リリカルDRAGON StrikerS   作:龍羽

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運命に抗った孤高の戦士は 惑星(ほし)とともに宇宙(そら)に散って。

辛い世界を生きた心優しい戦士は 戦いの行く末と希望を未来へ託して。


これは、時空も次元も飛び越えた、出逢いの物語。

ひょっとしたら 顔も名前も知らなかった筈の、
望んでも叶わなかった筈の、

ささやかな奇跡のお話……


魔法少女☆リリカルなのはstrikesとDRAGONBALL★Z
ふたつの世界が交わるクロスオーバー

リリカルDRAGON StrikerS

始まります







其之一  ファースト・コンタクト 前篇

 

 

 

 その日も、幼い少女キャロ・ル・ルシエは、宛てもなく荒野を彷徨(さまよ)っていた。

 

 齢6歳の幼い少女。

 傍らには、鳩よりも一回り大きい程の白銀の飛竜が一頭。

 名前はフリードリヒ。愛称はフリード。

 キャロが卵から孵して育てた、唯一の旅の友であり、唯一の家族だった。

 

 

 この時までは。

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかり・・・! しっかりしてくださいっ !」

 

 岩場と岩場の荒野を抜け、水と食料を求めて入り込んだ緑———荒野の中に時折存在する木々と茂みをかき分けた先。何か大きな物がぶつかった音がして向かったところに その男は倒れていた。

 全身に酷い怪我を負い、今にも事切れそうなあり得ない音の呼吸音。着ている物は見た事もない形状をしているが、明らかに元の形とは程遠いと判る 左肩から胸にかけて大きく欠けた鎧や膝周りが破れた黒いスーツ。

 余程の高所から落ちてきたのか、男を中心にして陥没した地面には亀裂が入り、土がえぐれて体は半分埋まっている。

 

 

「そうだ ヒールを・・・!」

 両手をかざして足元に広がる桃色の魔方陣。

 じわりと光を帯びる傷だらけの男の体。

 それは少女が村を追放される時、せめてこれ位はと教わった最低限の治癒魔法だった。

 

 しかし付け焼き刃な魔法では当然、瀕死の重症者を回復できるはずもなく。

 

「おねがい なおって」

 それでも持てる魔力を振り絞ってキャロは治癒魔法(ヒール)をかけ続けた。

 

 もう魔力が底をつく———そんな何度目かの時。

「うっ・・・」

 男が身じろいだ。

「あっ・・・?」

 ハッと顔を上げ、男の顔を覗き込む。そこには、すやすやと寝息を立てる男の顔があった。まだ怪我は完全に癒えてはいない状態。けれど少しだけ 顔色が良くなっているようにみえる。まだ予断は許さないが、でも一命をとりとめた、そんな程度。

 

「よかった・・・ ———」

 だがその僅かな兆候にほっと息を吐き出した少女は、そのまま倒れて意識を落とした。

 

 

 

   ★ ★ ★ ★

 

 

 

 戦士は———漢は宇宙に独り飛び出していた。

 

「これで全てが変わる・・・」

 

 すっかり煤けた赤いアームカバーをはめた右手には、今の己が込められる すべてのパワー。

 エネルギーが可視化され、掌に青白い光の塊となって収束する。

 眼前には金色の卵のような球体を側面にいくつもあしらった円盤型宇宙船———宇宙を恐怖のドン底に墜とす悪の旗艦が一隻。

 その艦の上部中央ハッチに浮かんだ艦と同系統のデザインの 卵型玉座。

 座するは角の生えた小柄で少年のような体躯の男。

 

 艦の———否、この軍の総指揮官。

 

  フリーザ。

 

 その人差し指の先には禍々しく、ぎらりと輝く金色のビー玉のようなエネルギー体。

 

 これが最初で最後の対峙だった。

 

 背後には故郷である赤い星———惑星ベジータが宇宙の闇に浮かぶ。

 愛着なんて物は、これまで一度も感じた事は無かった。

 けれど、目の前のこの男に裏切られ———今まさに惑星(ほし)ごと自分も、同族も消されようとしている。

 

 そういう未来を見せられた。

 

 滅びの運命。そんなのは別に構わない。

 だがそれは今じゃねぇ。

 信頼できる仲間たちを殺された———みんな 喜んで付き従っていたのに。

 

 いいように使われていただけだった。

 

 こんな奴にくれてやる命は これっぽっちもありはしない。

 最期の力を振り絞る。

 文字通り———全てを賭けて。

 

 漢は 己の『運命』に挑戦した。

 

