推しの子の世界に転生したけどVtuberしてる 作:文才パワーがない人
「う"っわ"ぁ"!!しぬ!しんじゃう!!」
汚い悲鳴をあげながら、ガチャガチャと忙しなくコントローラーで操作する。
パソコンに映るブォンブォン揺れる絵と裏腹に、画面の大半を占めるゲームの画面では、キャラが振り回す武器によってワラワラ居る敵が吹っ飛ばされ、煙となって消えていた。
「あー…雑魚敵に殺される所だった…よかったよかった」
コメント:周りをよく見ないから…
コメント:まんまとアイテムに釣られて罠にかかってて草
コメント:攻略ファイト〜!
コメント:おっと、ここから先は地獄だぞ
コメント:この先ダッシュが有効だぞ
コメント欄では、罠にかかって笑う者、純粋に応援する者と様々だ。
「敵は居なさそう…?じゃあ回復アイテムで失ったHP分補充して……あ、走り抜けた方がいいの?分かった!…よし、行くぞ!」
そうして画面のキャラが走り出し大部屋に入った瞬間、床が崩落した。
その瞬間、コメント欄が一気に沸く
コメント:強制イベントキタ━(゚∀゚)━!
コメント:あっ乙
コメント:これはもう助からないねぇ…
コメント:や っ た ぜ !
コメント:ここ本当は大部屋入ると同時にジャンプが有効なんだよなぁ…
そのまま落下して尻餅をつくキャラの周りには、武器を持った敵が囲んでいた。
「あっ、終わったかもこれ」
ワラワラと集まる敵に、尻餅をついたキャラは立ち上がれずにボコボコにされる。
なす術もなくHPを削られ、画面のキャラは呻き声をあげながら細かく跳ねる
そして情けない悲鳴をあげて力尽きたキャラをバックに『ゲームオーバー』という文字が現れる。
「あーあ…やられちゃった…よし!ゲーム配信終わり!」
コメント:リトライしないんですか!?
コメント:まだやれるだろ!?もっと熱くなれよ!!
コメント:リトライ地点からここまで来るのが苦痛なんだよなぁ…
コメント:流石死にゲーを出し続けた会社、慈悲がねぇわ
コメント:これでまだ初ボス辿り着いてないってマジ??
「リトライはしません!!断固としてしません!!」
そう言って、コントローラーを置く
「それじゃ、いつも通り『お悩み相談』やってくよー」
コメント:お悩み相談ターイム!
コメント:前回の料理の下処理についての悩みに皆して悩んでた時に現れた料理大好きニキ凄かったわ
コメント:アレ普通に参考になるんだよなぁ…料理ニキレシピ出してんじゃね?
「前の料理ニキさんは凄かったよねぇ、僕もアドバイス通りにやったら楽に下処理出来たし!目から鱗でした!」
画面はゲームオーバーを映したまま、その者はスマホを持って画面を弄る。
「さてさて、今日のお悩みは〜…」
そのままツラツラと、相談内容を画面に手入力し、コメント欄のみんなと解決策を考え、答えていく
「ん、そろそろ良い時間だね、じゃあ…」
そう言って沢山ある悩みの中から、不意に目に留まった一つを選ぶ。
「これで最後にしようか、今打つね」
コメント:ラストかぁ
コメント:今回は割と現実的な悩みが多かったな
コメント:つーか、身近な悩みだよな
カタカタとパソコンで打っていく
コメント:相変わらずタイピング遅くて草
コメント:ゲームする時の指の動きはどこ行ったんですか?
コメント:ウチの上司と同じ間隔やん
コメント:どうしてココだけ成長しないのか
コメント:PSは伸びるのにタイピングスキルが一ミリも伸びない…
「苦手なんですぅ!!…よしっと」
【愛ってなんですか?】
簡素な一文。
悩みというよりも、質問のようなものだ。
「うーん…」
コメント:哲学かな?
