ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~   作:龍翠

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アイカシアの住む場所

 ごそごそという音に目を向けてみれば、リオちゃんがベッドの方で何かをしていた。引っ張り出したのは、光の穴。いや、それ手で持てるの? それとも何か魔法で動かしてるのかな。

 

「アイカシア」

「あ、皆さんもシアで構いませんよ」

「ん。シア。これが、あの世界に繋がる魔法。変なところに出ちゃってたから、移動させておく。どこがいい? 他の人が触れない場所がいいと思うけど」

「それが……。その、クロさんには悪いのですけれど、消しておいてもらうことはできますか?」

 

 それを聞いて、クロが少しだけ目を見開いた。消してほしい、なんて言われるとは思わなかったみたい。残していても困るものじゃないはずだから、かな。

 私もせっかくだからシアちゃんには友達になってほしいけど……。でも、シアちゃんの立場で考えると、もう行くつもりがないのに、異世界に繋がる穴は残されたままになるわけだ。

 危ないと考えて当然だと思う。他の人が触れてしまうかもしれないし。

 

「シア。おともだち。だめ? おともだち。たのしい。だめ?」

「あ、その……。えっと……」

 

 クロがじっとシアを見つめながら聞くと、シアは少し戸惑ったように目を泳がせた。あんなに悲しそうに見つめられると、さすがに断りづらくなるらしい。当然だね!

 シアちゃんはあー、とか、うー、とか、意味のない言葉を発していたけど、やがてぐっと真っ直ぐにクロを見て言った。

 

「クロさん。わたくしはこの世界から離れるわけにはいかないのです。だから……」

「ん。はなれる。だいじょぶ。わたし。いどう。ここ」

「えっと……。クロさんがこっちの来てくれるんですか……?」

「ん!」

「それなら……いいかな……?」

 

 あ、それならいいんだ。ふむ……。

 つまり、本当にシアちゃんはこの世界、もしくはこの場所から離れられないだけで、それ以外ならわりと自由らしい。少なくとも、誰かがここに遊びにくることは問題ない程度には。

 

「うれしい。ともだち。ともだち」

「ふふ……。はい。お友達、ですね」

 

 クロとシアちゃんが手を繋いで楽しそうにしてる。クロは相変わらずの表情だけど、シアちゃんはとても嬉しそうな笑顔だ。実は友達が欲しかったのかも。

 うん。ちっちゃい子がお手々を繋いでにこにこしてるのは、とてもいいと思います。最高だね。

 

「小夜。抑えて」

「はい」

「ん。シア。それで、これはどこに移動させる?」

 

 リオちゃんが浮かべる光の穴に視線を向けて、シアちゃんは少し考えるように視線を上向かせた。置き場所、と言えばいいのかは分からないけど、ちょっと困るよね。

 少し考えて決めた場所は、部屋の隅。もともとこの部屋にはあまり人が来ないらしくて、そこならきっと誰にも気付かれない、とのことだった。

 

「シア。おはなし。する。いい?」

「わたくしは構いませんが……」

 

 シアがちらりと私を見てくる。そう、だね……。

 

「さすがに時間が遅いかなあ……。クロもそろそろ寝ないと」

「だいじょぶ。ねむい。ない」

「クロ?」

「あう……。かえる……。ねる……」

 

 まったく。何も言わなかったら夜更かししちゃいそうで、お姉ちゃんは心配だよ。

 

「あした。くる。いつ?」

「そうですね……。日没の後に夕食を食べますので、その後なら……」

「わかった。おはなし。たのしみ」

「ふふ。わたくしも楽しみです」

 

 明日会う約束をして、私たちは帰ることになった。夜限定のお友達か……。なんだか、そういうのもいいよね。

 お土産にお菓子を用意してあげよう。クッキーでも焼いてあげようかな?

 

 

 

 翌日、夜。家に遊びにきた魔女たちはみんな新しいお友達が気になってるみたいだけど、とりあえずはクロに任せることにしたらしい。知らない人が大勢行くと迷惑かもしれない、というのもある。向こうがどんな世界かはまだよく分からないけど、貴族なのは間違いないみたいだし。

 市販のチョコと焼きたてのクッキーをお土産に、クロと一緒にシアちゃんの世界に向かう。リオちゃんはお留守番だ。いってらっしゃい、とこばけたちと一緒に手を振ってくれた。

 そうして転移した先は、昨日と同じ部屋。そこにいたのは、シアちゃんと。

 

「わ……。本当に来た……!?」

 

 昨日はいなかった、赤毛の少女。年はシアちゃんよりも上に見える。私よりも少し幼いぐらいかな? メイド服を着てるから、シアちゃんのメイドさんなのかも。

 

「いらっしゃい、クロさん、小夜さん。歓迎します。この子はわたくしのメイドで、セーラです」

「アイカシア様の専属メイド、セーラと申します。よろしくお願い致します」

「ん。クロ。よろしく」

「小夜です。クロのお姉ちゃんです。よろしくね」

 

 簡単な自己紹介をしてから、お話しすることになった。

 案内されたのは、小さな白いテーブル。椅子が四脚用意されていて、セーラが引いた椅子にシアが座る。その後に私たちの椅子もわざわざ引いてくれた。これがメイドさん……!

 セーラが紅茶を淹れて私たちに配ってくれる。紅茶、久しぶりに飲むかも。

 

「セーラも椅子に座らせますが、構いませんか?」

「ん」

「もちろん」

「ありがとうございます。ほら、セーラ」

「あの……。それでは、失礼致します……」

 

 セーラさんは少し迷っていたみたいだけど、シアちゃんに促されると大人しく椅子に座った。本人としては座るつもりはなかったらしい。やっぱりメイドはそういうものなのかな。

 それじゃ、お土産を渡そうか。

 

「おみやげ。チョコ。クッキー。あまい。おいしい」

 

 クロが置いた小さいバスケットには、個包装された一口チョコがたっぷり入ってる。私もクロに続いて、手作りクッキーのバスケットを置いた。

 

「まあ……!」

 

 シアちゃんは目をきらきらさせて、早速とばかりにチョコを一粒口に入れた。

 

「アイカシア様……!」

 

 セーラさんが少し慌てている。私とクロが首を傾げる前で、シアちゃんが言った。

 

「毒味なんて必要ありません。失礼ですから」

「ですが……!」

「それに、わたくしを殺すつもりでしたら、昨日すでに死んでいます」

 

 なるほど、毒味。その発想はなかった。貴族ならでは、だね。リコリスちゃんみたいに戦うわけでもなさそうな子なのに、殺すなんて言葉が簡単に飛び出ることに私はちょっとびっくりだ。

 貴族社会は怖いね。本当に。

 でも、この子は間違い無く、とても良い子だと思う。

 

「このクッキーも甘くて、さくさくしていて……。なんて美味しいのでしょう……。ほら、セーラも」

「あの……。はい、いただきます……。わ、本当に甘い……!」

 

 チョコレートがあるからクッキーは甘さ控えめに作ったつもりだったんだけど、この世界の人にとってはそれでも甘いお菓子らしい。甘いものが少ない世界、なのかな。

 もうちょっと詳しく知りたいところだね。

 




壁|w・)おはなし!
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