ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~   作:龍翠

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エナはかっこいい

 

 エナは本当に、とてもかっこいいです。

 授業開始。クロの隣の席は、エナでした。二人で前の方に座ります。そうして真面目に授業を聞いていたのですが、邪魔をする男子がいました。

 クロを明らかに嫌っている子です。その子が、紙を丸めたものをクロに投げてきました。

 これは以前からあったことでした。いちいち反応するのも面倒なので、クロは薄い結界を張って、ぶつかったように見せかけながら防いでいます。

 クロにとっては何の意味もなく、相手は当てられたように見えて気分がいい、無難にかわす最適解。そう思っていたのは、クロだけだったようです。

 

 紙くずが投げられて、そしてそれを隣のエナが素早くキャッチしました。さすが魔法少女です。

 その紙くずを見て、エナは目を吊り上げました。普通に怖い。

 エナがゆっくり立ち上がります。先生がぎょっと目を剥きましたが、エナの激怒の顔を見てさらに息を呑みました。何も言えなくなっています。

 エナは男子生徒の前に立ちました。その男子生徒が言います。

 

「な、なんだよ。何もやってないぞ。おれだって証拠、あるのかよ」

「…………」

「別にそんな紙くず、怪我なんてしねーだろ」

「…………」

「その……」

「…………」

 

 やばいです。怖いです。無言の圧力です。

 エナは一切声を発していません。ただただ静かに、男子の前に仁王立ちして、睨み付けています。怒鳴っているわけでも叫んでいるわけでもないのに、ただただ怖い。正直、怒鳴られる方がましではないでしょうか。

 男子は顔を青ざめさせて、小さく言いました。

 

「ご、ごめんなさい……」

「二度とやらないで」

「はい……」

 

 それで終わりでした。それ以来、クロに対する嫌がらせはあっさりとなくなりました。

 エナはとてもかっこいい。そう思いました。

 

 

 

 お昼。給食の時間。エナの友達が戻ってきました。

 エナはクロと一緒に給食を食べるつもりだったみたいです。机を合わせて一緒に食べようとしたところで、

 

「あの……。わたしたちも、いい……?」

 

 エナが朝、一緒にいた二人がそう声をかけてきました。

 

「クロちゃんに何か言うことないの?」

「うん……。小森さん、ごめんなさい。何も知らないのに、ひどいことを言って」

「あらためてお友達になれないかな?」

 

 正直なところ、クロはとても驚きました。まさかそんなことを言われるとは思っていなかったのです。クロも、友達を作ろうと思って来たわけではなかったですし。

 けれど。クロにとっては今更でした。

 

「ともだち。だめ」

 

 その短い言葉に、女子二人が肩を落とします。それを見てから、クロは言いました。

 

「でも。おはなし。だいじょぶ」

 

 友達になろうとは思えません。でも一緒にお話しするぐらいなら、大丈夫。それがクロの妥協ラインです。

 女子二人は顔を輝かせて、それでいいと頷きました。エナもどことなく嬉しそうでした。

 そうして、四人で給食を食べます。クロはもともと口数が多い方ではないので、基本的に聞き役です。けれど、三人が話しているのを聞いているだけで、なんとなく楽しい気持ちになりました。

 学校生活で、クロに友達はいませんでした。だからこうして、クラスメイトの会話を聞くというのは、初めての経験とも言えます。

 いろんな話をしていました。アニメの話。かわいいキャラの話。勉強の話。そのどれもが、クロにとっては新鮮です。

 

「小森さんはアニメとか見るの? 日曜日の朝のアニメとか」

「ん。まほうしょうじょ。すき」

「だよね!」

 

 日曜日の朝にやっているのは、魔法少女のアニメです。主人公は一年ごとに変わりつつも、十年以上も続く長寿番組でもあります。つまりクロが生まれる前からやっているアニメで、そう思うと本当にすごいアニメです。

 

「小森さんはどのキャラが好き?」

「んー……。ブルー」

「あー! わかる! クールでかっこいいよね!」

 

 魔法少女は三人組。その中の、イメージカラーが青の魔法少女がクロのお気に入りです。

 

「赤もいいよ?」

 

 エナは赤いキャラがお気に入りみたいです。正義感があって、明るいキャラ。なんとなく、エナにぴったりだと思います。

 

「でも小森さんもアニメ見るんだね」

「本をずっと読んでる子だと思ってた」

 

 どうやら周囲からはそのように見られていたらしいです。

 以前のクロは、学校ではずっと本を読んでいました。普通の本ではなく、その多くが魔法に関わる本です。さらにはノートに試作の魔法陣を描いてみたりとしていたので、きっとよくわからない変な子だと思われていたことでしょう。

 さすがにエナも苦笑いです。

 

「小森さん、意外とちゃんとお話しできるね」

「うんうん。ねえ、小森さん、よければ放課後も遊ばない? お家に遊びに来てよ!」

 

 なんと、遊びに誘われました。とても予想外です。エナを見るとどことなく満足そうです。

 

「エナ。いく?」

 

 一人で行こうとはさすがに思えません。だからエナに声をかけてみると、目を瞬かせてからにっこり笑顔で言いました。

 

「うん!」

 

 なんと一日目で遊びに行く約束です。これは、お姉ちゃんに自慢できるかも。

 そうと決まれば放課後の予定です。最初は女子二人のどちらかの家の予定でしたが、何故か最終的にエナのお家になっていました。

 これにはみんなでびっくりです。お互いに一番都合がいいのがそこだっただけです。

 

「楽しみだね! それに、明日からも楽しくなりそう。小森さん、明日からも仲良くしてね」

「うんうん! よろしく!」

「むり」

「え」

 

 さすがにそれにはクロは首を振ります。予想外だったのが固まる二人に、クロは言いました。

 

「まいにち。こない。ときどき。きまぐれ」

「ええ……」

 

 休む宣言は想像していなかったのでしょう。女子二人は頬を引きつらせてどん引きです。エナですら、なんとも言えないお顔でした。

 

   ・・・・・・

 




壁|w・)仲良くなれたと思ったら不登校宣言をされるクラスメイトさん。
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