お父様をお母様にしたい!!   作:ハナホジン

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伝説任務、最初はマディ!?とか思ってたけどやっぱりママァ〜♡ってなりました。

ママ大好き♡



投稿がエグ遅すぎで笑っちゃうね。




母も父も昔は君と同じさ

王になれ、その言葉を聞くたびに体に虫唾が走る。

俺ことブリゲッラ…、いや、昔はアテルラナという名だった。

俺は少々特殊な出処でな、記憶を遡ると俺に親がいたという情報は無かった。

しかし、俺がいるということはちゃんと父や母がいたということだろう。

 

俺はバケットの中にいた。

 

寒くて凍え死んでしまいそうな極寒の寒空の下。

赤子ならば泣き叫んでいただろうに、俺は何も言わずに星空を眺めていた。

唇が青くなっていき俺は気付いた、生まれて1ヶ月も経っていないだろう俺は死ぬのだと。

俺は直感的にそう感じた。

 

その時だった、まだ成熟されていない眼の前に青い光が走った。

俺は思った、神は力を与える相手を考えていないと。

 

 

 

 

結果から言うと俺は生きた、生まれたばかりの俺に授かった神の目を使って寒さを耐え忍ぶことができた。

だが力を与えたとしても俺は赤子、死ぬしかないが俺の力はここでも可笑しかった。

 

いきなり水の塊が集まり、人の形になるや否や、俺を持ち上げてどこかへと攫っていく。

そして、どっかの知らない民家へと入ると恐らくそこには居住者がいたのだろう。

怒号が聞こえると水のやつは俺を地面へと優しく置いて、その家主に襲いかかった。

首に手を掛け、締め付ける。

そしてそのまま…。

 

水は始末すると暖炉の傍へ俺を移動させてから、調理場らしき場所へ向かった。

そして戻って来ると俺を再び持ち上げて口元に温かい液状のなにかを垂らしてきた。

俺は一心不乱にそれに食らいついて吸った。

温かいものが喉に入り、俺は初めての安心感得ることができ、目を閉じ寝ることにした。

 

水が殺したのは人だった、それもただの人じゃない。

妊婦だった。

 

腹が大きく膨れており、股からは破水と思わしき液体が垂れ、目は虚ろで俺を見つめていた。

そして、今度はその夫と思わしき人物が現れると俺を殺そうと襲いかかってきた。

だが、水がそれを止め逆にあの二人と同じ末路を追わせた。

 

俺は殺してなんかない、やったのはこいつだ、力だ、授けた神だ。

 

俺は今でもその罪悪感が体を這っている感覚に陥る。

 

 

 

 

そして、数年が経って俺は引き取られた。

あの忌々しい孤児院に。

 

俺は一人で成長していった。

水の力を使って人を襲い金品食料品を奪う。

そして飲んで食らって、体は着々と大きくなっていった。

 

その時、俺の眼の前には人の形をした化け物が現れた。

見た目は他のやつと同じ成人男性だが、俺の中の生存欲が駆り立てられている。

俺は力を使い抗ったが、やはり案の定歯が立たず、死ぬと思ったが彼は俺を気絶だけさせてどこかへと連れて行かされた。

 

この彼が今もなお現役の道化様だ、俺は彼に助けられたんだ。

 

俺のこの力は他では類を見ないほどのものだったらしく、俺はファデュイに属することを契約に生かされてもらった。

属する前にこの孤児院で更なる力をつけろと放り出されたのがこの始末。

 

でもまぁ、俺は彼に感謝している。 彼に会えなかったら俺は彼女に会えることがなかったからね。

 

俺は最初、このスネージナヤの孤児院に入獄されるがいきなり来た新参者に嫌気を指したのか早速、俺をイジメようとケチつける者共が現れた。

だが、この家のルールとして[決闘の場でなくとも、殺しを許可する]というものがあったため、俺は襲いかかってきた愚か者共を殺した。

俺のトリガーは既に壊れていた。

 

