ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~ 作:龍翠
次はエナです。たくさんの魔女に囲まれて小さくなっています。どうしたのでしょう。
「エナ? たいちょう。わるい? やすむ?」
「クロちゃん!? あ、ううん、大丈夫! ただ、みんなすごい魔女だから、緊張しちゃって……」
「んー……」
エナは地球の魔女だからか、クロたちほど魔力が多くありません。でも、クロは気にしないでほしいと思っています。エナはとてもすごい魔法少女です。
「エナ。すごい。たたかう。すごい。そんけい」
「え? えっと……。そう?」
「ん」
たった一人で戦い続けていたエナはとてもすごいです。集まる魔女たちの中では一番弱いのかもしれませんが、たった一人で世界を守り続けていたということに素直に尊敬します。
だからこそ。エナにはそういうのは忘れて、楽しんでほしいと思います。
クロの、数少ない地球のお友達でもありますから。
「がっこう。たより。すごい」
「それはクロちゃんがもうちょっと頑張らないといけないだけだと思う」
そっとクロは視線を逸らすと、エナは小さく笑いました。クロとしては、学校でも今後とも頼りたいと思っています。
「クロちゃん。また学校でも遊ぼうね」
「ん!」
クロが頷くと、エナは安心したように微笑みました。
また移動。シアが上品に肉じゃがを食べています。上品に肉じゃが。なんだが不思議な光景です。
「シア」
「クロさん。本日はお招きいただきありがとうございます」
「ん……」
リコリスよりも様になっている気がします。シアは正真正銘の貴族というやつなので当然かもしれません。
「まりょく。たま。どう?」
「はい。問題なく動いています。これからもいつでも遊べますよ」
「ん。よかった」
クロも時々様子を見に行っていますが、それを聞くと安心します。師匠が言うには、何事もなければ半永久的に動くらしいので、きっともう安心でしょう。
もっとも。この先数十年後、クロもシアもいなくなった後、あの世界の人が何か悪いことをしてしまうかもしれませんが……。そこまではクロも関与するつもりはありません。シアと遊べれば十分です。
「シア。まりょく。ひつよう。言って、ね?」
「ふふ……。はい。その時はお願いします」
その時は、お役立ちです。
次は、リンネ。リンネの世界をクロは知りません。他の子と違って、リンネは何も問題を抱えていなかったので、単純に友達になっただけでした。もちろんそれが一番です。
というより、リンネは師匠ぐらいのすごい人なので、クロが何かをするまでもないのだと思います。
「クロ。今日はありがとう、です」
「たのしい?」
「はい。楽しい、ですよ」
リンネはとても強いからか、師匠と同じで一歩引いた立ち位置です。楽しそうなみんなを、少し遠くから眺める、そんな感じです。
「リンネ。せかい。どう?」
「私の世界、です? うーん……。日本みたいな世界、ですが……。ダンジョンがある、です」
「ダンジョン……!」
RPGでおなじみのダンジョン。ゲームが好きなクロはもちろん知っています。ダンジョン、ちょっとだけ興味があります。
クロがそわそわしていると、リンネは薄く微笑んで言いました。
「今度、案内してあげる、です」
「みたい。いいの?」
「もちろん、です。バカが作ったダンジョン、です。好きにしていい、ですよ」
何でしょうか。なんだか妙な言い方でしたが、クロは気にしないことにしました。
「とても楽しみ、ですね」
「ん……!」
きっと楽しい探索になりそうです。その時を楽しみにしましょう。
そろそろ魔女の輪を一周します。最後の魔女は、師匠でした。
「師匠」
「ん? クロ、おかえり。挨拶は終わり?」
「おわり」
「そう。おいで」
師匠の隣にクロが座ると、師匠がなでなでしてくれます。とても心地良いなでなでです。クロもふんにゃりしてしまいます。
「お友達、たくさんできたね」
「ん。いっぱい。たのしい」
「よかった」
ぷにぷにとほっぺたをつつかれます。ちょっとくすぐったいです。
「最初、クロと会った時は、すごく心配だった。とても暗い目だったから」
「そう?」
「そうだよ。でも、今はすごく楽しそうで、安心した」
「たのしい」
「それなら、よかった」
師匠にたくさん心配をかけていたことは、クロにも自覚があります。そしてとってもお世話になりました。
クロは最初、どうしてこんな力があるんだろう、なんて思って、こんな力があるから、とも思っていました。
でも師匠のおかげで、今では魔法が大好きです。こうして、こんなに素敵なお友達がたくさんできましたから。
「師匠。ありがとう」
「ん? どういたしまして」
そう言って、師匠は薄くではありますが、微笑んでくれました。
最後はお姉ちゃんです。お姉ちゃんはあっちこっちに行って写真を撮りまくっています。みんなも慣れたもので、ピースとかポーズをしています。お姉ちゃんはとても楽しそうです。
