ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~ 作:龍翠
少し時間を置いてから、アジトの家に向かう。飛び出してきたあの幹部さんが引きずられていったのを思い出すと、正直もう、あの家に近づきたくなくなってる。
「あの」
「なんだい?」
「帰っていいですか?」
「一人にしないでおくれ……!」
いやですよ、一人で見てきてくださいよ、正直怖くて行きたくないですよ……。
さすがにこんなに怯えてる幹部さんに言えなくて、仕方なく同行する。クロちゃん、何をしたのかな。
少し緊張しながらインターホンを押すと、出てきたのはクロちゃんだった。
「エナ?」
「クロちゃん……」
「てき? しょす?」
「しょす!?」
しょすって、処すですか!? 怖い! クロちゃんがちょっと怖い! こっちの幹部さんも私の後ろに隠れてがたがた震えちゃってるし!
「いえ、あの……。こっちの人に、悪い人が集まってるから手伝ってほしいって言われて……」
「そう。おなじ」
「え?」
「そうすい? さん。ししょう。たのんだ。わたし。かわり」
「えっと……」
つまり。組織の総帥さんが、クロちゃんの師匠、リオさんに手伝いを頼みに行ったと。
なるほど、賢明な判断だと思う。何も言わずにリオさんに知られた場合は、総帥さんごと倒してしまうかもしれない。でも先に報告して手伝いを頼めば、総帥さんは無関係だと分かるはず。
でも、どうしてクロちゃんが?
「リオさんは?」
「たぶん。おこってる。やりすぎ」
リオさんは怒っていて、リオさんがやるとやり過ぎになるかもしれないからクロちゃんが来たってことかな? それなら、うん……。分かるような、分からないような。
「でも危険じゃない?」
「おわった」
「そっかあ……」
改めて思うけど、クロちゃんたちはこの世界だと本当に強すぎると思う。
「あと。まかせる。だいじょぶ?」
クロちゃんの視線は、私の後ろに隠れる幹部さん。幹部さんは表情を引き締めて前に出た。膝が笑ってるのは見なかったことにしておこう。
「大丈夫だよ。あとはあたしに任せておくれ」
「ひざ。がくがく。だいじょぶ……?」
「大丈夫だよ……!」
クロちゃんが突っ込んじゃった……。いや、まあ、いいか。
家の中に入っていく幹部さんを見送って、クロちゃんが私の方に来た。私の手を掴んで、そのまま転移。転移先は、クロちゃんのお家だ。
また突然すぎて驚いたけど、説明してもらえるなら別にいい。
大広間には、リオさんと見慣れない男の人、そして小夜さんがスマホをいじりながら待っていた。
「クロ、おかえり。あれ? エナちゃん? どうしたの?」
「えっと……。実は……」
小夜さんに私の方の経緯を説明。幹部さんが私に助けを求めてきた、ということを。その説明をリオさんも聞いていたみたいで、小さくため息をついていた。
「すでに手遅れになってるけど。どう責任を取るの?」
そう言うリオさんの目の前には、正座をしている男の人。金髪のイケメンさんで、真っ黒なマントを着てる。いかにもな人だ。この人が総帥さんだと思う。
悪の組織の頂点、という威厳はなくなってるけど。
「すまない……エナ……。手を煩わせてしまった……」
「あ、いえ……。初めまして、ですよね? 総帥さん、ですか?」
「うむ。こうして直接会うことができて嬉しく思う。もう君たちには関わらないようにしようと思っていたのだがな……」
「管理不足ってやつだね。私に、もう手を出さないし出させない、なんて言ってたのに」
「申し開きもなく……」
やっぱり、総帥さんはリオさんと戦ったことがあるみたい。この反応を見るに、やっぱり総帥さんが負けたんだと思う。
「総帥さん、リオさんと戦ったんですね。どれぐらい戦えました?」
「一分もかからずに半殺しにされた。世界征服なんてできるはずもなかった。つらい」
「うわあ……」
一分。正直、もう少し戦えてるものかと思った。
私から見ても、総帥さんはかなり強い人だ。正直、戦っても勝つのは難しかったと思う。そんな総帥さんを、簡単に倒してしまうなんて……。
「ちなみにクロとやらにも負けた……」
「あ、はい……」
ぽっきりと折れてしまってる。いや、自信を持たれる方が困るのは確かだけど。また世界征服なんて企てられても困るから。
でも大の大人が自信を失って自嘲しているのを見ると、なんだかこう……。悲しくなる。
「ところでクロ。叩きのめしてきた?」
「ばっちり。まりょく。いっぱい。たたいた」
「どれどれ……」
リオさんがテレビに向かって杖を軽く振る。するとテレビに映像が映し出された。畳の広い部屋。そこにいるのは、私に助けを求めてきた幹部さんと、他たくさんの人たち。
多分、あのアジトの家の様子だと思う。
テレビから声が流れてきた。
『だから言っただろうに。これ以上続けるのはやばいって』
『まさかあんな化け物がいるとは思わんだろう……』
『ちなみに何をやられたんだい?』
『一発ずつ殴られただけだ。わかるか? 一発だ。こちらの攻撃は全て弾かれて、それなのに向こうは軽いパンチでこっちを全員沈めていくんだ』
『う、うん……』
『それも無表情でだ。何を聞いても反応なし。わかるか? この恐怖が。なんなの? なんでへろへろとしたパンチで骨が折れるの? 意味わかんない……』
『…………。うん……』
なんだか、すごく憐れな状態になってる。
「うわあ……」
小夜さん、これはひどい、なんて顔をしてますが、あの状態を引き起こしたのはあなたの妹さんです。
「ふはは。ざまあ」
総帥さんはそれでいいの!? なんかもう、いろいろと残念なんだけど!
壁|w・)クロは別に魔法を使ったわけではなく、魔力をたくさんこめてぺちっとやっただけです。
魔力差の暴力……!