ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~ 作:龍翠
「秘密基地で暮らしてたよ。クソみたいな両親と離れられて、すごく暮らしやすかったね」
「ふん……。子供二人でか? どうやってだ。誰か大人の世話になっているんだろう」
「大人……。まあ、そう、かも……?」
リオちゃんは大人の枠でいいのかな。見た目ちっちゃいけど。ちっちゃいけど長生きなすごい魔女ちゃんだけど。なんとなく、大人として見れない気もする。
でもそんな内心の葛藤が父に伝わるはずもなく、父が続ける。
「やはりか。ならば今すぐにでも警察に通報しよう。監禁あたりが妥当か」
「監禁なんてされてないけど? 私は学校に通ってたし」
「理由などどうとでもなる、ということだ」
普通ならそうかもしれない。クロが学校に通ってなかったのは事実だから、いろんな理由をつけて逮捕とかできるんだろうね。
問題は、そもそもあの家を見つけることなんてできないだろうし、見つけられたとしてもリオちゃんが適当にあしらって記憶をいじるだけだろうけど。
うん。関係ない人を守るためにも頑張らないと。
「それで? 犯罪者はどこだ?」
「師匠。はんざいしゃ。ちがう」
犯罪者扱いはさすがに許せなかったのか、クロが口を開いた。
「黙れ。お前には聞いていない」
「師匠。わたし。まほう。せんせい。すごい」
「何が魔法だ! くだらない手品を魔法と言い張るなバカが!」
本当に、頑なに信じようとしないよね。魔法なんて信じられないという両親の気持ちも分からないでもないけど……。
でも、事実としてクロの魔法は存在する。それに。
「あなたたちが私たちのことを半年も忘れていた。先生が来なければ、何も思い出せなかった。これでも魔法とは違うと言うの?」
「…………」
さすがにおかしいとは思っているらしい。認めるつもりはないみたいだけど。
やがて、父が言った。嘲るように。
「そんなに言うなら、その魔法とやらであり得ない現象を起こしてみろ」
「どんな?」
「そうだな。誰か、ここにいない人を呼び出してみるといい。箱など小道具も使うなよ」
おお、これは見事な墓穴。ちょっとおもしろい。
「わかった。まほうじん。かく。いい?」
「まあいいだろう」
父が紙とペンを渡してくる。クロはそれを受け取ると、さらさらと不思議な模様を描いた。どことなく見覚えがあるような気がする。
魔法陣が淡く光り始め、唐突にその上に穴が空いた。魔法陣の上、つまり空中に。空間にぐにょりと黒い穴。
「ええ!?」
驚きの声を上げたのは、母と先生。父は呆然と目を丸くしてる。
その黒い穴から出てきたのは、リオちゃんだった。
「ん……。スムーズな術式。クロ、すごい。及第点」
「えっへん」
「よしよし」
リオちゃんに褒められたクロが薄く笑って、そんなクロをリオちゃんが撫でてる。どっちもとてもかわいい。ちっちゃい魔女ちゃんがちっちゃいクロを撫でてるんだよ。いいよねこれ。とてもいい。最高だね!
「うえへへへ……」
「娘が壊れた……!」
「おいこら母上。壊れたはひどいよ。壊れてるんだよ」
「ええ……」
私がクロを溺愛してるのはクロが私をおねえちゃんって呼んでくれた日からだからね! まだうんと小さかったクロがえっちらおっちら私の方に歩いてきてくれて、私の足にしがみつくんだ。そうしてから、言うんだよ。おねえちゃん、て。
「ほんっとうにさいっこうだよね!」
「うわあ……」
「リオちゃんまでどん引きしないでくれないかな!?」
これでもまだ我慢してる方だから!
さて。父は黒い穴とリオちゃんを交互に見ていたけど、やがてクロに言った。
「この穴は、なんだ?」
「つなぐ。とおいばしょ。わたしのおうち」
「…………。誰でも通れるのか?」
「ん」
クロが頷くと、父は黒い穴に首を突っ込んだ。私が言うのもなんだけど、勇気あるよね。これ、クロが黒い穴を閉じたら、間違い無く死ぬよ。いや、さすがにどれだけ嫌っていても、クロがそんなことをするとは思えないけど。
「なんだここは……」
「なんじゃ!? リオが通った穴からおっさんの顔が出てきたのじゃ!」
「わあ……。クロちゃんのお父さん?」
「ぬお!?」
「わわ! こら! ウル! なめちゃだめ!」
「ぽぽぽポーションとか何か他のものとかいりますか!?」
うん。なんというか、あっちが大騒ぎになってる。リオちゃんはどことなく楽しそうに微笑むと、父の体を引っ張り出して首を突っ込んだ。
「すぐに終わるから落ち着いて。余計なことはしないでね」
「うむ。了解したのじゃ」
「はーい」
リオちゃんが首を戻したところで、クロが黒い穴を消した。さすがに残したままお話しするのはだめだと思ったみたい。しっかり消えてるのを確認してから父の方に向き直って、眉をひそめた。
「べとべと」
「…………。大きい犬に舐められたからな」
「ああ……」
そういえば、言ってたね。ミリアちゃんの声はこっちにも届いてたよ。
父は椅子に座ると、大きなため息をついた。
「聞きたいことがある」
「なに?」
「もしも、認めなかった場合。何をするつもりだ?」
さすがに魔法の存在は今ので信じたらしい。明らかに違う場所に繋がる穴とか、現代の文明だとあり得ないからかな。それでも頑なに認めなかったとしたら……。
「きおく。けす。にんしきそがい。かける。わすれる」
「…………。そうか」
再び大きなため息。なんだかすごく疲れ果てているような雰囲気だ。
壁|w・)空間と空間を繋げるゲートの魔法。なお、知っている場所にしか繋げられません。