コメント:辞書引けば終わるやつやん
コメント:愛情とかじゃなくて愛かぁ…確かに分かりにくいよな、愛って
「愛…愛ねぇ…」
うーんと腕を組み、
「貴方の言う『愛』は多分、愛情とかじゃなくて…きっと、愛ってなんなんだろう?って言う純粋な悩みなんだと思う。
愛とは何か?って言う疑問には、人によって色んな回答があるし、確実にコレ!とは言えない…だからあくまで僕個人の回答として話すね。
まず、愛って何なのか…という事だけど、端的に言ってしまえば…愛は……劇薬…かな」
コメント:劇薬…
コメント:優しそうな立ち絵と声から吐かれる劇薬という言葉
コメント:『劇薬』って言う時の淡々とした声にゾクっと来た
「愛というのは人を変えるんだよ、良くも悪くもね。
末期癌になった人が愛している相手と一緒に楽しく過ごしたらガンが完治したなんて話もあるし」
コメント:愛の力ってすげー
コメント:特番でやってたわそれ
コメント:数年前の話だよな
「この話事実なんですよ、凄いねぇ…」
画面中に映る立ち絵はへにゃりと笑う。
「愛はこんな風に悲劇すら跳ね返してしまう凄いもの、でもそんな強ーい力は悪い方へ傾けば…自分を蝕む呪いになる」
コメント:淡々と言うと怖えよ
コメント:ホラー系の語り部かな
コメント:ナレーターやれそう
「僕の周りでもよく起きたのが、『あの人は今私を好きで居てくれるけど、捨てられるのが怖い』が多かったかな。
捨てられたくないから自分を磨く、愛して欲しいから自分を偽る…そんな事をしても苦しくなっちゃうよ、義務感とかでやる行動は息苦しいし楽しくない…
それに、人というのは基本的には一側面、多くても三側面しか見ていないからね。新たな側面を見ても受け入れてくれる…そういう相手と巡り会うのが一番さ、恋愛なんて特にね!
だからもし捨てられても、置いてかないで!とかじゃなく、あの人とは合わなかったんだと前向きに!
人生に出会いはごまんとあるのです、落ち込んでもゆっくりでいいので立ち直って、しっかり前を向いて歩けば愛と幸せは掴めます」
コメント:ポジティブ思考の極みで草
コメント:出来たら苦労しないんだよなぁ…
コメント:みんなが前向ける訳じゃないんだわ
「もしそうなったら僕が背中を押しますとも、笑顔が一番!
…ありゃ、そろそろ時間になっちゃうな…よし、最後に一言。
この悩みを書いた貴方へ
僕の話を聞いて、やっぱり愛が分からない…ってなっても、いずれ分かる日が来るよ。
分かる日が来るまでに、貴方は色んな困難を経験するかもしれない、時に自分一人ではどうしようもない時が来るかもしれない。
また悩みが出来たら、気軽にスコンと悩みを入れて欲しいな、ここのみんなと一緒に考えるからさ!
それじゃあ配信はこれでおしまい、みなさんまたね〜」
コメント:おつかれ〜
コメント:おつー
コメント:また来るわ!
画面に映る『配信終了』の文字を見て、その者は配信状態を切って一息吐く
「…愛なぁ…僕も知りたいよ、愛」
『推しの子』の世界へ転生し、Vtuberとして活動する転生者、
「…あの悩み、誰の悩みなんだろうなぁ…ちゃんとした答えになってるかな…不安だ…」
コンはごろんと横になると、スマホを操作してとある動画を再生する。
そこに映るのは『B小町』
しかし、コンが注視しているのはただ一人、星野アイだけだ。
「…死んで欲しくないな…あー、偶然隣に星野アイが住んでるとかないかなぁ…」
コンが住んでいるのはマンションの一室だ。壁には防音壁を施したので音が漏れる心配もない。
「…まぁ、仮に隣に居たとして、役に立てるとは思えないな…こんな身体だし」
そう言ってコンは立ち上がり姿見を見つめる。
姿見に映るのは、手入れが殆どされていない腰まで伸びた白い髪と、キツネのような鋭い目付きとその下に付いた濃いクマ。
痩せた身体はある程度筋肉があるものの、普通の人と比べれば見た目からして筋肉量が少ない、出来て捨て身タックルだろう。
緩く溜息を吐いて、コンは天井を見上げる。
「まぁ、いつ起きるかは分かる…明日だ。…もし、僕が助けられる範囲内だったら、捨て身覚悟で助けよう…」
そう言って、コンは夜ご飯を買いにコンビニへ行く為に、玄関を開ける
「あっ…」
「あっ…」
玄関を開けた先に、いた。
星野アイが、いた。
何やらスマホで動画を見ていたようで、チカチカと明るい。
「…失礼しました、一回閉めるのでどうぞお通り下さい…」
「あ、ありがとうございます…?」
一旦扉を閉め、そのままベットまで戻ったコンは、ベットダイブをキメた後に、仰向けになって呟く
「…同じ階に居るじゃん、やばい、どうしよう…明日、死んじゃうよ…」
頭を抱えたコンは、暫くの間、動けなかった。
結局、コンビニには行かずにご飯抜きで寝てしまった。
そして、翌日…アイが殺される日となった時、コンは覚悟を決める
「よし、捨て身になってもアイを救おう」