Persona The Crossover【ペルソナ3×ペルソナ4 クロスオーバー 本編後】   作:ベリーベリーハード

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わりとカッチリ決めてはいませんが、一応ペルソナ4U2までの基本設定があったりなかったり。ちなみに、あらゆる小説媒体の設定はまるっと知らないのであしからず。


六月十六日 晴れ

 ーー六月十六日。入り口広場。放課後。

 

「クンクンクン。クンクンクン」

 

 テレビが積み上がった見慣れた広場の外周をクマはしきりに鼻を鳴らしながら廻っている。

 匂い、を探しているのだ。

 いつか見たものと全く同じ景色に苦笑しながら、陽介は周りの面々の顔を確認し、あらためて声をかけた。

 

「さて、と。それじゃあ全員揃った所で一応聞いておくけど……みんな、【アレ】は見たよな?」

「おう、もちろん見たっスよバッチリと。でもなんなんすかあの薄気味悪りぃ建物は。しかもアレ、びみょーに八十神高校ぽくなかったスか?」

 

 荒い口調で返したのは巽完二だった。

 そのデカくて幅のある身体を苛立たしげに揺らす後輩に陽介は神妙な頷きを返し、

 

「お前もそう思ったか。ってことは天城達も?」

「うん。原型はあまり残ってなかったけど、なんとなくね」

「あたしも同じく。あと勘違いじゃなければ、アレと似たような建物を少し前に見た気がするーーGWの時に」

 

 ゴールデンウィーク。思い出すまでもなく、四人の脳裏に浮かぶのは五月の連休中に起こった【P-1グランプリ】と呼ばれる格闘大会の開催事件。

 短い日数で立て続けに起こったその事件の中でも、連休終盤に街中で発生した赤い霧は現実世界そのものを歪めた特異な現象で、更に赤い霧に次いで強く記憶に残った光景が、巨大な塔へと変貌した八十神高校の姿だった。

 マヨナカテレビで見たあの建築物は、その時の光景と酷似している。それは言葉に出さずとも全員が結論を出した、無言の総意だった。

 

「……なるほどな。結局、思った事はみんな一緒だったって事か。となると、経緯も原因も全く分からんがやっぱりアレが八高ってことには違いないんだろうな」

「でもさ、今日登校した時はなんともなかったよね、校舎。赤い霧も出てなかったし」

「……赤い霧、はな」

 

 苦虫を噛み潰したような顔で陽介は周りに目を向ける。確かに現実世界には異変が無かった。それはいい。だが、良かった事以上に良くない事が起こっている事実を、陽介達はテレビの中に入ってすぐに理解した

 

 消え去った筈の霧。視界を遮る見慣れた景色が周辺を覆っている。

 

 この事実だけで、陽介は【とんでもない事が起きる何かの前触れ】を感じずにはいられなかった。

 

「マヨナカテレビが映って、また霧が生まれて……これって、もしかしたらまたあの悪い神様が復活したって事なのかな?」

「……わからねえ。でも、わからねえから、それを今すぐにでも調べなくちゃいけないんだ。特捜隊のメンバーとして、この町に住む一人の人間として」

「だね。花村にしては良い事言うじゃん」

「にしては、は余計だよっ。……というか」

 

 振り返った陽介はテクテクと歩く青い着ぐるみに向けて声を張り上げる。

 

「おーい、クマっ! そろそろなんか分かったかー!」

「むー、ちょっと待ちなさいっての。こういうの久々から、まだうまくカンを取り戻せてないクマよ。クンクン」

「……ちッ、使えねえなあ。つか先輩。クマ公を当てにするぐらいなら、りせの野郎連れてきた方が手っ取り早くないスか?」

「残念ながらりせちーは忙しいんだよ。芸能界復帰前とかで色々ごたついてるみたいだしさ。そんな大変な時に、こっちの都合で無理は言えねえだろ?」

 

 一応、メールを送ってはいるものの返信はまだ来ていない。もしかしたらこれからすごく忙しくなる、という言葉を本人から聞いてる手前、陽介に出来ることはもう何もなかった。