俺よりも遥かに上の年齢のやつも殺して、孤児院の管理人のお母様も半殺しにした。

その結果だろうか、お母様を俺を恐れて総管理人のいるフォンテーヌのブーフ・ド・エテに移された。

 

そこは前にいた場所と違って比較的暮らしやすく、風が心地良い場所だ。

この家でのハウスルールは[殺しは決闘のみ]となっていたため、俺は常に警戒をする必要はなかったため気楽だった。

 

ある日、木の上で寝ているとゾワッとした気配を感じ飛び起きた。

殺気ではないが、普通のものではないと感じた俺はその感じる方へと目線を向けた。

多分、それが俺の人生の一番の転換地点と言っても差し支えないだろう。

 

俺は恋をした。

 

白い髪に髪先が黒く、目に異質なバツ印を刻まれたその瞳に俺は一目惚れだった。

俺がしばらく眺めながら惚けていると彼女は俺に気づき、彼女の方から俺に視線を向ける。

俺は我に返り、早速話しかけてみた。

 

「始めまして、俺はアテルラナ」「ご機嫌よう、麗しゅうご令嬢」「品格が溢れ出る姫よ」

なんて言おうかと頭の中で言葉が溢れ出る。

そしていつの間にか俺の口は意識しないうちに動いていた。

 

「結婚してくれませんか?」

なにを言っているんだ俺は。

今すぐこの場で首を掻っ切って死のうかと頭によぎり、水の刃を作り出して自身の首に突き刺そうとしたら。

 

「わかった」

「へ?」

ひょんな声が出た、いや違う、それ以前になんて言った?わかった? え?初対面だぞ?本当にいいのか?

なんて頭の中でグルグルと回る。

 

「けっこんってなんだ」

俺はズッコケた。

 

 

 

 

彼女はペルヴェーレ、俺の一つ下だが単純な戦闘力では彼女に軍配が上がるほど天賦の持ち主。

この家では俺らは殺し合いをする、それはこの家のお母様クルセビナの教育方針だ。

こいつは俺らを戦士にするのではなく、一人を勝ち上がらせて王にするために動いている。

他の奴らはこのイカれたやり方を崇拝しているが俺とペルヴェーレだけはまともでいることができた。

 

そして皮肉にもクルセビナは俺とペルヴェーレに一目置いている。

この家史上の最高作品が2つも出来上がってきているのだ、更に片方がもう片方を喰らえばどうなるかなどと恍惚になっている。

 

吐き気がする、人間のクズめ、なにがお母様だ、子供をただの道具としてしか見ていないゴミめ、絶対にここを出てやる、ここを出てヴェーレと一緒に暮らすんだ。

俺はヴェーレとともに約束した。

 

数カ月後、クリーヴという新しい子が入ってきた。

彼女は優しく、決して人を殺さないという信念を持った強い人だった。

ヴェーレとクリーヴはすぐに仲良くなった。

人付き合いが苦手なヴェーレに迫るようにくるクリーヴは俺と同じっぽく感じた。

そして繋がり的に俺もクリーヴと仲良くなり、俺達は大抵いつも一緒にいた。

 

食事のときも、訓練の時も、勉強の時も、流石に寝る時とか入浴の時とかは一緒に入れれなかった。

というよりもクリーヴが「エッチ!!」と言って俺を引っ叩くから俺は泣き寝入りするしかなかった。

ヴェーレに言われたら多分俺は死ぬと思う。

 

クリーヴは良く脱走しようとする。

そしてその度に捕まってクルセビナに再教育される。

それでも彼女は諦めなかった、そのきれいな瞳を手放すことはなかった。

 

言っちゃ悪いけど俺とヴェーレは強い、というよりもこの家の中だったら二人仲良く最強だ。

そんな俺らだから協力して逃げようとするとクルセビナは必ず俺らを見つけて負かす。

当たり前だろう、まだ子供の俺らが執行官相手に手玉にとることは難しいだろう。

そんなだから、倒すも逃げるもできない。

なのにクリーヴは何度でも続けた、そのたびにできる彼女の傷は痛々しいものだった。

 

