ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~   作:龍翠

66 / 75
改めて遊びにいきましょう

 

 結論を言えば。クロさんからいただいたあの石は、わたくしの代わりになってくれました。

 魔法陣の隣の部屋、つまりは自室でずっと警戒していたのですが、特に魔力不足に陥るようなこともならず、無事に結界を維持していました。

 しかも石を調べたところ、まだ半分以上の魔力が残っています。もう一日、つまりクロさんの家へ遊びに行っても問題はないでしょう。

 

「セーラ……。わたくしは、このご恩にどのように報いればいいのでしょうか……」

「私にも……分かりません……」

 

 こうしてお休みができるなんて思ってもみませんでした。ずっと魔力を使い続けることになると

思っていたのです。それが、まさかこの場所を離れても問題がなくなってしまうなんて。

 しかも、クロさんの言葉を信じるなら、これからもこの石を用意してくれるとのことで……。ゆっくり休める日が今後もできそうです。自分でも信じられません。

 

「せめて何かお礼の品を……。セーラ、こちらのお菓子を持っていくのはどうでしょう」

「アイカシア様。クロ様からいただいたお菓子の味をお忘れですか?」

「…………」

 

 チョコやクッキーの味。思い出すと、確かにこちらのお菓子をお渡ししても、あまり喜んではくれないでしょう。あちらのお菓子ほど甘くはないですから。

 けれど、何も持っていかないよしはましのはずです。結局はその結論になり、セーラがクッキーを焼いてくれました。

 本当に、ほんのりと少しだけ甘いクッキーです。ただそれでも、この世界では貴重品です。あの世界の菓子には遠く及ばないのが悲しいところですね。

 そうして、お昼過ぎになって、クロさんがやってきました。

 

「いらっしゃい、クロさん」

「ん。いし。どう? まりょく、どう?」

「問題ありませんでした。明日までは十分にあの石でまかなえます」

「あそぶ。だいじょぶ?」

「はい……。遊びに行っても、いいでしょうか?」

「ん! かんげい! いく!」

 

 ああ。わたくしはこの子に対して何もできていないのに、ただ遊びに行くと伝えただけでこんなに喜んでくれる。表情が薄い子みたいで分かりづらいですが、その分動きがとてもかわいらしいです。小夜さんが甘やかしてしまうのもよく分かりますね。

 

「セーラ。いっしょ?」

「え? 私もいいのですか……?」

「シア。かぞく。だいじょぶ」

 

 それなら、是非ともシアも連れて行きましょう。わたくしもセーラが一緒なら心強いですから。

 わたくしがクロさんの手を握り、セーラがわたくしの手を握ります。そうしてクロさんが光の穴に触れると、一瞬だけ光に包まれて、そして景色が様変わりしていました。

 クロさんの家の庭です。ああ、またここに来ることができるなんて……。夢のようです。夢じゃないですよね?

 

「セーラ。わたくしの頬をつねってください」

「夢ではありませんよ、アイカシア様」

「そう、ですか」

 

 クロさんに連れられて、家の中に入ります。とても広いキッチンを抜けて、その先の部屋へ。クロさんが言うには、大広間へ。

 その大広間は、夜に来た時よりもとても賑やかでした。

 

「おお! 来たのじゃ!」

「いらっしゃーい! はじめましてー!」

「皆さん、もう少し落ち着いた方が……」

 

 そこにいたのは、たくさんの女の子たちです。この子たちが、クロさんのお友達なのでしょう。クロさんの魔法によって召喚された、お友達。今日からはわたくしもその一人です。

 同年代だと思われるほどに背格好は近そうですが、種族などは違うようです。ドラゴンのような特徴を持つ子もいれば、絵物語で見るようなエルフもいます。

 種族も性格も違いますが、それでも同じところはあります。それは、みんながとても仲良しだということ。見て分かるほどに、この子たちは仲がよさそうです。

 

「シアちゃん。セーラさん。お昼ご飯は食べた?」

 

 そう聞いてきたのは小夜さんでした。

 

「いえ……。まだ食べていません」

「そっか。じゃあ、ちょっと用意するね」

 

 小夜さんがキッチンへと入っていきます。わたくしたちは椅子に案内されました。

 そうして、皆さんが自己紹介をしてくれます。竜人族のドラコさん。テイマーという動物と心を通わせる力を持つミリアさん、世界を救った勇者パーティの魔法使い、リコリスさん。今この場にはいませんが、他にもクロさんのお友達はいるそうです。

 

「わたくしはアイカシアです。シアとお呼び下さい」

「私はアイカシア様のメイド、セーラと申します。よろしくお願い致します」

 

 わたくしたちも自己紹介すれば、皆さんから歓迎の言葉をいただきました。

 その後は、皆さんの世界のことを教えていただきました。

 ドラコさんは彼女の世界では最強の魔女だそうです。確かにドラコさんの魔力はわたくしよりもずっと多く、とても驚きました。

 ミリアさんにはお友達を紹介してもらいました。もふもふです。ふわふわです。大きな狼を抱きしめるのはとても気持ち良かったです。

 リコリスさんには絵物語に出てくる英雄譚そのものな話をしていただきました。とてもすごい魔女です。

 けれど、何よりも驚いたのは、初日に出会ったクロさんのお師匠様が、誰よりも強いということでした。

 

「今日は珍しくいないのじゃが、あやつはほぼ毎日ここにいるのじゃ」

「ドラコさんよりも強いのですか?」

「間違い無く」

 

 予想以上にすごい魔女のようです。また是非ともお話ししたいですね。

 そうして話し終えた頃にお昼ご飯となりました。

 

「昨日の晩ご飯の余り物だけど……」

 

 出されたのは、肉じゃが、という料理だそうです。野菜やお肉がたくさん入ったお料理でした。

 スプーンで食べてみます。しっかりと煮込まれているようで、どのお野菜も柔らかく、食べやすいです。お肉もとても良い味でした。

 

「シア。だぱあ」

「え?」

 

 クロさんが隣で、肉じゃがをご飯の上にかけてしまいました。そのままお箸という道具で食べています。何でしょうか、決して良い食べ方ではないと思うのですが、とても美味しそうで……。

 

「…………。だぱあ」

「アイカシア様!?」

 

 ごめんなさい、セーラ! この魅力にはあらがえないんです……!

 肉じゃがと一緒に白いご飯を食べます。これは……とても美味しい。肉じゃがの濃いめの味が淡泊なご飯にほどよく合っています。やみつきになりますね……!

 お代わりもいただき、とても満足できる昼食でした。至福です。

 




壁|w・)肉じゃがをかける背徳の味……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。