キヴォトスの『探偵』   作:誰かのヒーロー。

2 / 6
思いつきで書いてます。By作者


猫探し 報告者:鈴ヶ咲シオン

「動くな!」

 

レストランに突入してきた、銀髪の少女がサンに銃口を向けながら言った。

 

「あー、何だ、お前?」

「風紀委員会だ!今すぐ武器を下ろして、手を上にあげろ!」

 

一体なぜこんなことになっているのかと言われれば、少し複雑な事情がある。

 

事の始まりは昨日にまで遡る。

 

 

* * *

 

 

私、鈴ヶ咲シオンは『鈴ヶ咲探偵事務所』で働いている。

所長であるサンが実働係、私はそれ以外のデスクワーク係。

別に上下関係がある訳じゃない。私たちは2人で一人。お互いに支え合うのだ。

そんな鈴ヶ咲探偵事務所に、一件の依頼が舞い込んだ。

 

『猫?』

「そう。家で飼ってた猫が逃げ出しちゃったんだって。」

『ほーん。』

 

猫探し。依頼を伝えたら、サンから気の抜けた声が返ってきた。

いなくなった動物を探す、というのはよくある依頼なので、慣れたものだと言わんばかりである。

 

『つーか、なんで逃げ出したんだよ。探すってことは放置してたわけじゃ無いんだろ?玄関から逃げちまったのか?』

「爆破されたんだって」

『は?何が?猫が?』

「家が」

『はあぁ?』

「なんでも、温泉開発部っていう団体が温泉を作る時に巻き込まれたんだって」

『へぇ、温泉って家を爆破すると作れんのか。今度やってみるか』

「違うよ、サン。家を爆破しても温泉は作れない。どちらかと言うと地面を掘るの」

『…じゃあ、なんで家が爆破されるんだ?』

「さぁ?邪魔だったんじゃない?」

『そりゃあ、なんとも…』

 

通信の中で、サンがたじろぐ。自由奔放なサンでも流石に想像しなかったことらしい。

 

『で、その猫ってのは?』

「見た感じ普通の猫だよ。普通の黒猫。だけど頭に白色で斜めの3本線が入ってる。写真を送るよ」

『おー、分かった。』

 

送信した写真を見て、サンから返事が返事が帰ってきた。

 

『…ん?なんか…変じゃねーか?』

「何が?依頼が?」

『いや、写真が。なんつーか、違和感があるっつーか…』

「そう?別におかしい感じはしないけど…」

 

手前に写った黒猫、ごく普通の部屋の風景。特におかしくはない…と思う。

 

『んだろーな…遠近か?サイズ感がおかしいっつーか…』

「広角レンズでも使ったんじゃないの?」

『猫撮るのに?』

「うーん…」

 

違和感の謎は解けなかったが、とりあえず依頼に向け、車を走らせることにした。

 

 

* * *

 

 

ゲヘナ自治区に到着後、直ぐに依頼解決に取り掛かった。

サンの実地調査に加え、私がカメラなどの情報を集め、調査を進めた。その結果、自地区の端っこにある工場跡地にいることが分かった。

途中でとある事実に気づいたのだが…実物を見るまで目を逸らしていた。

で、数時間で見つかった、のだが…

 

『…デカイな』

「うん、大きいね…サイズが」

『俺らの体くらいはあんじゃねーの?』

「違和感の正体はこれであってたか…」

 

目を逸らしてた事実が目の前に鎮座していた。

ゲヘナの頭に三本白斜線の入った黒猫。身を丸まらせて眠っている。至って普通の黒猫だ。

 

但し、その大きさは1mを超えている。

 

丸まった体勢でこの大きさ。起き上がればサンと自分の体よりも大きいかもしれない。

 

『これを飼ってたってマジかよ…』

「本当なんだろうね。写真と同じ顔だし、首輪もしてるし」

『目撃者が怯えるわけだよなぁ…。こんなん化け猫の類だろ』

「カメラに写ってたのもずっと大きかったし…。とりあえず、車に載せよう。連れ帰らないと」

『どっちかっつーと保健所案件じゃねーのかよ…。まあ依頼だし、連れ帰るけどよ』

「首の後ろを摘んで。猫はそこを摘んで持ち上げれば暴れないから」

『おー、分かってんよ。いつも通りにな』

 

サンは猫の元へと歩いていき、首を摘んだ。そして持ち上げ…持ち…

 

『…上げ?』

『ちょ、っと、待て?このサイズでどうやって持ち上げ…』

「…あ。」

『あ、じゃ、ねー!?オイコラシオン!!?どーすんだこれ!!?猫のヤツ、目ぇ覚ましちまってんぞ!!?』

「今車をそっちに向かわせてる。あと数分で着くからそれまで何とか…」

『…何とか?』

「頑張って」

『シオンンンンンンン!!!!???』

 

叫び声が発せられてるであろう場所に向かって、車を走らせる。とにかく急いで向かってあげなければ。

 

『オイコラ、暴れんなテメッ、痛ッ!爪立てんなコラァ!!』

「もう少しで着くから、頑張って」

『ちょっ、急いでくれ!コイツめちゃくちゃ暴れてきやがる!!ガッ、おまっ、頭噛むな!!』

 

目的の工場が見えた。時間もないので、入口の扉に車で突っ込む。広い場所、窓から光の射す場所に、動く影が見えた。

 

「サン、無事?」

『………。』

「…サン?」

 

そこには、猫の首を摘んだまま、猫の舌で頭を丸ごと齧られるサンの姿があった。

 

「サン…ごめん、間に合わないなんて…」

『…………。』

「サンの遺志は、私が継ぐから…」

『勝手に殺すな早く助けろ』

「分かった」

 

遺志はともかく後の仕事を引き継いで、なんとか猫を車の後ろから積み込んだ。

 

 

* * *

 

 

「ーッたく、ひでー目にあった…」

『ご愁傷さま…。あっこら、暴れないで』

「おー、そっちは大丈夫か?」

『この子、多分早く飼い主に会いたいんだろうね。なのに来たのが私たちだったから、ちょっと興奮してるみたい』

「飼い主を連れてくるべきだったか…」

 

運転席でサンがぼやいた。手足から頭に至るまでキズだらけで、絶賛応急処置中である。

 

「このスーツも修理に出さないとな。ボロボロだよ、ったく…」

『しばらく予備の中から使おうか。…落ち着いて猫ちゃん。暴れないで。ほら、狗尾草(ねこじゃらし)だよ』

「どこで拾ったんだそれ」

『さっきその辺に生えてた…待って落ち着いて、暴れないで』

「オイホントに暴れさせるなよ?そのサイズが暴れたらシャレになんねー」

『大丈夫。よく考えたら狗尾草(ねこじゃらし)って猫が飛びつこうとしてくるけど』

「オイ車揺れてるって!ちょ待て!!一旦止めるぞマジでシャレにならん!!」

 

 

* * *

 

 

その後、なんとか飼い主の元に猫を届け、報酬を貰ったまでが昨日の出来事である。その後ゲヘナで一夜を明かし、報酬を貰ったので何か豪華なものでも食べていこう、となったのが今朝。

 

…。

…ここまでの話、必要だったかな?

まあいいや。ともかくレストランにいた経緯としてはこんな感じだ。




この続きは、当事者であるサンに引き継ごう。By鈴ヶ咲シオン
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。