ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~ 作:龍翠
クロたちが作ったあの魔力の石は私もどういったものか聞いてある。シアちゃんの世界を守る結界を維持できるすごい道具だ。
今まではシアちゃんみたいな聖女がいないと維持できなかった結界を、石みたいな道具で維持できる。彼らからすれば、喉から手が出るほどに欲しいものだろう。
「シア。いし、おやくだち?」
「はい。すごく役に立っています。休日なんて、初めてでしたから」
「む……」
王様が表情を歪めた。これは、多分、罪悪感とかそんな感じだと思う。休みなく結界の維持を続けさせていたことに思うところがあるのかもしれない。もっと反省しろと私は思う。
「あー……。それで、だな。クロ。その魔力の石、だったか。定期的に譲ってもらうことはできないか?」
「だめ」
「え」
まさか即答で断られるとは思わなかったのか、シアちゃんが口をあんぐりと開けて驚いてる。隣に立つセーラさんも目を丸くしていた。
これは、クロの言葉が足りなすぎると思う。ちゃんと理由も言ってあげないと。
クロが新しい虹色の玉を取り出すと、それを掲げてみせた。クロはちっちゃいから、両手を挙げてもそれほど高くなってないけど。
「しんさく。すごく。すごい」
「はあ……?」
あまりにも説明が足りないよ、クロ。それだと誰も分からない。
クロもすぐに気付いてくれたみたいで、むむ、と少し唸ってから口を開いた。
「まわり。まりょく。すいとる。たくわえる。まほうじん。ながす。ずっと。ずっと」
「つまり、周囲の魔力を吸い取って、魔法陣に魔力を流し続けるっていうことかな?」
「ん!」
私の問いに、嬉しそうに頷いてくれた。
それは、つまり。この石を魔法陣に置いておけば、結界は常に維持できる、ということかもしれない。それは本当にすごいのでは?
「まさか、そんなものが……!」
「待て待て! そんなに魔力を吸い続けられるものなのか!? 吸い尽くすのではないのか!?」
剣士さんの疑問ももっともだと思う。膨大な魔力を吸い続けていたら、すぐに枯渇してしまいそうだ、と思うのは仕方ないことかもしれない。
でもそれについては、私もリオちゃんから聞いたことがある。
「人一人が使える魔力なんて、世界の総量と比べたら大したことないらしいですよ」
「なに……?」
「世界そのものの魔力は、あなたたちが想像しているよりもずっと多いってことです」
聖女といっても、しょせんは人間。世界そのものが生み出す魔力量と比べれば、雲泥どころか天地の差だ。今まで聖女一人でまかなえていた魔力程度、使い続けても問題なんて起きるはずがない。
「シア。あげる」
クロがシアちゃんにその魔力の玉を渡す。シアちゃんはごくりとつばを飲み込んで、そっと丁寧に受け取った。宝物を受け取るかのように。
「いいのですか?」
「ん。その代わりに」
「はい」
「おともだち。あそぼう?」
「…………。クロ、さん……」
この世界にとってはまさしく宝とも言える魔力の玉だけど、クロにとっては新しいお友達と遊ぶための便利な道具、程度の認識なんだと思う。
友達をたくさん作って、一緒に遊ぶ。クロの目的は、ただそれだけ。
そんな二人の様子を見て、王様は大きな声で笑い始めた。
「わはは……! これは予想外だ!」
「陛下」
「実を言うと、アイカシアの言葉を疑ってはいなかった。故に、なんとしても魔力の石とやらの継続的な取り引きを、何がなんでも引きだそうと思っていたのだが……」
王様がシアちゃんを見る。シアちゃんの手の中にある、魔力の玉を。
「まさかそれ以上のものを譲っていただけるとはな……! クロとやら。何か、わしに望むことはないかの? どのような願いでも、わしが叶えてみせよう」
せめてものお礼とか、そんな感じかな。でもクロにお願いってあるのかな。クロのお願いはもうほぼほぼ叶ってると思うけど……。
クロは少し考えてから、言った。
「シア。いつでも。あそべる。してほしい」
「ふむ。無欲じゃなあ……。ならば、アイカシアよ。今後はこの魔力の玉とやらの管理をこの場所で行うのじゃ。あとは自由で構わんぞ」
「陛下……! ありがとうございます!」
シアちゃんが勢いよく頭を下げると、王様は楽しそうに笑いながら帰っていった。
もうこれで王様の用事は終わってしまったらしい。終わってみれば、あっさりと片付いた気がする。拍子抜けもいいところだ。いや、苦労したかったわけじゃないけど。
クロたちは早速、魔法陣の部屋に魔法の玉を置きに行った。嬉しそうに、シアちゃんとお手々を繋いで。それを見れただけでも、一緒に来て良かったと思う。
さて……。
「セーラさん」
「あ、はい!」
「お弁当作ってきてるんだ。戻ってきたらご飯にするだろうから、お茶の用意をお願いできる?」
「かしこまりました!」
セーラさんが慌てたように部屋を飛び出していく。そんなに慌てる必要はないんだけど。
それにしても。本当にあっさりと、解決してしまった。さすがはクロと言えばいいのか、リオちゃんを褒めればいいのか。
でもクロが友達を作る魔法を作らなかったら、そもそもこの世界に来ることもなかった。それを思えば、やっぱりクロが一番すごいと思う。
「おねえちゃん」
そう考えていたら、クロが戻ってきた。もちろんシアちゃんの手を握って。仲良しなのはとてもいいことだ。見ていて微笑ましい。
「おかえり、クロ。うまくいった?」
「ん。ばっちり。おべんとう、たべる」
「うん。セーラさんにお茶を用意してもらってるからね」
クロが背負ってるリュックからお弁当箱を取り出して、テーブルに広げてあげる。さすがに肉じゃがは入れられなかったけど、それでもたくさんの種類のおかずを入れておいた。
焼きそば、唐揚げ、春巻き、肉団子、卵焼き。他にもたくさん。
「わあ……」
シアちゃんの目が輝いてる。ふふふ、やはり小さい子は美味しいものに目がないよね。いっぱい食べるべきだと思う。
「お待たせしました!」
セーラさんが戻ってきたところで、ちょっと遅めの昼食だ。
シアちゃんとセーラさんがとても美味しそうに卵焼きを食べてくれる。今後は制限もなくなったから、きっともっとこっちの世界に来てくれるはずだ。
「よかったね、クロ」
「ん」
嬉しそうに笑うクロの頭をそっと撫でる。たくさん遊べるといいね。
壁|w・)さくっと解決、なのです。