ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~   作:龍翠

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閑話 探究の世界

 

 ぬくぬく。最近のクロのお気に入りの場所で、クロはお昼寝をしていました。

 クロが今いるのは、最近お友達になったリコリスの世界です。リコリスは大きなお屋敷に住んでいて、その一室をクロが自由に使える部屋としてもらっていました。

 日当たり良好の素敵な部屋です。普段は自分の世界にいるので家具などは置いていませんが、窓の側に柔らかいタオルケットだけは敷いています。そのタオルケットの上で、日向ぼっこをしながらお昼寝するのがクロのお気に入りなのです。

 お日様の温もりを感じながらごろごろしていたら、ドアがノックされました。

 

「クロちゃん……。お菓子、いりますか……?」

「いる!」

 

 がばりと起き上がって返事をすると、ドアがゆっくりと開いてリコリスが入ってきました。

 リコリスが持っているお盆には、湯気の立つカップとお皿に盛られたクッキー。砂糖の流通が少ないらしくてあまり甘くはありませんが、仄かな甘さというものが新鮮で、クロはわりと気に入っています。

 カップの中身はココアです。これはクロの世界から持ち込んだもので、リコリスのお気に入りの一つです。いつも手土産にとお姉ちゃんに渡されています。

 

「はい……。どうぞ」

「ん!」

 

 まずはクッキーを一口。仄かな甘みとさくさくとした食感がお気に入りです。

 少し甘みが足りないですが、そこはココアの出番。ココアを一口飲むと、いつもの甘さが口に広がります。至福の一時です。

 

「ふふ……。クロは……猫ちゃんみたい、ですね……」

「ねこ?」

「ねこ、です」

「にゃんこ」

 

 猫っぽく伸びをしてみます。体全身でぐぐっと。するとリコリスがなんだかおかしそうに笑いました。

 おやつの後は、お散歩です。そろそろ帰るつもりですが、その前にリコリスと一緒にお散歩することにしました。

 部屋を出て、一階に下りて外に向かいます。途中、リコリスの部屋を見ましたが、たくさんの魔法陣が描かれた紙が散乱していました。

 

「リコリス。けんきゅう、じゅんちょう?」

「ほどほど……です」

 

 リコリスは魔法の研究が好きなようで、この世界での新しい魔法をいくつも発明しています。呪文を使うものもあれば、魔法陣で使うものなど、様々です。

 その姿勢から、リコリスはこの世界では探求の魔女と呼ばれているようでした。

 そんなリコリスの最近の研究テーマは、転移魔法です。これはクロも協力しています。もっとも、クロは自分の友達を召喚する魔法をできるだけ説明しただけですが。

 それでもリコリスにとっては、新たなひらめきになったようでした。

 リコリスと一緒にお外に出ます。街並みはエリーゼの世界の街とよく似ていますが、活気はこちらの方が上でしょう。以前のお祭りの名残もあるのでしょうが。

 

「お、魔女様! 今日はお友達と一緒かい?」

「魔女様、この間の水の魔法、すっごく便利だよ!」

 

 そんな街でのリコリスの知名度はかなりのものです。勇者パーティに所属していた、ということもあるのでしょうが、それ以上に魔法の開発で有名のようでした。

 リコリスが開発した魔法には、生活に根ざしたものもたくさんあります。お手軽に水を生み出す魔法陣、火をおこす魔法陣など、たくさんです。

 リコリスも、そしてエリーゼもすごいと、クロは思います。クロは魔法でみんなの助けになりたい、とまでは思わなかったので。

 

「あれ? リコリス?」

 

 たまに買い食いしながらリコリスと散歩をしていると、そう声をかけられました。振り返ると、かっこいいお兄さんが立っていました。手には串焼き肉があります。おいしそう。

 

「ディアン。こんにちは」

「ああ、こんにちは。リコリスは散歩かな?」

「はい……。お友達と一緒に……です」

「へえ……」

 

 ディアン。勇者様。リコリスを助けに来た時に見かけた人です。じっと、クロを値踏みするような目で見ていましたが、ふっと表情が和らぎました。

 

「リコリスと仲良くしてあげてね」

 

 こくん、とクロは頷きます。なお、視線は串焼き肉です。

 

「えっと……。食べる?」

 

 素直に頷くと、ディアンはなんだか楽しそうに笑いながら一本譲ってくれました。

 ぱくりと食べます。香辛料でしょうか、ほどよくきいていて、美味しいです。はぐはぐと食べていたら、何故かリコリスに頭を撫でられました。

 

「んぅ?」

「ふふ……。いえ。気にせず……食べてください……」

「んぐ」

 

 お言葉に甘えてもぐもぐ食べます。おにくおいしい。

 

「はは……。リコリスが気に掛けるのもよく分かるね。かわいらしい子だ」

「はい……。クロちゃんはとっても、かわいい、です……」

「それに、とても美味しそうに食べるね……」

「はい」

 

 美味しいものはちゃんと味わって食べないと失礼です。お姉ちゃんもそう言っていました。

 そうしてクロが食べ終えると、近くのお店の人が寄ってきました。

 

「やあ、嬢ちゃん。すごく美味しそうに食べてたね。よければこれもどうだい?」

「こっちも食べな。美味しいよ」

「これもこれも」

 

 なんだかたくさん食べ物を渡されます。クロは少し戸惑いながらも、しっかり受け取って、食べられるものは食べていきます。美味しい。

 そんな様子を、リコリスとディアンはなんだか微笑ましいものを見るような目で見ていました。

 この世界は長い戦争が終わったばかり。だからクロのように純粋に食べることを楽しむ子は少なくて、だからこそ見ていて幸せな気持ちになるのだとか。

 そう後ほど教えてもらいましたが、クロにはよく分からないことでした。それでいい、とリコリスは笑っていましたが。

 

 

 そうして、帰る時間になるまで、ちっちゃい英雄とちっちゃい魔女は食べ歩きを楽しんだのでした。

 




壁|w・)ひなたぼっこでぬくぬくして、顔をくしくしして眠るクロ。にゃんこ。
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