ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~   作:龍翠

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小森家の両親

「まほう。つよく。かける。かいけつ」

「それが手っ取り早いじゃろうな。その場合、二度とクロのことは誰も思い出せなくなるが……」

「それはだめ」

 

 思わず私がそう言うと、クロが驚いたように目を瞠ったのが分かった。その顔は、どこか裏切られたといった顔のように見える。

 正直、そんなクロの顔は見たくなかった。でもこれだけは、譲れない部分だ。

 

「おねえちゃん。どうして?」

「クロが、みんなのことを見限ってるのは分かってる。大嫌いだよね。あんなに冷たくされたんだから」

「おねえちゃん。すき」

「あはは。ありがと。でもね、クロ。私も、この世界出身で、魔女ちゃんたちとは違うんだよ」

 

 クロが私のことを、私のことだけを特別扱いしてくれているのは、実のところかなり嬉しい。

 でも。それでも私は、この地球に住む一人の人間だから。

 

「ねえ、クロ。クロの気持ちは分かる。でも、私はクロにこの世界を見捨ててほしくない。私との繋がりを、消してほしくないんだ」

 

 もう誰もクロのことを思い出せなくなる。もちろん私だけは例外にしてくれると思う。

 でもね、クロ。クロのことを心配してくれる人はちゃんといるんだ。私の友達とか、私が気に掛けてるから、という理由もあるだろうけど、クロのことを気に掛けてくれてる。

 それに、クロがいないことに違和感をもたれなくなると、もしかしたらクロがいた証もすべて消えてしまいそうで怖い。クロがこの世界にいた証を、つまり私の家族とちゃんと書かれてる戸籍とかすらも消えてしまいそうで、それが怖い。

 

「まあ、ただのお姉ちゃんの我が儘だよ。戸籍とかが書き換えられても、クロが私の妹というのは変わらないから。だから、最後はクロが決めて。お姉ちゃんはそれに従います」

 

 いろいろ言ったけど、クロの気持ちがやっぱり一番大事だ。あとはクロに任せよう。

 そうしてクロの決断を待っていたら、クロは躊躇いがちに口を開いた。

 

「みんな、きらい。みんなみんな、だいっきらい」

「うん」

「でも、おねえちゃんのことは、だいすき」

「うん……」

「だから、おねえちゃん、かなしくなる、やだ。がんばる」

 

 えっと、それは、つまり……。

 

「認識阻害は待ってくれる?」

「ん」

 

 こくんと、クロが頷いた。

 思わず脱力してしまった。すごく嬉しい。ただの我が儘だったから、さすがに無理かもしれないと思っていた。

 でも、ここで安心したらだめだ。クロのことをたくさんの人に話される前に、話をつけないといけない。

 

「まず前提として」

 

 リオちゃんが口を開いた。みんなでそっちを見る。

 

「その担任が他の先生に話した可能性は? すでに話されていたら、どんどん広がると思う」

「それは大丈夫だと思う。佐野先生は保身で動いてると思うから、大きな問題にしたくないんじゃないかな」

 

 希望的観測なのは分かってるけど、そこから広まり始めたら、さすがに私も諦めるしかないとは分かってる。

 けれど、リオちゃんは違ったみたい。

 

「ん。まあ、もしもの時は記憶をいじればいい」

 

 うん。うん。いや待って。かなり外道なこと言ってないかなこの子!?

 

「おい、リオ。それはわしの世界では禁忌なのじゃが」

「安心してほしい。ほとんどの世界で禁忌。もちろん私の世界でも」

「安心できる要素がないのじゃが!?」

「ドラコ。私は自分の弟子を守るためなら、不愉快な人間の記憶をいじることに躊躇いはない」

 

 そうだった、この子めちゃくちゃ過保護だった。誰かに怪我してほしくないからって魔王を遠隔で吹っ飛ばすほどに。

 

「大丈夫。最終手段だよ。だから、安心してほしい。何があっても、どうにかなる」

 

 うん。いや本当に、過保護だなって。私たちを安心させるためにそう言ったらしい。つまりは本気じゃないってこと……、いやこの子ならいざという時は躊躇いなくやるかな……。

 ともかく。最悪の時はどうにかしてもらえる、ということで。

 

「クロ。ちょっと決着をつけに行こうか」

 

 クロにそう言うと、クロもしっかりと頷いた。

 

 

 

 というわけで、やってきました久しぶりの実家です。まさか戻ってくることになるとは思わなかったよ。

 

「おねえちゃん。ぶるぶる」

「ぶるぶるしてるねえ」

 

 私のポケットではスマホがぶるぶる震えてます。間違い無く親がかけてきてる。それもしつこいほどに。なんてうざい親なんだ。

 

「それじゃ、いこうか、クロ」

「ん……」

 

 クロの小さい手をしっかりと握って、インターホンを鳴らした。

 少しして、聞き慣れた声が聞こえてきた。母の声だ。

 

「はい。今は少し立て込んでいるので……」

「私だよ、クソババア」

「…………」

 

 お、絶句してる。固まってるっぽい。でもすぐに我に返ったみたいで、家の方からばたばたと音がして、ドアが開いた。

 家から出てきたのは、両親。厳格そうな父親と、口うるさそうな母親。間違いなく両親だけど……。さて。何を言われるかな。

 

「入れ」

 

 父の短い言葉。本当に、相変わらずだ。

 クロと一緒に家に入る。父が先に歩いて、母は後ろ。逃がさないように、かな? 逃げようと思えばいつでも逃げられるけど。

 そうして通されたのは、リビングだ。大きなテーブルがある部屋で、若いスーツの女の人が先に座っていた。佐野先生だね。佐野先生はクロを見て、一瞬だけ眉をひそめた。本当に、一瞬だけ。

 

「座れ」

 

 父に言われて椅子に座る。私とクロが並んで座って、その向かい側に両親が座った。先生はその間の席だ。

 先生はかなり後悔してそうな顔。面倒なことになった、とか思ってるのかもしれないけど、むしろこの事態を引き起こした張本人だから私は何とも思わない。

 

「小夜。黒乃。今までどこにいた?」

「半年もいないことに気付かなかったくせに、気にする必要あるの?」

「話を逸らすな」

 

 父が一瞬だけ黙ったけど、すぐに切り返してきた。私としては話を逸らしたつもりはなかったけど、父としては違うらしい。

 いや、こういう人なだけかもしれないけど。自分が望んでいない答えは受け入れない、みたいな。不愉快だよ、本当に。

 




壁|w・)ある意味でのラスボス。
なお、説得失敗した場合は師匠さんの記憶処理が待っているだけなので、ある意味イージーモード。
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