ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~   作:龍翠

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閑話 こばけちゃんの楽しい一日

 

 こばけの一日は早いです。この家の住人が動き出すのと同時に、こばけも働き始めます。でも実は眠る必要がないだけです。いつもみんなが寝たら大人しくしているだけです。

 最初に目を覚ますのは、小夜です。このお家の主、クロのお姉ちゃんです。つまりは実質的なトップです。

 小夜は起床すると、すぐに顔を洗いに一階に下りてきます。こばけはタオルを持ってお出迎え。顔を洗った小夜にタオルを渡すと、小夜は笑顔で言ってくれます。

 

「ありがと、こばけちゃん」

「ぱけ!」

 

 こばけはこのお礼がとても好きです。もっと言ってほしいのでがんばります。

 次にやってくるのは、リオです。この子はいつも、いつの間にか椅子に座っています。気を配っているはずなのに、この部屋に入る瞬間を見たことがありません。おばけもそれは同じのようです。

 でもリオはクロが尊敬するお師匠様です。大事なお客様なのでおもてなしです。

 

 こばけがココアを持っていくと、リオはこちらを一瞥しただけで受け取ります。でもちゃんと、ありがと、というお礼を言ってくれます。とてもいい人です。

 次に目を覚ますのは、クロです。眠たそうに階段を下りてきて、小夜に着替えさせられます。少し面倒そうに見えますが、こばけは知っています。クロが小夜に甘えていることに。

 きっとそれは小夜も気付いているのだと思います。だってこっちも楽しそうだから。

 

 その後は小夜が朝ご飯を作るので、お手伝い。今日はピザトーストの日のようです。小夜と一緒にトッピングの材料を切って、トースターで焼いて、そしてテーブルに持っていきます。

 その頃にはうとうとしていたクロもばっちり起きています。トーストをしっかり食べて、ジュースを飲んで、クロは満足そうでした。

 

 朝食が終わると、小夜は学校に向かいます。クロも学校があるのですが、かなり気まぐれです。行ったり行かなかったり。最近まで大変だったので、こばけはそれでいいと思っています。

 けれど勉強はちゃんとやっています。先生役はリオです。学校の教科書を広げて授業をして、魔法の修行もお昼にやります。小夜は気付いていないみたいですが、リオは結構スパルタです。

 

 お昼はおばけと一緒にお昼ご飯を作ります。小夜が買い置きしてくれている材料で、おうどんを作りました。クロもリオも表情は薄いですが、しっかり完食してお礼を言ってくれます。嬉しい。

 お昼ご飯のあとは、お昼寝。天気のいい日はお庭でのんびり日向ぼっこをしながら、一時間ほど眠ります。雨の日はリコリスという子の世界に行って日向ぼっこするようです。今日はお庭でゆっくりと。

 

 そうしてお昼寝が終わる頃になると、他の魔女がやってきます。常に全員揃うわけではありませんが、暇な人はよく来てくれているようでした。いつもとても賑やかです。

 そんな賑やかな魔女たちに囲まれて、クロはとても幸せそうでした。

 こばけも、おばけも、そんなクロを見るのがとても好きです。

 

 

 

 数年前。この家は幽霊屋敷と呼ばれていました。それはおばけとこばけが棲み着いていたからです。そんな家に、クロはふらりとやってきました。

 平穏を邪魔されたくなかったこばけたちは、いつものように驚かせようとします。けれどクロは、無感情な顔でこばけたちを見つめるだけ。それは、世界の全てに諦めていた顔でした。

 おそらく、小夜がいなければ、クロはとっくに壊れていたでしょう。それほどぎりぎりで保っていたのです。

 

 こばけたちはそんなクロを助けたいと思いました。だって、こんな小さな子が、世界に絶望するなんて早すぎるから。

 クロには特殊な力がありました。そのクロが使う力、魔法はこばけたちにとっては知っている力です。古い知識を持ち寄って、クロと一緒に魔法を作り上げました。

 クロに希望を与えるために作った魔法。友達を呼ぶ魔法です。

 

 その魔法で、クロはとても幸せになりました。こばけたちはそれが誇らしいです。もっとも、召喚されたリオからはお叱りを受けましたが。すさまじく危険な魔法になっていたそうで、素直に反省しました。

 あれほど静かで平穏に過ごせるはずだった家は、今ではもうとても賑やかな場所になっています。そんな騒ぎの中心は、クロです。相変わらず表情は薄いですが、楽しそうにしているのはよく分かりました。

 

 こばけたちが望んでいるのは、平穏です。いずれ来るはずの終わりまで、ゆっくりのんびり過ごすことを望んでいます。

 けれど。

 

「こばけ。こばけ」

「ぱけ?」

「ん」

 

 クロがこばけを呼んでいたので側に行くと、そっと抱きしめられました。決して温かくはないはずなのですが、クロはたまにこうしてこばけを抱きしめます。

 

「おばけ。おばけ」

「ばけばけ」

「ん」

 

 もちろん、おばけも。

 クロにとってのお礼、なのかもしれません。本当のところはクロにしか分からないのですが。

 

「いつもありがとう」

「ぱけぱ」

「ばけ」

「ん……。しあわせ。みんな。いっしょ。たのしい」

「ぱけ!」

「ばっけ!」

「うん」

 

 クロは頷くと、魔女たちの中に戻りました。

 

 

 

 望んでいた平穏とは全く違う日常。

 けれど、それでも。こばけもおばけも、この日常を気に入っています。誰もこばけたちのことを怖がらず、頼ってくれます。とても有意義な毎日です。

 それに、何よりも。

 

「ん……」

 

 幸せそうなクロを見ているだけで、こばけたちは満足できるのでした。

 

 

 こばけとおばけは、きっとこれからも、クロと共にいるでしょう。

 だって自分たちは、クロの最初の友達なのですから。

 




壁|w・)こばけたちから見た、寄り合い所の一日、でした。
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