 

「まっ、そうだよね。おまけに直斗くんも最近は引っ張りだこで忙しいみたいだし、それに鳴上くんだって……」

「ほらそこっ! 静かにせんしゃい! 騒がしくてクマが集中出来ないでしょーが!」

 

 両手を振り上げてクマはクマーッと吠えている。クマもクマなりにプレッシャーを感じてはいるのだろう。

 クマはプンスカプンスカと更に鼻を鳴らして、

 

「まったくもうっ、クマセンサーはビンビンのカンカンなんですからね。本当にクマったものですよーーって、お? おおおおお?」

 

 小言から一転してクマは大きな声をあげる。

 その異変に陽介達はすかさず駆け寄った。

 

「な、なんだっ? 見つかったかっ?」

「多分、当たりクマ! でも……これは……?」

「……クマさん? どうかしたの?」

 

 どこか様子の変わったクマに雪子が尋ねる。

 しかしクマはブルブルと頭を強く振って、

 

「……うんにゃ。なんでもないクマ。とにかく出発シンコーっ、クマ!」

「あっ、こらクマ吉! 勝手に行くなっての!」

 

 猛スピードで駆け出す青い後ろ姿を、陽介達は慌てて追いかけた。

 

 

「……うわ、ホントにあったよ」

 

 呟く声は明らかにドン引きの声音だった。

 空を見上げた千枝は、首が痛くなる程に高くそびえ立った建物を前に、ゲンナリと顔を渋らせている。

 

「ああ。にしても……マジでデカいな。高さだけでジュネス何個分あんだよ、コレ」

 

 千枝の横で陽介もボヤく。一月程前にも似たような光景を目にしていたが、今見上げるソレも記憶の中の巨塔と遜色無いほどに大きく、高い建築物だった。

 

「まあ、デカかろうか小さかろうが薄気味悪りぃ形してるのに変わりないッスけどね。そんで、こっからどうするんスか?」

「え?」

 

 きょとんと疑問符を浮かべる雪子に完二は続ける。

 

「いや、だからこれからオレ達がやる事ッスよ。今までは落とされた人間を助けるのがゴールだったけど、今回は別に誰が捕まってるってわけでもねえんでしょ?」

「あ、そういうことか」

「そういえばそうだったね。いつものノリで来ちゃってたから、すっかり忘れてた」

 

 あれから月日が経過したとはいえ、繰り返したルーティンは身体と頭に染みついている。

 明確な目的が無いことに気付いて首を傾げる千枝だったが、その疑問を陽介の神妙な声が打ち砕いた。

 

「……いや、待てよ。もしかしたら今回も捕まってる奴が居るかもしれねえ」

「はあ? どういうことッスか?」

「ああ、そういやお前には話してなかったよな。俺が一昨日のマヨナカテレビで人影っぽいのを見たってこと」

「一昨日……あっ、確かにそんな話もしてたっけ」

 

 薄ボヤけた映像。幽霊のようなぬぼーっとした染み。陽介が人影のようなものを見たと言ったのは確かに一昨日だったと雪子は記憶していた。

 

「つまりだ。もしかしてもしかすると、その人影の御仁が閉じ込められてるかもしれないんだよ。この妖怪タワーん中にな」

「うーん。でもさ、それって画面がボヤけてたせいでちゃんと確認出来なかったんでしょ?」

「いや、まあ、そうなんだけどさ……」

「……居る、クマよ」

 

 今まで黙っていたクマがポツリと呟く。

 塔に縫い付けられた視線はそのままに、

 

「確かに、この中には誰かが居るクマ。誰か分からないけど、そもそも何なのか分からないけど、確かに居るクマよ」

「間違いないのか?」

「間違いないクマ」

「そうか。ならまあ……決まりだな」

 

 塔を見つけてからのクマの様子がおかしい事に、陽介は当然気付いている。それでも何も言わないのは、陽介自身も塔に対して少なからずの【何か】を感じていたからだ。

 一月前には感じずに、今回は感じるもの。見た目は酷似していても、明らかに違う感覚。

 この建物はーー何かがヤバい。目には見えない異質な切先がずっと肌を撫でてるような感覚に、怖気に、陽介は負けじと拳を握りしめ、声を高々に発した。

 