決闘でもそうだ、彼女は優しいため相手を殺さないといけないというのに、お互いに致命傷を食らって引き分けにするんだ。

彼女は人を殺せない、俺とヴェーレはそんな彼女の瞳を真っ直ぐと見れなかった。

すでに殺し、汚れた俺らにとって眩しすぎた。

 

 

 

 

 

 

 

「私達、やっぱり戦うんだね」

俺らが会って数年が経ち、身長も大きくなり愛しのヴェーレも更にその美貌が洗練された。

クリーヴは俺らに対して話しかけてくる。

ここまでクリーヴは不殺を徹底し、俺らは逆に殺しを繰り返していた。

クリーヴは俺らが殺していたとしても責めるわけではなく、しょうがないよねと慰めようとする。

彼女はお母様よりもお母様をしているような気がした。

 

「そうだな、お母様も王を作ろうと余計に躍起になっている」

ヴェーレはいつも使っている剣を磨きながら答える。

 

「その結果がこれか」

俺はあのババアから配られた紙を再度取り出して見つめた。

そこには明日の夜、俺とヴェーレが決闘するという告知がされていた。

 

すでにこの家の子供たちは俺らしかいない。

お互いが引き分けに持っていったとして、また決闘が成されるだろう。

ここで決着をつけなければならない。

 

「三人であのババアに挑むか? そうすれば…」

「いや、お母様の強さは私達三人の力を合わせたとしても勝てるか怪しい。 それならば、まだ一人が生き残った方が最善だろう」

悔しいがあのババアの強さは計り知れない、三人仲良く海の藻屑になるよりも二人が王の足場になる方がまだマシだろう。

俺は自身の力のなさを痛感した。

 

「私は…、お母様を殺したくない」

クリーヴがそう訴える。

彼女とババアは血の繋がった本当の家族だ、それだというのに戦場に駆り出すあのババアの精神が理解できない。

クリーヴはこんな目に合おうともまだ家族への愛というものが枷となっている、自由に飛べないように翼をもいだ鳥のように。

 

俺らは本当の家族なんて知らない、ましてやその愛情というものですら知らない。

ふと、俺は彼女が羨ましく見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

明日の夜、結局俺らは殺し合うことになった。

クリーヴは弱い、力も精神も王には適さないため、ここで勝った方が王になるだろう。

満月の下、見渡す限り広がる花畑の上、俺らは剣を抜き見つめ合っていた。

 

「ヴェーレ、俺らが会ってもう10年だ、あの時の約束をまだ覚えているか?」

「…いや、忘れたよ」

嘘つけ、記憶力がいいヴェーレなら覚えているはずだ、否、覚えている。

 

「君が私を殺し、君が王になれ、私はもう十分だ」

そう言う彼女に風が頬を撫でる。

 

「悪いけど、俺は王には成りたくない。 俺は…父に成りたい」

俺は星空を眺めながら続けた。

 

「庇護し、依存させ、鳥籠に囲わせる母よりも、冷たく、されど愛情溢れる、そんな父が良い」

俺が仮にお母様になったら、子供たちにお父様と呼ばせて恐怖させる。

そして、離れた時に気づく、貰っていた愛情。

俺が捨てられていた時、あのバケットには毛布が詰められていた。

すぐに死なないようにと入れてくれたんだろう。

捨てた恨みは忘れはしないが、それでも捨てる寸前まで俺を思っていたに違いない。

だから俺は父になりたい。

 

「そうか、君は良い父親になる」

「俺はヴェーレも良い父親になれると思うよ」

そしてお互いに剣を抜き、構える。

 

今この美しい場所が荒れ地になることを構わず。

 

 

 

最初は俺から動いた、地を蹴って花びらが舞う。

ヴェーレに近づき、剣を横に薙ぎる。

勿論、しゃがんで躱され俺に剣を突き刺そうとするが俺は早速水元素の力を使い、もう一つの剣を作りその剣の腹で受け止めた。

剣の向きを変え、切り上げようとするヴェーレの横に移動し再び俺の剣が振るわれる。

 

