主人公の友人枠だったはずが、いつの間にか主人公となった男 作:あおーいあお
後から修正入れるかも
身体が暖かい。
まるで何かに抱きしめられているかのような…そんな気分だ。
…小さい時以来だろうか。
このような感覚を味わうのは
小さい時、母親に抱きしめられた時のような安心感だ。
母さんが死んで10年。泣き虫だった俺を母さんは良く抱きしめてくれた。
久しい温もりだけをただ感じて、俺は瞑っていた目を開いた。
「なっ…!?怪人になったの!?」
「あぁ、そうだ。……これは読めなかっただろ?俺も少し前までこうなるなんて考えてなかった」
目の前には振りかぶった鎌を受け止められて驚くリーパーが居た。
腕に纏っている狼の爪のようなクローで鎌を受け止めており、その力は互角以上で軽く押えている。
「…ふん、犬っころと人間風情が合わさったところで変わらないわ。さっさと、惨めに死んでよ!!」
リーパーが鎌をずらしてこちらへ振りかぶってくる。
それをクローを使って弾き、返しで腕を切りつける。
「いっ…!?治らない!?」
腕の傷跡を見て取り乱すリーパー。
想定外のことが起こったようだ。
「あなたどんな手を使ってッ…」
「吹っ飛べ…!!」
取り乱しているところに追撃としてクローで切りかかるが、鎌で防がれる。
しかし、そのまま鎌が砕け散る。
「なんで!?私の鎌が壊れるなんて……はっ、まさか!?」
「あの犬っころ……まさか
「…てめぇの言ってることはよくわかんねぇけど。こいつが力を貸してくれたんだ、後悔するくらいの一撃を食らってもらおうか…!」
拳を握って力を溜めると、クローが消える代わりに手の中に一振の剣のようなものが現れる。
剣と言うよりは牙と言った方がいいのだろうか。
この剣からは自分でも恐ろしくなるほどの力を感じる。
「ひっ…!?」
「喰らえっ!!」
剣を構えた時点で背中を見せて逃げようとするリーパー。
地面を蹴り、剣で逃げようとしたリーパーの背中を袈裟斬りにする。
それを喰らったリーパーはその場で転び、こちらを向きながら後ずさりしていく。
「許して…。殺さないで…」
うわ言のように呟きながら焦点のあってない目でこっちを見るリーパー。
いきなりの形勢逆転と今まで感じたことのなかった恐怖でかなり精神的に参っているようだ。
このまま放置しても、多分他人を襲うことはないだろう。
「…許してやる。もう二度と罪を犯さないならそのまま逃げろ……」
「…ほ、本当ですか…?」
『駄目だ、私はこいつに弱っていたところを狙われて殺されかけたのだ。こいつを殺せ』
脳みそに声が響く。
狼の怪物は怒り狂っているようだ。
「ここまで追い込んだやつは殺さなくていいだろ」
『許さぬ。…どうしても、殺さないのならば体を乗っ取ってでも殺す!』
ぐわんと視界がブレる。
脳みその半分が一瞬で自分の意識から離れたような感覚になる。
「くっ、、、リーパーとか言ったか?」
「は、はひ…!」
「こいつ、抑えるの厳しいから…、さっさと逃げろ…。ぐっ…、私を侮辱したこと、死を持って償うが良い…!」
右手が剣を振り下ろそうとするのを左手で無理矢理止める。
均衡状態が続いているがいつまでもつか分からない。
「早くっ!」
「はいぃぃぃ!!」
最初の強気な態度は一切無くなったリーパーがフラフラしながら走って路地から抜け出していく。
『…くっ、貴様ァ!!』
「ふざけんな!俺は殺したくねぇの!」
『黙れ!やつは私を侮辱したのだ!死をもって償わせねばならん!』
「初対面のやつに言うことじゃねぇけど、お前プライド高すぎんだよ!!」
『…ふん、貴様に快く力を貸したのが馬鹿馬鹿しいわ!!』
しばらくの間、言い合いをしていると、目の前に何らかの人型が急降下してきた。
「…貴様がこの路地を破壊し尽くした怪人か?」
そこには怪人化した白歌さんが立っていた。
ん?路地を破壊し尽くした?
