ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~ 作:龍翠
翌日。朝ご飯をいただいて、わたくしは自分の世界に帰ってきました。
「ただ今もどりました」
「おかえりなさいませ、アイカシア様」
自室でセーラが出迎えてくれます。クロさんから新しい魔力の石をいただいているので、明日からはまたこれを使わせていただいて……。
「アイカシア様」
「はい。どうかしましたか?」
「大変申し上げにくいのですが……」
セーラの顔を見ます。何故かすっかり顔を青ざめさせてしまっています。
セーラと離れた時間は、昨日の夜から今この時まで。それほど時間がありません。その短い時間で何かあったのでしょうか。
わたくしが戸惑っていると、セーラが言いました。
「昨日、陛下と旦那様が来られていたそうです……」
「な……」
陛下は、当然ながらこの国の王であり、現在の人類をまとめる方です。旦那様は、わたくしのお父様。なぜ、そんな二人がこんな場所に……。
「先日、アイカシア様が最初にあの世界を訪ねた時ですが……。その時に、一時的に結界が弱くなってしまっていたらしく、わずかではありますが魔獣が侵入したそうです」
「え」
「幸い、その魔獣は兵士たちに討伐されましたが……。これは異常事態だと、様子を見に来られたようでした」
ああ、そうです。どうして思い至らなかったのでしょう。あの、最初に転移した日。あの時は魔力の石なんて便利なものはなく、本当に突然、あの世界に飛ばされました。
当然、結界に魔力を供給し続けていたわたくしが消えたわけですから、結界の維持にも支障があったはずです。
幸い、短い時間だったためか完全に消えることはなかったようですが……。それでも、一部の魔獣の侵入を許してしまっていたのですね。
どうして、気付かなかったのでしょう。陛下にお伝えしておくべきでした。大きな被害が出る可能性だってあったのに。
「昨日、こちらに戻ってきて何があったのですか?」
「はい……。私が料理をもらいに行くと、兵士たちに取り囲まれまして……。謁見の間へ連れて行かれました」
それは。それは、きっと生きた心地がしなかったでしょう。セーラには申し訳ないことをしてしまいました。
「陛下は、なんと?」
「事情を聞かせてほしい、と。今回は被害がなかったので大事にするつもりはない、とのことです。むしろ、昨日姿が見えなかったのに結界が問題なく維持されていたことを不思議に思っておられるようでした」
「なるほど……」
陛下は安易に人の命を奪うような方ではありません。よほどの罪人でなければ処刑などしない方です。なので、命の心配はないでしょうが……。
けれど、これは正直に話すべきでしょう。不信感を与えてしまうわけにはいきません。
「セーラ。今すぐに王城に向かいます」
「え……。あの、結界は……」
「魔力の石をいただいてきました」
「あの子たちの魔力はどうなっているのですか?」
「…………。さあ……」
それは正直、わたくしが聞きたいことです。
二人で苦笑を交わし、結界の魔法陣に新しい魔力の石を置いてから、わたくしたちは王城へと向かいました。
塔の周辺は森になっていて、その森を抜けるとすぐに王城があります。王城の裏口の道は塔にのみ繋がっているため、そちらから人が来るとなるとセーラぐらいしかいないことになります。
そんな道から二人、つまりわたくしが来たためか、門番の兵士は口をあんぐりと開けて固まってしまいました。
「陛下にお目通りを願います」
「は……っ! 少々お待ちください!」
門番さんが慌てたように走っていきます。そこまで急いでいただかなくてもいいのですが。
「今更ですが先触れとか出した方がよかったのでは……?」
「セーラ、先に言ってくれませんか……!?」
「久しぶりすぎて忘れていました……!」
「いえ、わたくしも忘れていましたけど……いましたけど……!」
そもそも誰かを訪ねるなんて久しぶりすぎて完全に忘れていました。それに、あの塔に誰かが来る時も先触れなんてありませんし……。そう、これは不可抗力というやつです。
「わたくしたちは何も悪いことはしてない。いいですね?」
「おっけーです」
「セーラ、あの子たちを真似するのはやめましょう」
「楽しかったもので……」
それは、認めます。人生で一番楽しい時間でした。
そんな雑談をしている間に、先ほどの門番が他の兵士を連れて戻ってきました。ここから先はあの兵士たちが案内してくれるみたいです。
「お待たせ致しました」
「大丈夫です。少しお待ちした方がいいでしょうか?」
「いえ。陛下より、すぐに連れてくるように命じられています。どうぞこちらへ」
兵士たちに案内されて、わたくしたちは王城へと足を踏み入れました。
セーラは食事を取りに来るのに毎日ここに来ているはずですが、わたくしはとても久しぶりに入ることになります。正直、少し緊張してしまいますね。
それに、この先に待っているのは国王陛下です。それだけでも緊張してしまいます。
「アイカシア様」
わたくしの緊張を察したのか、目の前の兵士が声をかけてくれました。
「侵入した魔獣を討伐した部隊は私の部隊なんですよ」
「え」
「いやあ、魔獣相手を想定した訓練はいつもしていましたが、なかなか刺激的でした」
これは、怒っているのでしょうか。相手の顔が見えないので分かりません。
「申し訳ありません」
そう心の底から謝罪すると、兵士は慌てたように言いました。
「ああ、いえ。怒っているわけじゃありません。特に被害が出ることもなく、貴重な経験ができた、というだけですから。つまり、何が言いたいかというとですね……。あー……」
少し考える素振りを見せて、そして兵士は言いました。
「誰も怒っていない、ということです」
その兵士の言葉に、わたくしは少しだけ安心しました。
壁|w・)スピードバレ!