ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~   作:龍翠

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シアちゃんの世界の事情

 

 向こうとしては隠すつもりもなかったみたいで、結構詳しくこの世界について教えてもらうことができた。

 この世界の人類は、かなり追い詰められた状態みたいだ。今現在、人間の国はこの国しか残っていないらしい。この国も、国土はかなりのものらしいけど、国の外は危険な魔獣であふれかえっているらしい。

 どうやって国を守っているのかと思ったら、魔獣が通れない結界を張っているらしかった。その結界の維持に必要なのがこの場所であり、結界の魔法を使っているのがシアちゃんということだ。

 

 魔力が極めて多い子がこの場所を任される。それが今はシアちゃんで、聖女なんて呼ばれてる。

 魔法の仕組みについても教えてくれた。朝から夜まで魔法陣に魔力をこめて、夜から朝は魔力を吸われ続けることで維持される。だからこそ、シアちゃんはクロの世界に来られないみたい。

 こんな小さな子が世界を守ってる。なかなか信じられない状態だ。

 

「シア。たいへん。だいじょぶ?」

「ふふ。ええ、大丈夫です。これはわたくしが選んだ道ですので」

「そう?」

「はい。この先、新たな聖女が現れるまで……。わたくしはこの国を守ります」

「ん……」

 

 比喩表現でもなんでもなく、この国を守るためにはシアちゃんが必要不可欠、なんだね。

 クロもどうにかしたいみたいで少し考えてるけど……。今回ばかりは難しいかもしれない。

 リコリスちゃんの世界の場合は、人類と魔族が明確に戦争をしていた。魔族ははっきりと敵だったわけで、だからこそみんなが力を貸してくれたんだと思う。

 でも、この世界の人類は完全に少数派だ。魔獣も魔力を持った動物というだけで、決して全てが世界の敵というわけではないらしい。というより、そんな大それた魔獣はいないみたいだね。

 

 例え殲滅できたとしても、また勝手に増えていく。だから、例えリオちゃんに頼んで魔獣を倒してもらっても、時間稼ぎにしかならないみたいだ。

 もしも全部倒してしまったら、それは世界にとって悪影響だろうし。動物がほとんどいなくなる、ということだろうから。

 そんな中でも、結界があるからとはいえちゃんと人類が生存できているのは奇跡的な状態なんだと思う。いや、本当にすごいね。どうやって作ったんだろう。

 ともかく、今のところ私たちにできることはなさそうだ。

 

「なにか、したい。ある?」

 

 それでもクロがそう聞くと、シアちゃんは笑って首を振った。

 

「いいえ、大丈夫です。こうして、時折お話をしに来ていただければ、わたくしは十分です。友達が欲しい、という夢が叶った。それだけで望外の喜びですから」

「ん……」

 

 クロは納得してなそうだけど……。まあ、後はクロが考えることだね。魔法についてはやっぱり私はからっきしだから。

 きっとこの状態を打破する何かを考える。クロならきっと、そうすると思う。

 

   ・・・・・

 

 あの、夢のような時間から一週間が経ちました。

 この塔に来てから、初めて訪れた知らない場所。そして初めての友達。何もかもが新鮮で、とても楽しくて。クロさんたちがチョコレートやクッキーを持ってきてくれるまで、夢だったのかもと思っていたほどです。

 セーラも最初は全然信じてくれませんでしたから。多分あれは正気を疑っていましたね。わたくしも同じ立場ならそう思ったことだと思います。

 

 でも。クロさんはあれ以来、あまりこの世界でゆっくりしてはくれません。お菓子を持ってきて、少し話して、帰ってしまう。その繰り返しです。

 もちろんそれでもわたくしは嬉しいのです。セーラ以外の誰かと、それも対等な立場でお話しできる機会なんてその時ぐらいですから。

 けれど、やはり不安になります。いつかこの短い会話の時間すらもなくなって、もう来なくなってしまうのではないかと。

 

 最初から誰もいないのなら、わたくしはいくらでも耐えられたことでしょう。けれど、今はもう、誰かと話す楽しさを覚えてしまいました。友達というものを知ってしまいました。今更、誰もいなくなってしまうのは、耐えられません。

 最初の日に、何か気に障ることでも言ってしまったのでしょうか。いえ、覚えはあります。突き放しました。それは、でも、仕方ないでしょう?

 けれど、謝ってはいないのです。それを思い出した時は愕然としました。まさか、クロさんはそれを少し怒っていて……。

 

「ん。きた」

「クロさんごめんなさい!」

「……っ!?」

「アイカシア様! 落ち着いてください! クロ様が驚いています!」

 

 クロさんが来てくれて、慌てて謝ってしまいました。これでは意味が分からないでしょう。落ち着きましょう、わたくし。小夜さんも言っていました。冷静に。冷静に。あれ、でもあの人に冷静にと言われると釈然としませんね……。

 

「シア。びっくり。なに?」

「あ、ごめんなさい、クロさん。最初の時のことを謝りたくて……」

 

 最初、わたくしが転移してしまった日。その時に突き放す態度を取ってしまったことを謝ると、クロさんは不思議そうに首を傾げてしまいました。

 

「ん……。だいじょぶ。気にしなくていい」

「けれど……」

「それよりも。これ。つくった」

「え……?」

 

 クロさんから渡されたものは、不思議な色の石でした。石というより宝石、でしょうか? 拳大の大きさの丸い石で、虹色に光っていて神秘的です。

 

「つくった。みんな。いっしょ。まりょく。いっぱい」

「これは……」

 

 その石には、膨大な魔力が込められていました。わたくし以上の魔力です。

 クロさんから説明を受けて、さらにわたくしたちは驚かされました。

 これは魔力を貯蔵する石だそうです。これを魔法陣の中央に置いておけば、わたくしの仕事を代わりにしてくれるのだとか。

 最低でも二日間はわたくしが不在でも大丈夫、とのこと。同じ石をもう一個用意してくれているらしく、わたくしがクロさんの世界の遊びに行く時に交換して、また魔力を貯蔵しておいてくれるとのことでした。

 

「ですが、それではクロさんの負担になりませんか……?」

「へいき。みんな。おてつだい」

 

 どうやらこの魔力の石は、クロさんのお友達も一緒に作ってくれているらしく、それほど負担ではないとのことでした。

 それでもわたくし以上の魔力をこめるというのは、とても大変だと思うのですが……。クロさんのお友達には、それほどの魔力を持っている人がいる、ということでしょうか。

 

「シア。あした。あそぶ。きて?」

「そう、ですね……」

 

 明日の朝、これを魔法陣に置けば大丈夫なのでしょうが……。けれど、やはり不安です。もしも失敗すれば、わたくしの帰る場所がなくなってしまいます。

 

「ごめんなさい、クロさん。一日、試させてください」

「だいじょぶ。あさって。あそぶ。たのしみ、だね?」

「ふふ。ええ、楽しみですね」

 

 クロさんの家で、一日遊ぶ。それは、とても、楽しみです。

 




壁|w・)魔獣を絶滅させる=全世界の半分以上の動物が死に絶えるとんでもないこと、と思っていただければ。
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