「うっし! 皆、覚悟はいいな!」

「うん。大丈夫だよ」

「ひっさびさに張り切っちゃうんだからね!」

「そうと決まりゃあーー」

「前進あるのみクマーッ!」

 

 

 

 

 校門を通り過ぎ、大きな扉を潜り抜けた先には広大な空間が広がっていた。

 エントランス、なのだろうか。

 調度品の類を何も置いていない広間の中心で巨大な存在感を放つ階段と、入り口のようなもの。見るからに圧倒される荘厳な光景だったが、しかし陽介達はその景色に対して一種の既視感のようなものを覚えていた。

 押し黙る面々の中で、呆けたように目を丸くしていた千枝が、不意に陽介の袖をつまんだ。

 

「ねえ、花村……あの階段と入り口、見た事ない?」

「ああ、見覚えがある。足立と……確かミナヅキとかってヤツの会話を聞いた場所が、ここと似たような部屋だった気がする」

 

 陽介は記憶を辿る。わずかな差異はあれど、まず間違いはないと思う。これだけ特徴的な広間を忘れるなんて、あと何十年と経っても無理だろう。

 しかし、だとするとーー

 

「やっぱり、此処はGWの時と同じ建物なのか? いや、でもあの時はかなり登った先がこの広間だった。じゃあ構造的には全く別物……?」

 

 考えれば考えるほど頭が痛くなる。と、その思考作業を遮る大きな声が、花村の意識を浮上させた。

 

「おーい! 花村ー! ちょっとこっち来てよー!」

「あん?」

 

 見れば、階段を登った先に千枝が居た。入り口めいた場所で手招きをしている千枝に、仕方ない、陽介は言われるがまま階段を駆け上がった。

 

「っと、なんだよ里中。というか安全かどうかも分からないのに単独で動き回るなっての」

「周りにシャドウは居ないし気配も全然しないんだから別に大丈夫でしょ。それよりもさ、コレ見てよ」

 

 千枝が指差した先は入り口のようなもの。何故か緑の膜が張られたソレを前に、千枝は右手を服の中に引っ込ませて、だらりと垂れた袖で触れてみる。

 通過。

 再び戻した袖には何の変異も無かった。

 

「ほら、ちゃんと通れるみたい。見たところ他に入り口も無いみたいだしさ。此処を通り抜けるのが正規ルートだと思うんだよね」

「……マジかよ」

 

 あからさまに怪しすぎて思わず陽介は身を引いた。

 どう見ても、SF映画とかによく出てくる侵入者対策用のバリアにしかみえない。もしくは侵入者が通過すると同時にけたたましい警報を鳴らすセキュリティゲートにしかみえない。

 どちらにせよ、通過する事に多大な緊張を強いられるのは間違いなさそうだ。

 

「というわけで、花村ちょっと入ってみてよ」

「は!? なんで俺が!?」

「え、だって誰かが通らないと本当に安全か分かんないじゃん」

「お試し感覚で他人に危ない橋渡らせるつもりなのかお前!?」

「大丈夫大丈夫。さっき試しに顔だけ入ってみたけど何も異常なかったし。だから、ほらほら。よいではないかよいではないか」

「ちょ、おま、やめ、押すなーーのわああッ!?」

 

 陽介の身体は膜の中に吸い込まれ、続いて、びたーん!と何かが転ける音がした。

 その行く末を見守ったのち、千枝は振り返って仲間達に声をかける。

 

「おーい、みんなー。どうやらこっちから入れるみたいだよー」

「ホント? わかった、今そっち行くねー」

 

 軽やかな足取りで雪子は階段を登っていく。その一部始終を遠くから見守っていた完二は、真剣な面差しで小声を漏らした。

 

「……ここにいる間は、あの人らの後ろを歩いてた方がよさそうだな」

「……クマ」

 

 

 

 

「痛っ、つつつ……」

 