「これで最後だぁあああああ!!!」

 

 右腕を思い切り振りかぶり、エネルギー弾を放り投げる。

 

 しかしその渾身の一発は、急速に膨張したフリーザのエネルギーボールに 呆気なく吸収されてしまった。

 軽く弾くように指を振り下ろすのに合わせ、今や宇宙船よりも巨大に膨れ上がったそれが漢に迫る。

 

 受け止めようと伸ばした両腕は 簡単に押し敗けた。

 そのまま漢はエネルギーの奔流に呑まれる。

 

 瓦解していく意識の中、漢の脳裏に一つのヴィジョンが過ぎて行く。

 

 

 玉座のフリーザ。

 それと対峙する、漢にそっくりの青年を。

 

 山吹色の衣を纏う我が子の姿を。

 

 

 その()()()()()()()を確信し、漢は嗤った。

 

 

 

「カカロットよ・・・!」

 

 

 

 そこで漢の———サイヤ人の戦士、バーダックの意識は 消滅した。

 

 

 

 消滅、したハズだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鳥の(さえず)りと梢の音。

 痛む身体を刺すように撫でる風。

 こじ開けた目に飛び込んできた青い空。

 

 再び浮上した意識と感覚が認識したのは、戦いに明け暮れる自分とは無縁な長閑(のど)やかな自然の有り様だった。

 

 

 ふう、と息を吐き出すのにも痛みを伴う。

 瞼を開けたままでいるのにも力を必要とするような、強い疲労感。

 石ばかりの硬い地面から一向に離れられそうに無い背中。

 

 周囲の長閑やかさとは程遠い己の有り様に自嘲が溢れた。

 

 

 ぼんやりと眺めたままの空の、その高いところを数羽の鳥が飛んでいく。

 風が吹いて頭上にそびえる木々が騒ついた。

 その向こうには馬鹿でかい衛星。

 月———ではなさそうだ。

 

 

 右腕を上げようとして痛み以外の違和感に遮られた。

 筋肉の軋む音を聞きながらもそちらを確認すれば、己に寄り添うように丸くなって寝息を立てる大小ふたつの塊。大きい方は白いローブを目深に被っていて顔が分からない。だが少なくとも己の上の餓鬼とおそらく同じくらいであろう事は、小さい方の塊を抱く手の大きさから何となく察した。

 そういえばサイヤ人の成長の仕方が特殊だと聞いたのは、どこの惑星のどんな野郎からだったか。

 歳の取り方がおかしいと宣った奴は、どうしたんだっけ。

 

 痛みで朦朧として柄にもない事ばかりが頭を過ぎる。

 

 バーダックはゆっくり息を吐いた。

 じくりと肺が痛んだが、許容範囲だ。

 

 息を吐き切り———前触れもなく肘を張る。

 

きゅうっ!?

「あうっ!?」

 

 その弾みで右肘にぴったりくっつくように丸くなっていた少女がコロコロと転がって行く。

「ぐっ!?」

 力んだ拍子にあちこちに走る激痛。

 特に背中が痛い。強く打ちつけたようだ。

 

———いやそもそも、どうして俺は生きている。

 

 フリーザのエネルギーボールに呑み込まれたのを覚えている。

 惑星ベジータ共々消されたはずだ。

 あれは夢だったというのか?

 

 違う。

 

 今までの事が全部が夢なら、今感じている全身の痛みの説明がつかない。

 ちょっとでも気を抜けばすぐに意識を失いそうな痛みの。

 あれは間違いなく現実だった。

 

 バーダックはあの時、間違いなくフリーザに殺された。

 

 たとえ夢だったとしても、惑星ベジータと異なるこの青い色の空———出稼ぎで別の星にいるのなら、尚更こんな緑の多い所で深傷のまま寝転がってるのなんてあり得ない。

 

 

きゅう!

 

 

 パサパサと羽ばたきながらバーダックの眼前を浮遊する白い影。

「なんだ この鳥は?」

 きゅうきゅうと鳴きわめく小型の飛竜型ドラゴンを捕まえる。青銀色の立髪に白銀の体躯と飛膜の翼。耳らしき突起の片方には金色のリングが付けられている。脚もそうだが全体的に痩せていて、あまり肉付きが良いとは言えないと思った。

 そこまで考えて タイミングよく腹が鳴る。

「まあ良い 細けぇ事はあとだ。ちと小せえがこんなもんでも小腹の足しくれぇにはなんだろ」

 

きゅく!?

