それでもとても楽しい時間だった。

 そして、それはやってきた。

 

「お、主役のご登場じゃな」

「お馬さんいっぱい!」

「いや、ミリアよ、せめて勇者を見てやれ……」

 

 馬に乗ったたくさんの兵士と、それに守られる馬車。その馬車の上では、ディアンとアクスさん、ミレナさんが笑顔で手を振っていた。

 そんな三人に群衆が大きく手を振っている。救世主とも言える勇者パーティは、今や世界中で人気者だ。だからこそ、今後は静かな生活というのはできないかもしれない。

 わたしがそれを嫌ってることを知ってるから、ディアンはわたしの辞退を受け入れてくれたのかも。

 

「これはまさしくエンディングって感じだね」

「ん。スタッフロール。さがす」

「それは探すものじゃないかな!」

 

 すたっふろーる、というのは分からないけど、そこまで重要ではないみたい。二人とも、言ってるだけで動こうとしないから。

 やがて、ディアンたちが目の前を通り過ぎていって……。そして、ディアンと目が合った。

 ディアンがわずかに目を見開く。クロちゃんたちにももちろん気が付いたはずだ。真の英雄たちに。でも何も言わず、にっと深く笑ってそのまま通り過ぎていった。

 

「うむ……。良い男じゃ。リコリスが惚れるのも分かる気がするのじゃ」

「え!? そうなのリコリスちゃん! だめだよ、お姉ちゃんは許しません!」

「お前は何目線なんじゃ……?」

「自分を母親だと勘違いする義理の姉目線」

「複雑じゃな!?」

 

 小夜さんとドラコさんの掛け合いに小さく笑いながら、見るものは見たからとわたしたちは屋敷に戻った。

 そして、次はわたしが向かう番だ。

 

 

 

 白い光球に手を触れると、あのお家に、クロちゃんの家にたどり着いた。

 

「…………。ああ……」

 

 なんだか、すごく胸が苦しい。来るのは二回目なのに、ここにまた来ることができて、本当に嬉しい。思わず泣いてしまいそうになる。

 

「リコリス。だいじょうぶ? いたい? くるしい?」

「大丈夫……。ありがとう、クロちゃん」

「ん……」

 

 クロちゃんの頭を撫でると、クロちゃんは気持ち良さそうに目を細めた。なんだかすごくかわいく感じられる。ドラコさんが過保護になるのも分かる気がする。

 クロちゃんに手を引かれて、家の中へ。キッチンを通って、大広間。そこにはたくさんの飾り付けがされてあった。

 見たこともない文字で大きな垂れ幕がかかっている。小夜さんが言うには、リコリス歓迎パーティ、と書かれているらしい。なんだかすごく恥ずかしい。

 

「今まではやらなかったんだけどね。魔王討伐のお祝いも兼ねて、ということでみんな張り切っちゃって。飾り付けとか、頑張ってたよ」

 

 垂れ幕も、部屋中にあるきらきらした飾りも、みんな魔女たちが用意したものらしい。お手伝いもいたらしいけど、率先してがんばってた、と。

 大きなテーブルに並ぶのは、たくさんの料理。小夜さんが腕によりをかけて作ったもの、だけじゃなくて、いろんな出前というものも頼んでくれたらしかった。出前というのがよく分からなかったけど。

 クロちゃんに促されて、椅子に座る。みんなも座ったところで、小夜さんが言った。

 

「それじゃ、改めて……。クロ、何か言いたいことある?」

「じゅるり」

「おーけーよく分かった! リコリスちゃんいらっしゃい歓迎するよ! はい食べていいよ!」

 

 みんなが一斉に手を合わせて、いただきますと言った。この国の食前の祈りらしい。わたしも真似をして、料理に手を付けた。

 

「わあ……」

 

 どれもこれも、すごく美味しい。何て言えばいいのか分からないけど、洗練されてる。わたしの世界だと長い戦争でそこまで贅沢ができなかったから、こんなに食を追求した料理は初めてだ。

 

「これ。オススメ。食べてほしい」

「んぐ……!?」

 

 すっと、目の前に差し出されたのは、茶色のどろっとしたものがかかった、お米というもの。カレーライス、というらしい。それを渡してくれたのは、リオさんだ。

 

「改めて。討伐おめでとう、リコリス」

「リオさんがそれを言います……?」

「ん……。私は何も知らない」

 

 さすがにそれは通用しないと思います。何も言うつもりはないけれど。

 カレーライスを食べてみると、少し辛みがあるもののとても美味しい料理だった。これは、なかなか……。

 

「ハンバーグ。おいしい。たべて。たべて」

「いややはりオムライスじゃろ! ほれ、食べろ!」

「アイスクリーム! 美味しいから!」

「ケーキも!」

 

 あ、なんとなく分かった。これ、自分の好物を食べさせて仲間に引き入れようとしてる、そんな感じだ。小夜さんが視界の隅で机を叩いてすごく笑ってる。助けてほしい。

 とりあえず一通り食べてみたけど、どれもすごく美味しくて、甲乙付けがたい。改めてすごい世界に来ちゃったものだと思う。

 そして、何気なくそれを食べて……。

 

「……っ!?」

 

 すごく、美味しかった。とろりとしたチーズというものがメインになってるけど、たくさんの具材も一緒に載せられていて、一つの味が主張しすぎないようになってる。味はもちろん、食感がすごく独特で、新鮮だ。これは、美味しい。

 ピザ、というらしい。すごくすごく美味しい。

 

「くっ……! リコリスはピザか!」

「ん……。カレー、美味しいのに」

「師匠。師匠。ハンバーグカレー。たべよ?」

「クロはかわいい。なでなで」

「んふー」

「うえへへへ……。みんなかわいいなあ」

「小夜さん、笑顔が気持ち悪いですよ……!」

 

 なんだかすごく大騒ぎになってきたけど……。共通してるのは、みんなが笑顔だということ。みんな、とても楽しそうだということ。

 その中にわたしも加われたことが、とても、とっても嬉しい。友達だと言えるのかはまだ分からないけど、でもわたしも、みんなと仲良くなっていきたいと思う。

 そう思っていたら、クロちゃんがとことこと歩いてきた。じっとわたしを見つめて、そして言った。

 

「リコリス。おともだち。おともだち?」

 

 ああ……。そういえば、うん……。言ってなかった。

 

「お友達に……なりましょう」

「ん!」

 

 にっこり笑ったクロちゃんの笑顔は、とてもかわいらしく、魅力的だった。

 




壁|w・)勇者パーティの魔女がお友達に加わりました。
人数が順調に増えています……。
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