服に掠り、若干血が服に染みているヴェーレはそれに怯むことなく、俺の眼前にて再び剣を振る。

俺はもう片手で水の剣を掴み、二刀流でそれに応える。

受け止め、火花が散り、振り下ろすと流される、そして躱され俺にくる剣を俺も受け止めたり身を動かす。

 

それはまるで遊戯、踊り、他者から見ると優雅であろう。

すると、ヴェーレは剣を持っていない方の手の平を俺に向けてきた、そしてそこから血のような炎が吹き出された。

俺はギリギリのところで水の盾を作り、ある程度軽減させたがそれでも肌が焦げるほどの火力だった。

 

ヴェーレは炎元素を持っていない、彼女の特有の力だ、俺が一度聞いてみたがあまり理解できなかった。

なんかそういう力を持った人種らしい、記憶を焼くなど概念すらも焼き殺すことができる彼女に尊敬を念を贈ったが、ヴェーレからしたらその力による良い思い出はないようだ。

 

俺も怯むこと無く、再びヴェーレに向けて剣を放った。

水でできた剣を複数作り、彼女に自動追尾させる。

叩き落されるがそれでも彼女の隙を作ることはできる。

 

「ヴェーレ、君がお父様になるための試練として俺は君に立ち塞がる」

「そうか、ありがとうアテルラナ」

彼女は飛び回る水剣の間に糸を通すように突っ切ってきた。

火花が散り、俺の眼の前にヴェーレのバツ印の瞳が俺を覗く。

俺は距離を作るために押し出し、水剣を発射する。

彼女の炎により、水は破裂して熱湯となったものが俺の服に染み付く。

 

俺は水の人形を作り出して、彼女に襲いかからせた。

彼女はそれを見て、剣を下から上にゆっくりと上げると人形の下から炎が竜巻のように吹き上がる。

俺は諦めずに再度人形を作り出して、今度は一緒に攻めた。

近くに行けば行くほど身を焦がす感覚に陥るが俺は彼女の傍まで近づいた。

 

剣同士がぶつかり、俺の皮膚が薄く裂かれ、彼女にも同じくらいの怪我を負わせた。

俺はいきなり下へとしゃがんで、足払いを掛けると彼女は素直にもあっさりと地面に臀部がついた。

 

そして両手の剣が彼女を殺そうと躍起になり、剣先が彼女の向かって突き進むと彼女は倒れたまま俺の腹に蹴りを喰らわせた。

いきなり来た意識外からの衝撃により、俺はよろめいた。

それが仇となり、彼女は一気に起き上がって、俺の真後ろに移動する。

 

「すまない」

後ろで謝罪の声を聞くと俺の左肩から右の腹部に繋がった傷ができており、俺の体から血が吹き出た。

 

「まだだ…」

俺は倒れそうになる体を支え地面を踏みしめ、彼女の方へ振り返ると彼女の瞳からは涙が流れていた。

その一瞬の動揺を突かれ、俺の体中に無数の切り傷が作られ、血をダラダラと垂らしながら俺はバランスを崩し、横に倒れ込んだ。

 

辺りを囲っていた炎が消え、血がどんどんと湧き出てくる。

痛みがなぜか心地良い、全力を尽くしたからだろうか。

そう思っているとヴェーレが俺の傍に近づいて、俺を上向きに体勢を変えさせる。

その時のヴェーレの顔はいつもの真顔ながらも涙を溢しており、ふと美しいと思った。

 

「…ヴェーレ、ありがとう」

口から血を吐き出しながら、俺はヴェーレにそう伝える。

全力を出して俺を殺してくれたお礼と、こうやって介抱してくれるお礼を一緒にして。

 

「…開放させてやろうか?」

「いや、このままでいい」

ヴェーレの善意に心の中で感謝しながら、俺はヴェーレに膝枕をしてもらって、夜空を眺める。

こんな贅沢した状態で死ぬなんて幸せだなと思いながら、俺はゆっくりと目を閉じて心臓の動きを止めた。

 

 

 

 

 

