ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~   作:龍翠

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みんなでおふろ!

「さて。お昼ご飯も終わったところで」

「はい」

「お風呂だ!」

「はい?」

 

 小夜さんの宣言の後、クロさんに手を引かれて、大広間にあるドアの一つをくぐります。

 そこは、浴場でした。とても大きなお風呂があります。すでにお湯が張ってあって、浴場はとても暖かくなっています。

 

「シア。おふろ。すき。おぼえてる。はいる。はいろう」

 

 確かに、クロさんにはわたくしがお風呂が好きだということを話題の一つとして伝えたことがあります。ですが本当に、ただ好きなものの話題で少し言っただけなのです。まさかそれで、お風呂を用意していただけるなんて……。

 

「はやく。はやく」

「は、はい……! 是非!」

 

 皆さんと一緒に入ることになりました。とても広いお風呂なので、みんなで入るのがとても楽しいのだそうです。

 みんなで服を脱ぎます。こうして誰かと一緒にお風呂に入るだなんて初めてなので、なんだか少し恥ずかしいです。

 もちろんセーラも入らせます。今回ばかりはメイドとか関係ありません。むしろ道連れです。

 そうしてわたくしたちが浴場に入ったところで、

 

「一番風呂はいただきなのじゃー!」

 

 ドラコさんが叫んで駆け出して。

 

「だめ」

「ぶへえ!」

 

 クロさんがそのドラコさんの尻尾を掴みました。ドラコさんは顔面から床に激突しています。とても痛そうです。

 

「な、何をするのじゃ! クロ!」

「ん? ドラコ、つよいこ。いたくない」

「いや、確かにそれほど痛くないのじゃが、こう、びっくりするのじゃ……!」

「きょう。しゅやく、シア。いちばん、シア」

「む……。そうじゃな! その通りじゃ!」

 

 あっさりと、ドラコさんは引き下がってしまいました。そしてわたくしの方へと歩いてきます。

 

「今日はシアが主役じゃ! ほれ、体を洗うのじゃ」

「あらいっこ。する。しよ?」

「え、あの……。はい……」

 

 あらいっこ、というのは少し分かりませんが、となりあえず頷きました。

 みんなであらいっこ。お互いに並んで座って、みんなの目の前の人の背中をごしごしと。

 洗い終わったら、お風呂です。クロさんやドラコさんに促されて、わたくしが最初に、そして次にセーラが入りました。

 

「ああ……あったかい……」

「うむうむ。お風呂はいいのじゃ。疲れが取れるのじゃ!」

「ドラコちゃん、そんなに疲れることがあったの!?」

「ミリア、言いおったな貴様!」

「きゃー!」

 

 お風呂の中でドラコさんとミリアさんがはしゃいでいます。ばしゃばしゃと追いかけるドラコさんと、逃げるミリアさん。本気で喧嘩しているわけではないというのは、楽しそうな笑顔を見ればすぐに分かります。

 

「いいお湯ですね……」

 

 セーラはとてもリラックスしています。先ほどまで緊張していたようですが、緊張するだけ無駄だと察したのでしょう。

 セーラにはいつもお世話になっています。せっかくなのでセーラも疲れを取ってほしいです。

 

「ぱけぱっけ」

 

 ふと、そんな声が聞こえてきました。顔を上げます。お風呂のドアから、白くてかわいらしいものがふわりと出てきました。壁をすり抜けて、すっと。

 

「あの……。クロ、さん……」

「ん? あれ、こばけ。おともだち」

「お、お友達ですか……」

 

 悪いものではないようですが……。クロさんは、ある意味度量が大きいのかもしれません。

 こばけはお盆を持っていました。そのお盆をわたくしの目の前まで持ってきます。それを水に浮かべると、すぐにクロさんが追加で魔法をかけていました。あまり揺れないように、ということのようです。

 そのお盆にあったのは、オレンジ色の水が入った容器です。ペットボトル、というものだそうです。中の水は、ジュース。オレンジという果物をしぼった果汁で作られたジュースだそうです。

 

「高級品ではないですか……!」

 

 セーラは驚いていましたが、この世界ではわりと誰でも買えるもののようでした。この世界がとても羨ましくなりますね。

 コップも人数分用意されていたので、ジュースを注いで飲んでみます。

 

「つめたい。おいしい」

「はい……。美味しいです」

 

 しっかりと冷やされていて、こんなに温かいお風呂の中で飲むのはとても贅沢だと改めて思いました。

 

「こんなに贅沢をしてもいいのでしょうか……」

「ん?」

「わたくしの世界ではできない贅沢です……。少し、申し訳ない気持ちが……」

 

 わたくしがそう言うと、クロさんに何故か頬をつつかれました。痛くはないのですが、くすぐったいです。クロさんを見ると、じとっとした目をしていました。

 

「シア。すごい。がんばる。ずっと。すごい」

 

 えっと……。

 ずっと頑張っていてすごい、ということでしょうか。なんだかとても照れ臭いというか……。恥ずかしいですね。そう思っている間に、クロさんが続けます。

 

「がんばる。ごほうび。だいじ。シア。ごほうび」

 

 わたくしのがんばりに対するご褒美、と。そう思っていいのでしょうか。

 

「アイカシア様。あなたはたった一人で休むことなく結界を維持し続けていました。これぐらいの贅沢は許されるべきです」

「セーラ……」

「ですから、楽しみましょう。クロ様もきっとそれを望んでくれています」

「そう、ですね……」

 

 自分へのご褒美、というのはなんだか不思議な感覚ですが……。それでもわたくしは受け入れることにしました。

 あまり変なことを考えていると、クロさんに怒られてしまいそうですから。

 わたくしがゆっくりとジュースを飲んでリラックスすると、クロさんはどことなく嬉しそうにしてくれていました。

 




壁|w・)この時のために広いお風呂があったのだ……!
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