キヴォトスの『探偵』   作:誰かのヒーロー。

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契約だ。 by《消去済み》



閑話 ~あの日のことを~

とある夜。幾つもの星がきらめく空の下。

探偵たちの車は、どこへ向かうでもなく走っていた。

 

『…ねぇ、サン』

 

突然、シオンが話を切り出した。

 

「何だ?」

『サンはさ、…後悔とか、してない?』

「してない!」

 

強く、ハッキリと答えた。

 

『…まだ何についてか言ってないんだけど』

「うだうだグダグダ無駄に考えるのは嫌いなんだオレは。だから何にも後悔してない」

『本当に?』

「ああ。後悔したって何も変わんねーからな。何かを失敗したんだったら後悔するんじゃなくて、次に活かした方が有意義ってもんだ」

『…そういうものかな』

「オレにとっちゃーな」

『そう…』

 

沈黙。夜の帳が降りた街を走る車の音だけ。

 

「何で急に聞いてきた?」

『…』

「車、止めるぞ」

 

ブレーキを踏み、サイドブレーキをかける。エンジンの音だけが、静かに響いていた。

 

『…』

「どうした?言ってみろよ」

『……』

「怒ってねーから。ほら」

『…サンは、幸せ?』

「おう」

『楽しい?』

「おうよ」

『ならいい』

「いや話せよ」

『………』

「…ハァ」

 

バックミラーを見つめながら、サンはため息を吐いた。

 

「よく聞けよシオン」

『…うん』

「オレは自分の選択や人生に後悔してない。覚えてる限りしたことはない」

『うん』

「それはこれからもだ。オレは後悔したくない。したくない事はしない。それがオレの信条ってやつだ」

『…生き様で後悔はしたくない、っていうこと?』

「いいなその言葉。…まあ、そんな感じだ。ただ、したくないんじゃない。オレは()()()()()。だから心配すんな。これからオレは死ぬまでずっと何にも後悔しない。それでいいし、それがいいんだ」

『…』

 

『…でも』

「ん?」

()()()()()()()()()()()()()()

「…そうだな」

 

「それでいい。死んだあとのことは死んでから考える」

 

「だからいいんだ。…泣くなよ、シオン」

 

バックミラーに映る顔に涙は無い。しかし、サンにはシオンの気持ちが分かった。

 

『…泣いてない』

「泣いてるよ。お前は今、泣いてる」

『…』

「安心しろ。オレがすること、したことの責任は全部オレがもつ。死ぬ時が来たらオレがもっていく」

『…それで、本当にいいの?』

「おう。お前が気にすることはねーよ」

『…そう。分かった』

 

ミラーに映る顔は、笑っていた。

 

『…ねえ、サン』

「何だ?」

『サンは、生きてて…楽しい?』

「おう!」

『幸せ?』

「おうよ!!」

『…これからも?』

「当然だろ!!!」

『…なら良かった』

 

星がきらめく空の下、車はまだ走り続ける。




…分かった。 by
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