よーく周りを眺めていると、あたりは剣に切り刻まれて瓦礫にまみれていた。
…明らかにリーパーとの戦闘でついた痕ではなく、口論の途中で暴れていたのが原因である。
「ん…?」
「あのですね、その、わざとじゃなくてですね。」
「…怪人になっているし、こんなところでなにをしている!!この大馬鹿者が!!!」
白歌さんの拳を顔面にモロに喰らって意識は吹き飛んだ。
最後に聞こえてきたのは輸送するという言葉だった。
◇
「うぅ…、ここ、は?」
「…起きたか、大上白」
頭が痛い。
目の前にはスーツ姿の白歌さん。
そして俺は鎖で椅子に雁字搦めに拘束されている。
「…貴様と融合怪物とはもう怪物を通じて対話させてもらった。いつかやらかすとは思っていたが……、ついにやらかしたか」
「いやいやいや、仕方ないじゃないですか!死神のリーパーとかいう怪人に襲われたんですよ!だよな、神喰狼!」
『私は何も見ていない……、私は何も見ていない……。ひっ、首が飛んでいく…!』
聞こえてきた神喰狼の声は震えており、ビクビクしている。
怪物を通じて神喰狼に対話って…絶対なんかやっただろ!?
首が飛ぶとか言ってるし!!
「あまり怯えるな。少しばかり駄犬を躾けただけだ。それともなんだ?貴様も躾られたいのか?」
一瞬で あ、俺終わったわ… と感じる程の冷たいオーラをぶつけられて身体が震える。
ここまで白歌さんの殺気を受けたのは焔と一緒に悪戯を仕掛けた時以来だ。
扉を開けたら虫のおもちゃが降ってくる程度の悪戯だったが、仕掛けたあとから殺気を受けながらの説教を食らうまでの記憶が無いほどだった。
「愚弟といい、貴様といい…なんで同じ日に問題を起こす…」
「焔に何かあったんですか?」
「帰ってくる最中に怪人に襲われて、たまたま近くにいた怪物と融合した」
え?
焔も俺と同じ状況になったのか。
なーんだ、同じ境遇で心強い………なんて言うと思ったか!?
まじでどういう状況だよ。
そして結構この鎖くい込んで痛い…。
「…白。貴様の言っていたリーパーとやらは小学校での殺害を行った怪人とみて間違いないか?」
「はい。教師にキモイことをされそうになっていた所を契約して助けた、とか言ってました。…あ、でも多分、俺の攻撃で心が折れているはずなので人を襲うことは無いかと」
「ほう、あの惨状でそいつは生き残ったのか?」
「いえ、リーパーの心が折れた時点で逃がしました。神喰狼が体を乗っ取ってとどめをさそうとしていたので」
そう告げると複雑な顔をした白歌さんが俺の鎖を解いた。
え?なんで今のタイミングで解いたの?とかいう疑問は置いておいて、先程の鎖は見覚えがある。
神喰狼の体に着いていた鎖だ。
今も鎖が外れたら身体が軽くなったので力を抑え込むものだろうか?
「お前のように優しい者が力に呑まれて暴れた訳がないか。…すまなかった。鎖、キツくなかったか?」
先程までの張り詰めた殺意は消え去っており、今までに見た事がないほどの優しい顔で俺の頭を撫でる白歌さん。
すげードキドキする。
「大丈夫です、全然ピンピンしてます。」
「良かった。…本題に入らせてもらう。」
緩みかけた雰囲気が一転し、白歌さんが少し悲しそうな顔で言った。
「お前と焔には怪異捜査対策局の私の部隊に入ってもらうことになる。」
な、な、な、なんだってーーー!!?
大袈裟だが、過去1番の驚きである。
怪異捜査対策局所属になることも予想してはいたが、白歌さんの部隊だとは予想していなかった。
「いや、でも戦闘したことは1回しかないですし…」
「それならば問題ない。戦闘面は私が面倒を見る。…一番の問題はお前ら2人の融合した怪物だ」
「白、お前の宿した
衝撃の事実を聞き、俺は一瞬固まった。
しかし、同時に心が踊っていた。
…
「そして焔はいくら死んでも気力さえ保てれば生き返れる
不死鳥…かっこいいなぁ。
さすが焔って本人がいたら言っているところだ。
鎖から解き放たれてから1度も動いてなかったのを思い出して、体を伸ばす。
するとパキパキと音が鳴る。
ひえぇ…そんなに音鳴る?