 

 変な悲鳴を上げて制止する()()。そして暴れ出す。

 

きゅくうくくきゅくくくうう!!

 

「こら 暴れんな。上手く絞められねえだろうが」

 バーダックは 暴れる小型の竜を逃さないように捕まえながら、なんとか体を起こそうと試みた。はっきり言ってかなり痛い。腹なんか鳴っていなければ 空腹なんだか激痛なんだか分からないくらいだ。こんな小型の竜でも羽ばたくのに合わせてがんがん痛む。本当に大人しくしてほしい。

 片や小型の竜ことフリードリヒは必死だ。力を抜けば食べられる。それはもう全力全開で翼を動かし脚を振り尻尾を振り回して悲鳴をあげた。死に物狂いで暴れに暴れた。

 

「だ・・・」

 そのやりとりを見ているのは、転がって茂みに突っ込んだ拍子にフードがずれ落ち、桃色の髪が顕になった少女キャロ。眼の前で繰り広げられたフリードリヒのピンチに震え———無意識にも魔力を収束し始める。

「だめ・・・」

 囁くようなキャロの声は、残念ながらバーダックには届かなかった。

 届いていたとしても、聞いてくれるかどうかは怪しいが。

 

「チビのくせに———活きがいいのは良いがこういう時は厄介だな」

 舌打ちしつつ、もう片方の腕を持ち上げる。力ずくで絞めるのは諦めて、直接焼く事にしたのだ。

 焼き加減はどのくらいがいいだろうかと———振り絞ったエネルギーを腕に溜めるが、不良ライターのようにチカチカと火花が瞬くだけで中々纏まらない。エネルギー破で直接焼くよりも、その辺の枝に火を点けた方がいい焼き加減にできるのだが、今は細かい処理などを行う余裕はない。味も何もどうでもいい———消し炭でなければ。腹に入れば何だって構わない。

 ようやくエネルギーがまとまって形になりかけた時———

 

だめぇえええええ!!!

 

 キャロの悲鳴に応えるように バーダックが捕まえている小型竜が白銀の閃光に身を包んだ。

「はっ?」

 思わず出た間抜けな声。せっかくまとまりかけたエネルギーが霧散する。

 その間に光る輪郭はぐんぐん大きくなり———掴んでいた手はすり抜け———光が弾ける。

 

 現れたのは小型竜と同じ特徴を持つ、体長10Mもあろうかという巨体。

 

「フリードは・・・ フリードは・・・!」

 そこでようやくバーダックはキャロに気がついた。

 少女の足元に浮かぶ髪の毛と同じ桃色の円環文様に頰が引きつる。見た事はないしそれが何なのか知りもしないが、それが穏やかなものでない事だけは直感した。瞼の裏に炎が視える。

「食べ物じゃ———ない・・・!」

 白銀の飛竜が深く息を吸う。

「まて・・・ まさか・・・」

オレンジ色の火球が竜の口に収束し———

 

食べちゃダメなのぉおおおおお!!

 

 発射。

 

 

 強烈な炎の奔流がバーダックに迫る。

 

 万全な状態だったなら、こちらもエネルギー弾を放って応戦できただろう。

 いや エネルギー弾どころか素手で軽く返り討ちだろうか。

 

 いずれにせよ それらはどちらも『たられば』の話であり、今のバーダックは本来ならば 重症だったものが何とか意識を取り戻した程度まで回復しただけの病み上がりで。

 

 つまり 直撃したのである。

 

 

ドォオオオン!!

 

 

———こ の・・・ ぐっ・・・っ

 

 わずかな抵抗むなしく、バーダックの意識は再びブラックアウト。

 そして炎を放った竜もまた力を使い果たしたようで。光とともに元のサイズに戻った途端「きゅうう」と泣きながら地に墜ちた。バーダックの上にぼとり———そのまま目を回す。

 

 立っているのは少女ひとりだけ———キャロだった。

 

 

 

「・・・・・・あっ!?」

 

 しばらくぼうっとしていたキャロが我に返る。そして周囲の惨状に青ざめ、その中心地で気絶するバーダックとフリードリヒにさらに青くなった。

「か 回復を・・・!」

 そして連続ヒール。

 だがフリードリヒを無意識とはいえ覚醒させるのに魔力を消費していた少女は、程なく男の上に突っ伏した。

 

 そしてしばらくして、やっぱり最初に目を覚ましたバーダックに再び肘で弾き飛ばされたのである。

 

 

 

   ★ ★ ★ ★

 

 

 

 




長いので区切ります……



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