「おねえちゃん」
クロが呼ぶと、すぐに振り返ってくれました。
「あれ? クロ、みんなとお話ししてたんじゃないの? 休憩?」
「ん」
「そっかそっか。じゃあおいで」
お姉ちゃんがシートの上に座って、膝の上をぽんぽんと叩きます。クロは遠慮なくお姉ちゃんの膝の上に座りました。特等席です。
「クロ、大きくなったね。身長のびた?」
「わかんない」
「あははー。まあクロも成長期だからね」
そうなのでしょうか。クロにはよく分かりません。もしかすると、そのうち師匠よりも大きくなるかもしれませんが……。それはなんだか、いやです。身長を止める魔法でも考えましょうか。
「クロ? 変なこと考えてない?」
「気のせい」
「気のせいかな……?」
きっと気のせいです。
お姉ちゃんにもたくさん心配をかけて、たくさんお世話になって……。クロはお姉ちゃんのことが一番大好きで、一番信頼しています。この世界でお姉ちゃんだけは、クロを絶対に裏切らないと信じているから。
だからこうして、信頼して甘えることができます。もっと甘えたいです。かまえー。
「すりすり」
「あはは、くすぐったいよクロ」
おねえちゃんに頬ずりしていると、頭を撫でてくれます。とっても気持ちいいです。
「お姉ちゃん」
「うん?」
「ありがとう」
「どういたしまして?」
お姉ちゃんはよく分かっていないようでした。
さて。またみんなとお話ししましょう。そう思って立ち上がったところで。
「あいたあ!」
小さな悲鳴が聞こえてきました。みんなでそちらに、桜の木の下に視線を向けます。
「いてて……。なにこれ。なんでダンジョンの奥が外に繋がってんの……?」
そこにいたのは、師匠やリンネと同じ、白銀の髪の女の子です。ローブと杖、間違いなく魔女。つまりお友達になれる子!
クロは早速その子のもとに向かいました。わくわくです。
「こんにちは」
「え? あ、うん。こんにちは。ごめん、すぐ出て行くから……」
「んーん。わたし、クロ。あなたは?」
「え? ボク? ボクはリオンだけど……」
ボクっ子だあああ! というお姉ちゃんの叫びが聞こえてきます。そして師匠とリンネになだめられていました。私のお姉ちゃんが申し訳ない。
クロが簡単な説明をします。言葉足らずになっている部分は、他の子が補足してくれました。みんな、ありがとう。
「それはまた……。すごい魔法だ。え? ということはここ、日本に見えるけど異世界なの?」
「ん。へいこうせかい。たくさん。みたい」
「そりゃすごい……」
リンネの世界にも日本があるみたいなので師匠と一緒に調べてみたら、日本、というより地球がある世界はたくさんあるようでした。
ちなみにそれを知った師匠は、昔の私に言ったら驚くだろうな、なんて言っていましたが、クロにはよく分かりませんでした。
「おともだち。だめ?」
「え? いや、ボクでよければいいけど……。でもボクは」
「見つけましたあああ!」
「うおわあ!?」
光とともに別の人が出てきます。クロたちよりも少し年上に見える、金髪の魔女です。その魔女はリオンをぎゅっと抱きしめました。
「もうリオンさん、どこに行くんですか、もうかわいいうりうりうりうり」
「やめろおおお!? はなせアスティ! 痴女めえええ!」
うん。悪い人じゃないのは見て分かりますが、なんだかよく分からない関係性です。
とりあえず落ち着くのを待ってから、アスティと呼ばれた人にも説明します。その人はほへー、と変な顔になっていました。
「マジですごい魔法ですね。なにそれこわい。世界をまたぐとか人間やめてません?」
「お前が言うな」
リオンがため息まじりにつぶやきます。リオンを見ると、肩をすくめて言いました。
「悪い人じゃないよ」
「ん」
それなら、お友達候補、です。
こほん、とクロは咳払い。みんなもにこにこと待っています。だから、クロが代表して言いました。
「ようこそ、魔女の寄り合い所へ」
新しいお友達を迎えて、きっと楽しい日々が続きます。クロはそれがとても楽しみです。
了
壁|w・)ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
ちっちゃい魔女の相談所は、ひとまずここで完結となります。
もしかすると。本当に気が向いたら、しれっと新しいちっちゃい魔女を出しているかもしれませんが……。
それでも、ひとまずは、クロのお話はこれでおしまいです。
ちっちゃい魔女をたくさん書きたい、という欲望だけで書き始めましたが、存外たくさんお読みいただいて、とても嬉しく思います。
また別のお話でお会いできれば、とてもとっても嬉しいです。
ちなみに。ほとんど触れなかった子 (リンネ・リオン・アスティ)について。
そのうちこの子たちが主人公のお話を投稿しているかもしれません。
つまり、試しに書いてみた子たちだったりします。
いつになるか分かりませんが、それも読んでくれると嬉しいのです。
ではでは……。ありがとうございました!