最初は死んだと思った、てか多分死んだ。

でもなぜか俺はまた目覚めた。

起き上がってみるとそこはヴェーレと戦った花畑だった所で今ではただの荒れ地となっている。

なんでまだ生きているんだと思いながら、俺は立ち上がると体中から激痛が疾走り、また地面に倒れ込んだ。

 

血が出た怪我は何故か塞がっているが痛みが引いている訳ではない。

俺は暫く悶絶した後に痛みを我慢して再度起き上がる。

そして足を引きずりながら俺は二人の決闘の場へと向かった。

 

 

 

 

その場へ着くと、その決闘場所は案の定原型を保っておらず、無惨な姿を晒している。

するとわかっていたがやはりそこにはクリーヴが目を閉じて壁に背を預けながら地面を向いている。

俺はクリーヴの傍まで近寄り俺みたいにまだ生きているかもしれないため、念の為首に指を置いたがもう鼓動は打たれてはいなかった。

クリーヴをこのままにさせる訳にはいかなかったため、クリーヴが王子様にされたいと言っていたお姫様抱っこで静かな場所へ運ぶ。

生きていたら、凄い暴れていたんだろうなと思いながら俺は脚に力を入れて歩を進めた。

 

目的の俺らの家へ着き、俺は歩を止めた。

中は暗く、人っ子どころか虫すらもいないこの閑散とした場所。

俺はクリーヴをいつも三人で遊んでいた木の下へと運んだ。

冷たい風が吹き、クリーヴの赤い髪が揺れる。

クリーヴを木に背中を預けるように座らせると、俺は俺の元素で水のシャベルを出現させて地面に思いっきり突き刺す。

そして刺さったシャベルをテコの原理で下に押すと、土が盛り上がる。

その土を後ろへ投げ捨てて、また地面に刺す、を何回も繰り返すとそこには人が寝れるくらいの深さと大きさの穴が出来上がっていた。

俺はシャベルを投げ捨て、クリーヴを優しく持ち上げる。

空いた穴に寝かせ、俺はクリーヴの手を組み合わせて胸の前に置き、近くにあった花を手を隙間に差し込んだ。

その姿は神に祈る幼気な少女にしか見えない。

なんとも皮肉だ、自由になりたいと何度も願った彼女をついには見放し、残酷な目に会ったというのにそれでも自身を救ってくれなかった神に親愛を注ぐ。

 

俺はクリーヴの安らかに眠る顔を暫く眺めて立ち上がる。

そして、手で土をクリーヴに掛ける。

ゆっくりとゆっくりと、神から授けられた力を使えばすぐに終わると言うのに俺はそれを使わずに自身の力だけで埋葬した。

完全に土に埋まり、少し土が盛り上がっている。

俺はまた花を引きちぎり、その土の上に優しく置く。

手を組んで祈る風な弔い方はしない、俺はじっと揺れる葉を眺める。

すると見ていた葉が開放されるように風に乗ってどこかへと飛んでいく。

大木という母から抜け出し、大海原へと駆け出すその姿はもういない彼女を思い出さられる。

 

「来世で会おう、クリーヴ。 君の自由を願って」

俺はそんな言葉を吐き、立ち上がって踵を返す。

ヴェーレを一人にはさせない、彼女の荒れた心を癒せるのは俺だけだ。

そう思い、俺は俺の生まれ故郷へ向かって歩んだ。

 

スネージナヤの夜空には虹色のオーロラが出るんだって

 

彼女の言葉が頭の中で響く。

 

「オーロラか…俺には似合わないな」

俺はオーロラの出ない夜空を眺めてそんなことを吐き捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「女皇陛下のお言葉を伝える、[その罪を赦し、新たな名を与えよう]」

 

整えられた石造の壁や地面、天井に淡く青い光が反射させられる。

四人の人物らしき者達に一人があちら側へと歩いていく。

 