 所変わって陽介視点。人身御供として緑の膜に押し込まれた直後である。

 実験台にされて、たたらを踏んで転けて、もう踏んだり蹴ったりな気持ちでブツクサと文句をぼやきながら陽介は立ち上がる。

 

「くっそ、里中のやつ……!! ありえねえだろ普通あそこで押すか? 押さねえだろ、俺だったら絶対押さねえよ、たくっ」

「ーーすごい。ほんとに中に入れちゃった」

「おっ、やっほー、花村。ちゃんと生きてるー?」

 

 陽気な声が更に怒りを募らせる。

 陽介は振り返り様にビシッと指を突き付けて怒号をあげた。

 

「て、めえっ里中! よくも人を実験台にしてくれたな!」

「あはは。ごめん、つい。まあ本当に大丈夫だったんだから結果オーライじゃん?」

「全然オーライじゃねえよ!? 確実に寿命縮まったっつーの!」

 

 時間にしたら三年くらいは縮んだ気がする。もちろん当社比である。

 と、千枝と雪子に続いて完二とクマもやってきた。

 

「あ? なんだよココ。やけに暗ぇな」

「うむむむ。おめめがシパシパするクマ。ユキちゃんユキちゃん。ちょっとペルソナ使って明るくしてくれないクマ?」

「あ、うん。わかった」

 

 脊髄反射のような返答に次いで、雪子は取り出した扇子を前に構えた。

 ーー何だか嫌な予感がする。

 悪寒を感じた陽介は慌てて雪子を呼び止めようとするがーー時すでに遅し。

 

「コノハナサクヤ!」

 

 続く号令が光の煌めきを生み出した。

 

『マハラギダイン!』

 

「う、をおおおおおおッ!?」

 

 爆音と閃光と炎熱。

 陽介達の目と鼻の先で生まれた火炎が全てを焼き尽くす。後には焦げ臭い匂いが床と空気に染み付いていた。

 以下、目撃者の言である。

 

「マジやべえ……」

 

 愕然とする完二。

 

「ゆ、ゆきこ……」

 

 呆然とする千枝。

 

「……よし」

 

 雪子は力強くガッツポーズをしてみせた。そして、

 

「よしーーじゃねえええええ!!」

 

 陽介がとんでもない形相で吠え散らかしていた。

 

「なにしてんの!? なんで灯りつけるだけの為に特大の業火生み出しちゃってんの!? 危うく俺らまで丸焼けになるところだっただろうが!!」

「うん、ごめん。なんか久々だったから、ちょっと張り切っちゃった」

「張り切りすぎだよ!! つか、クマ!! 元はといえばお前の軽はずみな言動が原因だってのに、お前はなにを知らん顔してんだよ!!」

 

 怒りの矛先は青色の背中に向く。しかしクマからの返事はなかった。それどころか、クマは無言のままに暗闇の先へ歩き始める。

 

「お、おい、クマ! どこ行く気だ!」

「おいこらクマ公!」

 

 言葉は届かない。再び青い後ろ姿を追う面々をよそに、クマはポツリポツリと言葉を吐き出し続ける。

 

「聞こえる……クマ」

 

「しずかで、つめたくて、ずっとずっと、声だけが聞こえてて」

 

「……ううん、ちがうクマ。これは……呼んでいるクマか? ずっと、クマを呼んでいたクマか?」

 

「……キミは……誰……クマ……?」

 

 クマは歩みを止めない。陽介達はなおも後に続くが、奇妙な事にどれだけ走ってもクマに追い付く事が出来ない。まるで暗闇そのものが陽介達を邪魔しているような感覚。

 

「……ッ、あいつッ、どこまで行く気だよ!?」

 

 陽介はたまらず悪態を吐いた。ここで見逃せば一生会えなくなるような予感に苛まれながら走り続ける。

 それからどれほどの時間が経っただろう。

 息を荒げながらも後に続いていた陽介達の前で、今まで歩き通していたクマが突然止まった。と、同時にずっと埋まらなかった距離が一瞬で縮まる。

 クマは一枚の扉の前で小さく息を吐いた。

 

