ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~ 作:龍翠
翌日。何故かクロがリオちゃんにべったりだった。
「クロ。あつい。離れて」
「や」
「なんで……?」
どうしたんだろうね。クロはリオちゃんを一番尊敬してると思うけど、こんなにべったりくっついてるのを見るのは初めてかもしれない。
リオちゃんも少し戸惑ってるみたいで、いつもなら本を読んでるのに今日は何も持ってない。ただクロを撫でてるだけ。どことなく不思議そうにしてる。
「クロ? どうしたの?」
私が聞いてみると、クロはぷっくりと頬をふくらませた。
「師匠。きえる。だめ」
「消えないけど……」
「いなくなる。だめ」
「そんなつもりないけど」
えっと……。もしかして昨日、リオちゃんが寂しそうにしているのを、クロも気付いていたのかも。
ただ、原因とかは分からない。リオちゃんは大勢だと気後れする、なんてこともないはず。話す時は普通に話しているから。
多分だけど。懐かしい光景を見て昔を思い出してる、そんな感じだったと思う。多分だけど。
「師匠。おなやみ。きく。かいけつ。がんばる」
「無理かな」
「え」
なかなか、容赦なく切って捨てたね。考える素振りもなかった。
でもそれはつまり、やっぱりお悩みはあるってこと、かな?
「師匠。おなやみ。はなす。わたし、がんばる」
「んー……。やーめーてー……」
クロがリオちゃんをがっくんがっくん揺らしてる。さすがにちょっとやめた方がいいんじゃないかって思うけど、リオちゃんもなんだか楽しそうだから放っておこう。
私が気にせず家計簿をつけようとしたところで、
「あ、そうだ。先に渡しておく」
リオちゃんが唐突にそう言った。
「まず、小夜。これ、今月の生活費」
「あ、どうも……。相変わらず多い……」
「今後何があるか分からないから、貯金もしておいてほしい」
だからって、むき出しの札束をぽんと渡さないでほしい。毎月百万円をもらう私の気持ちも考えてほしいよ。
「次に、クロ」
「ん!」
「お金、稼ぎに行こう」
「ん?」
「小夜も来てほしい。教えておきたい」
「わかった」
今までどうやってお金を用意しているのか謎だったけど……。ついに、教えてくれるらしい。でもこれ、別れの準備のような気がするけど、気のせい、だよね?
リオちゃんの転移で訪れたのは、小さい部屋だ。窓はなくて、ドアが一つあるだけ。ただ置かれている家具はどれも高そうなものばかりで、テーブルの上には私でも知っているほどに有名なメーカーのチョコがあった。山盛りだ。
「師匠。ここ。けっかい」
「ん。特定の人間しか入れない結界。クロも使えるね?」
「だいじょぶ」
そんな結界もあるんだね。でもそこまでするって、どんな人が入ってくるのかな。魔法のことを隠していない相手のはずだし。もしかして、悪い人とか……?
その考えは、ノックの後に開いたドアの先にいる人を見て、否定された。
「首相……!?」
間違い無く、この国の内閣総理大臣だ。なんでこんな人が出てくるの?
首相は私とクロを見て怪訝そうに眉をひそめたけど、にっこりと笑顔でリオちゃんに言った。
「遅れてしまってすまないね、リオさん」
「ん。今月のお守りを持ってきた」
「ありがとう」
クロが渡したのは、神社とかでよく売られていそうなお守りだ。見よう見まねで作ったのか、少し形はおかしい気もする。
そのお守りを渡して、受け取ったのが札束だった。
お金の出所がまさかすぎて、ちょっと困るよ……。
「こんな感じで、首相と取り引きしてる。ただし秘密の取引だから、他の人には言わないように」
「ひみつ! かっこいい……!」
「ん」
リオちゃんがクロを撫でると、クロは気持ち良さそうに目を細めた。
まさかの、国のトップとも言える人と取引。どんな紆余曲折があってこんなことになったのかは分からないけど……。きっと、大変だっただろうな。主に首相が。
そんな同情の視線を送れば、気付かれたらしい。苦笑いされてしまった。
「お守りの作り方はまたクロにも教えてあげる。結界の魔法の応用だけど、今のクロなら作れる、はず」
「けっかい。どんな?」
「悪意に反応する結界。命を守るもの。政治家という人には高く売れる」
なんてこと言われていますけど。首相を見る。なんとも言えない表情だった。うちの魔女ちゃんが申し訳ありません。
「それじゃ、首相。また来月。日時はメールで送る」
「ああ、よろしく頼むよ」
「チョコはもらっても?」
「もちろん」
「ありがと」
リオちゃんがチョコを亜空間にしまって、そしてすぐに転移した。
壁|w・)とても便利なお守り!