「染血の称号を受け継ぎなさい、哀れで狂気に満ちた呪われた召使よ」

半仮面の男が言うと歩いていった彼女、召使が一歩踏み出そうとした瞬間、光が途切れ巨大な暗い影が地面に現れる。

その時、光を差し込んでいたガラスが割れ、黒い塊が突入する。

召使の前にそれが着地する、目を凝らしてみるとそれは黄ばんだ布を纏っている薄紅の髪の男が召使に背を向けている。

しかし、彼女はその背中だけですぐにこの言葉が浮き出てきた。

 

「アテルラナ…?」

彼女は瞳孔を開かせて、彼に声を掛けた。

 

「そうだよ、ヴェーレ 君を救いに来た」

その時、地面にビリビリと紫の雷鳴が響き、上から雷が落ちてくる。

彼は召使を抱いて、出入り口と思わしき扉へと走る。

だが、眼の前に氷の塊が急に現れたが、アテルラナは水を纏わせた拳でその塊に腕を突き刺した。

 

だが、それはヒビが入っただけであり力に頼った破壊だけでは無理だった。

 

「ヴェーレ!! 君の力でこれを溶かしてくれ!!」

「アテルラナ、わ、私は…」

アテルラナは召使の名を呼ぶが彼女は何かを言いたそうにしているが決心がつかない顔をしている。

 

「ヴェー…!!!」

再度名前を言う前に横から鋭い速さで何かがアテルラナだけを壁に突き飛ばした。

召使は地面に尻餅をついている。

 

「あ、ぐぐぁぁ…」

アテルラナの目の前には甲冑を着込んだ大柄な者が太い腕で彼の首を抑え込んでいる。

彼も腕を引っ張ったり足を使って暴れるが不動の如しであった。

そしてドンドン力が入り込み、脳まで行く血流が止まりそうになるその時、彼の背中から赤黒のトゲが生えだし大柄の者は後ろに後退せざる負えなかった。

 

「うがぁ!! ゴホッ!ゴホッ!」

開放されたアテルラナは地面に手をつけて咳き込む、アテルラナに近づいて背中を擦る召使、バツ印の赤い目からは怒りの感情が読み取れる。

 

「アテルラナ、そうか、お前はあの時の小僧か」

半仮面の男、道化は目を細めながらアテルラナを見つめる。

 

「アンタは…、へっ、恩を仇で返すような形になって悪いなぁ」

アテルラナは血を吐き出して、水元素で作り出した剣を構える。

二人の間には一触即発の雰囲気が漂う。

 

だがその空気は一瞬にして変わった。

召使がアテルラナの後頭部をいきなり掴んで、地面に叩きつけたのだ。

遠慮がない音が響き、アテルラナは地面に片頬をつく形で、召使は腕でアテルラナの頭を抑えながら、跪いている。

 

「ヴェーレ!? なにを…」

「申し訳ございません、道化様。 この不届き者の処罰は赦してはくれないでしょうか」

アテルラナの言葉に被せるように言う召使は道化に助けを乞うことにした。

彼女とアテルラナ、二人が抗ったとて、執行官4人。

勝率は限りなく低い。

 

ならば、例え自身の腕を、足を、目を相手に献上することになったとしても、彼女は彼と共に生きるために服従の選んだのだ。

その意図を汲み取ったアテルラナは何も言えなかった。

形はどうであれ、助けようとしてくれているヴェーレを無下にする訳にはいかなかったから。

 

「…まぁ良い。 貴様らの罪をまた赦そう」

「ちょっと!? 流石に甘すぎない? こんな不敬共は氷漬けに…」

「口を慎め淑女、我に指図するか?」

「…チッ」

道化の提案に物申すが、道化はそれを圧倒的な威圧で無かったことにさせる。

 

「だが、アテルラナ。 貴様の罪は贖罪でしか償えん。 貴様をファデュイの最下層へと堕とす、次の半月が来るまでにこの席へ昇れば、貴様の罪は赦そう。 だが、成せなければ貴様を処する」

道化は召使を赦したがアテルラナには厳しい罰を与えた。

こなせられなければ死有るのみ。

だが、彼は不敵に笑った。

 

「それは、執行官に成ればいいってことだな」

アテルラナは道化の瞳を見つめる。

 