「白歌さん、ひとついいですか?」
「なんだ?」
「…護身術を教えてくれると言ってましたよね。俺に怪物の力の使い方を教えてくれませんか?」
それを聞いた白歌さんは一瞬呆気に取られたが、すぐにニコッとした。
「状況を飲み込んで割り切るまでが早いな。急に怪人になって、戦いに巻き込まれることになったのに。…いいぞ、教えよう。お前はもしかしたら誰よりも強くなるかもしれない」
白歌さんの顔に見惚れていると、部屋の扉がノックされる。
「…
「む、早いな。…白、いきなりだが紹介する。
そのまま重々しい鉄の扉が開くと、そこにはふんすと言わんばかりに張り切った群青色の髪の女の子がいた。
「彼女は明日からお前とツーマンセルを組む予定の霧條 霞だ。仕事の仕方や、わかんないことは教えて貰え。」
「よろしくね!」
「は、はい。よろしくお願いします…。」
美少女としか言い表せない顔に心が安らぐような笑みを浮かべている霞さん?ちゃん?
…ちゃんでいいか。
「ところで、明日から仕事って、学校とかには…。」
「……っ。すまない、私にはどうする事も出来なかった。何とかお前と愚弟の解剖行きは回避したが、学校にはしばらくの間行けない。上はお前達2人を貴重な融合体として実験材料にしたがっているんだ。」
「貴重な融合体って、なんか俺と焔は普通の怪人と違うんですか?」
「…あぁ。お前達ふたりはそれぞれ怪物の中でも格が高い特別な怪物と融合したんだ。」
格?
怪物のランク付けでもあるのだろうか?
そう疑問に思っていると、霧條さんが解説を始めた。
「えーっと、確かきみは神喰狼のクローンと融合したんだよね?…白歌さんの神喰狼がSで最高位のランク。そのクローンはデータが取られているんだけど、おおよそAって言われてるんだよ。そして白歌さんの弟さんの不死鳥はS。まあ、これを見てくれればわかるよ」
先程までの印象とは程遠い早口でそう言いながら手渡してくるのは怪異捜査対策局の新人向けの指南書。
1ページ目に怪物のランクについて書いてある。
長々しい説明があるが簡単にまとめると、ランクはE~Sまであって日本において良く出没するのはE~Cの怪物らしい。
そしてE~Cの怪物は大抵の人間と適合する。
ただし、どのランクの怪物も完全に適合する人間と融合すればレベルが格段に上がる。
怪物にもよるが捕獲して怪異捜査対策局の実験施設で収容されているらしい。
怪人になっておらず、戦闘職を希望して入局した新人には検査などを行って収容されている怪物と一部分を融合する。
B~Sの怪物は適合者が少ない上、その中でも一部の怪物は完全適合しなければ寿命を削るようなものも少なくないとの事だ。
「何となくわかりました。…俺は学校に暫く行けなくても構いません。白歌さんがせっかく頑張ってくれたんですから、今の立場で満足です。」
「…ふっ、そうか。」
感心したように頷く白歌さん。
やはり一々様になっている。
ちなみに白歌の内心は「…ふっ、そうか。(くっ、上層部さえ居なくなれば白を学校に行かせてやれるのに……!!…だがここまで言ってくれるのは嬉しいな…今すぐにでも撫で回してやりたい…!)」である。
「ねぇねぇ、白くん」
「な、なな、なんでしょうか?」
いつの間にか近づいていた霞ちゃんがなぜか耳元に近づいて囁く。
吐息が耳にあたってこそばゆい。
「はっくんって呼んでいい?」
「は、はい…」
なんでそれを囁く必要があったんだ。
いや、本当に。
あ、いい匂いがふわっとする。
「白、霞。2人にはツーマンセルで行動して新たな協力的な怪物・怪人の発見、それと死神の捜索をメインに活動してもらう」
…死神、あの傷を受けて今頃生きているのだろうか?
あの時に見せた怯え顔はきっとリーパーと体の主の素なのだろう。
あの姿を見た時、彼女は自らあのような行いをするようなやつに見えなかった。
「…おーい、はっくん!集中しすぎー!!」
そう言われてようやく集中しすぎて周りを見ていなかったことに気がついた。
「…ところで白。あー、その、すごく言いづらいことなんだが…」
「はい、なんですか?」
「うちの愚弟が不死鳥の力を使って戦闘したのが、実はお前の家の近くでな…」
それがどうしたのだろうと首を傾げたが、少し嫌な予感というか脳みそが弾き出した最悪の予測が出てきた。
「…お前の住んでる部屋を含む2階が全て怪人による攻撃で崩れたあと、愚弟の攻撃で完全に燃え尽きたそうだ。幸い人的被害はなかったようだが……」
は?
まじかよ。
本当に予測してたけどそんなことあるか。
「嘘ですよね?」
「本当だ」
「本気と書いてマジですか?」
「
嘘だぁぁぁぁぁ!!
え、そんなことあるかよ!?
人間じゃなくなって、家なくなって?
…これは夢に違いない。
きっと夢である、いや、そうであってくれ。
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