「……コレが……クマを呼んでいた……」

「ーーッ、クマ!!」

 

 陽介の手がクマの頭を鷲掴む。呼気が荒いままに陽介はギロリとクマを睨みつけた。

 

「ぜぇ、はっ……やっと追いついたぞ、この野郎。人の声無視してズンズカ進みやがって」

「ホント……ふぅ、急にどうしちゃったってのさクマくん」

「……クマ、さん?」

 

 クマはやはり何も言わない。その手が、暗闇に浮かび上がった扉のドアノブを掴んだ。

 開いた先から光が漏れ出る。その光に、空間に、目を向けた誰しもが、ソレを見て言葉を失った。

 

「……なん……だよ……これ?」

 

 先ほどのエントランスにも引けを取らない広々とした空間。しかし、その中心には階段も入り口も無かった。代わりにあったものはただ一つ。ただ一枚の巨大な扉と、その扉に縫い付けられるようにして磔にされたヒトの形をした像が、陽介達を無機質に見下ろしていた。

 

「っ……!?」

「ウソ……これ、もしかして……ヒト……!?」

 

 雪子は息を呑み、千枝は震えた声で誰にともなく尋ねる。ただの造り物ならばそれでいい。だが、その像には生きる人間を思わせる生々しさと儚さがあった。脈動さえも感じさせるような錯覚を覚える程に、それは生命力に満ちたヒトの像。

 少しの間、呆然としていた完二は思い出したようにハッと目を見開いて、陽介に視線を向けた。

 

「先輩。まさかッスけど、先輩が見た人影って……」

 

 陽介は強く瞼を閉じて、それからゆっくりと開いてみせた。

 

「……ああ。多分だけど、コイツだと思う。でも俺が見た時はこんな姿じゃなかった。こんな、石像みたいな姿じゃなかった。ちゃんとした人間で、肌も灰色じゃなくて……間違っても、こんな姿じゃあなかったッ……!!」

「そんな……」

「……あたしたち、助けてあげられなかったの……?」

 

 こぼれた千枝の言葉に陽介は強く歯噛みして、立ち尽くすクマを見た。

 

「っ、おいクマ、どういうことだよ! お前、さっき言ってたよな! まだ中にヒトが居るって! 気配を感じるって! そう言ってたよな! だったら何でーー」

「先輩ッ!!」

 

 完二の声が陽介の言葉を掻き消した。

 陽介はハッと口をつぐんで、力無い吐息を漏らす。

 

「あ……その、わりい。ついカッとなっちまって……」

「ーーちがう、クマ」

「え?」

 

 クマはジッとソレを見上げている。

 

「そうじゃないクマ。これは……シャドウの仕業なんかじゃないクマ。ちがうクマ。これはーー」

 

 熱に浮いたような声が続く言葉を模索する。その流れを、しかし頭上から突然降ってきた【何か】がギロチンのように躊躇なく寸断した。

 

「ーージットリとしたアオカビ好みな雰囲気の中、空気を詠まずに失礼いたします」

「え?」

「……は?」

 

 像と陽介達の間に割り込むようにして現れた青色。全身を青の服飾に費やしたその女性は無機質な美しさを振りまいて、お辞儀をする。

 

「どうも。こんにちわ。ハロー。グーテルモーゲン。私です」

「え? あの? ……え?」

「ちょ、だ、誰よアンタ!?」

 

 警戒するように身構えた千枝を、混乱する雪子を、陽介を、完二を、クマを、順々に見て、その女性はポンっと手を叩いた。

 

「あら、申し訳ありませんでした。そういえば初対面の方々ばかりだったような、そうでないような。これはこれはうっちゃりでございます」

「……うっちゃり?」

 

 雪子が問い返す。

 

「……つっぱり?」

 

 やはり、よく分からない言葉を繰り返している。

 

「……なんだァこいつ?」

「まあ兎にも角にも改めまして。私、エレベーターガールのエリザベスと申します。ーーどうぞ、お見知りおきを」

 

 女性ーーエリザベスは突然の登場に突然の自己紹介を終え、ニコリと笑ってみせた。

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