「俺は絶対に死なねぇ、ヴェーレの隣に立てるまで、俺は泥でも啜ってでも生きてやる!!」

そう豪語した。 

自身を地獄から逃げ出さないように、声高らかに宣言した。

 

「ヴェーレ待っててくれ」

今度は召使の瞳を見つめる。

 

「俺は君の、伴侶になるまで」

恥ずかしげもなく、堂々と伝えるアテルラナ。

 

「あぁ、待っている」

召使もそれに優しい声で答える。

二人の空間はバラが舞う空間へと変わり、綺羅びやかに見え始めた。

 

 

 

「狂っているのか?」

人形はそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、約束の日が来た。

彼は史上最高の成り上がりの逆転劇を成功させてみせた。

ヴェーレを助けるために来たこの建物の中で今度はアテルラナが勲章を与えられる番だ。

 

「到達し、貴様は成し遂げた。 故に貴様に名を与えよう」

「情人、満たされることのない愛を永遠に渇望せよ」

道化はアテルラナに情人という名を与えた。

愛に焦がれる者、それが情人。

アテルラナという名も変え、彼はブリゲッラと名乗り始める。

自身の名を捨てたヴェーレ、否アルレッキーノと共に新たな時を過ごすためにこれまで後悔を断ち切って二人は偽名で、されども真名で生きていく。

 

 

 

 

「なぁ、アノ」

「なんだ」

「俺とだな、その…」

「歯切れが悪いな、安心したまえ、私は君を望むすべてを受け入れよう」

 

「…、ありがとう。 それじゃあアノ、結婚してくれませんか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…が俺とアノの出会いだ、ほれ、もう暗いしさっさと寝なさい」

子どもたちが熱心に聞いていたブリゲッラの話を遮られて、なんでだのもっと聞きたいだの連ねる。

 

「続きはまたいつか話してやるからな、早く寝ないとブギーマンが食べに来るぞぉ」

とブリゲッラが子どもたちに脅すと子どもたちは散り散りになり、自身達の部屋へと就寝しに行った。

走り去る子どもたちを見ながら、少し疲れたように鼻息を大きく吹く。

 

そして後ろのズボンについている穴に手を入れるとそこから小さな楕円形の入れ物が外に出された。

それは上蓋と下蓋の2つがくっついているアクセサリーのようなものだ。

くっついている蓋の間にある僅かな隙間に爪を入れ、上へと押し上げるとパカッと熱された貝のように勢いよく開かれた。

中には三人の子供が横並びで座っている色の無い写真がピッタリと埋め込まれていた。

 

左の少年は人差し指と中指をVの字にしてこちらへと向けており、真ん中の女の子は満円の笑顔でこちらを向いており、右の少女は真顔のままどこかそっぽを向いている。

 

これを見つめたブリゲッラは少し微笑みながら、握りつぶすように蓋を閉じて再度同じところへと仕舞う。

 

「パパァ〜!! フォルツがお人形返してくれない〜」

「違うよ!! 今日は僕が一緒に寝る番だよ!!」

就寝部屋から自身を呼ぶ声が聞こえて、ブリゲッラは声にした方へと向かっていく。

 

「これがお前が望んでいた夢だろ? クリーヴ」

小さく呟いた言魂は泡のように誰にも聞かれずに散っていった。

 

今日の夜は満月だ、月明かりをほのかな灯りにしながら、風も強くないし静かに寝れる、少し気温が寒いからホットミルクを飲んで体の芯から温めて寝よう。

 

朝になったら、また大騒ぎで朝飯を食べて、昼ではみんなが遊んで、夜にはまた眠りにつく。

そんなサイクル、そんな当たり前。

 

ブラ、護っていこう

そうだな、アノ

 

二人は口には出さない、しかし心では親と同じ思考を共鳴して親としての責任を果たす。

この残酷で、されど美しい世界で。




ブリゲッラさんがいることによって、回りくどい言い方をしなくなったアルレッキーノさん。
これで変な勘違いをしないようになればいいなぁ()
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