後の展開がある程度わかってる状態でも見てて辛いものがありました。
衝動的に書いた作品なので多少の設定のガバはご容赦を⋯。

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星と夢に溶けて消えた蛍火

虚無だ。

ああ、いや、別に私が虚無の運命を歩むことができるようになった訳ではない。

ただ私の心にぽっかりと穴が空いてしまった、そんな感覚。

何をするにしても身が入らない。

色んなことに上の空になっている自覚があるし、それが皆の足を引っ張っているのも分かっている。

だけどこの虚しさは、自分の中で踏ん切りをつけたと思っても、私の胸にまとわりついている。

 

そんな私を見かねたなのから1つの提案があった。

 

「じゃあ気分転換に夢の中を散歩してみなよ!夢の中で楽しいこととか変なこといっぱいしてその記憶で埋めつくそう!」

 

散歩、散歩か。

そういえばまだ隅々まで見て回ることが出来てなかったっけ。

うん、気分転換がてら夢の中を探索してこよう。

そうと決まれば早速出発しよう。

 

 

 

 

 

さて、黄金の刻についたけど、最初はどこに行こうか⋯?

⋯特に行きたい場所が思い当たらないから適当に歩こう。

しばらく歩いていると夢境ショップがある辺りについた。

 

そういえばホタルと会ったのもここが初めてだったっけ。

思わず一目惚れしそうになるくらい綺麗だったな⋯。

⋯だめ、今は気分転換をしに来てるからホタルのことは考えちゃだめだ。

気を取り直して次は⋯エディオンパークにでも行こう。

 

ついた。

あの日以来ここに来てないからエディオンコインは無駄に沢山あるし、とりあえず景気づけに1発黄金ガチャマシンを回そう。

そう惰性にも近い思いで引いたガチャの結果は黄金のカプセルに包まれて出てきた。

 

「わぁみて!あれビッグミラクルじゃない!?」

「すげぇ、俺初めて見たよ!」「これはいい流れだ!よし、次は俺が回すぞ!」

 

思いがけず出てきたビッグミラクルという幸運に周りがザワつく。

だけど、ビッグミラクルを引いた私の心は凪いでいた。

本来なら嬉しいはずなのに、驚いているはずなのに、ここでホタルと過ごした楽しかった思い出をそれが上回ることはなかった。

つまらない、この上なくつまらない。

 

「⋯⋯帰ろう」

 

 

 

 

夢から帰って皆と食事をした。

気分転換に行ったにも拘わらず落ち込んだ雰囲気が取れない私を皆は気遣ってそっとしておいてくれた。

ありがたいのと同時に申し訳なくなった。

本当に、私はいつまでウジウジしているんだろう。

 

今日は、もう寝よう。

 

 

 

 

 

 

 

それから新たに仲間になったホタルと色々な星を巡った。

ヘルタステーションでは私が作製した創造物と戯れたり、ヘルタのコレクションを見て目を輝かせたりしていた。

 

『わぁ〜!皆かわいいー!でもこんな生き物見たことない⋯え、これ君が創ったの!?』

『すごい、ここにあるの全部奇物なんだ⋯。採点銃⋯?『⬛︎⬛︎⬛︎点!!』うわっ!?今のが、私の点数?あはは、何を基準につけてるんだろうね?』

 

ヤリーロ-Ⅵでは闘技場で観戦してみたり、一緒にゴミ箱巡りもやってみた。

 

『が、頑張れー!いけー!ま、負けるなー!』

『君って、本当にゴミ箱が好きなんだね⋯。え、出てきたゴミで自分の体力が回復する⋯?ご、ごめん、ちょっと訳が分からないかも⋯』

 

仙舟では牌を打ってみたり、鱗淵境の壮大な景色を見せてあげた。

 

『うーん、初めてだけど、上手くやれるかな⋯?えっとじゃあまずはどれを出そうか⋯あれ?これってもう揃ってる、よね?つ、ツモ!』『うそぉ!?』

『わぁ⋯これは、すごい景色だね。海が割れてて、その中からこんなに立派な⋯。え、今海の中を何か通っていかなかった!?』

 

 

 

それから

 

『だめだよ』

 

それから

 

『私はそこにはいないよ』

 

うるさい

 

『君ならもう気づいてるはず』

 

うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい

 

 

 

『これは夢だよ』

 

 

 

瞬間、先程までの幸せな夢は硝子のように砕け散った。

そこは黒く何も無い空間。

そんな中に私と『ホタル』がポツンと佇んでいる。

 

「ホタル、どうして」

 

『今目の前にいる私は『夢の中のホタル』であって、君の知ってる『本物のホタル』じゃないよ』

 

「それは⋯」

 

わかっていた。

先程から見ていた都合のいいモノは全部夢だと、薄々気づいていた。

でも、それから目を背けたかった。

背ければそこに私が見たかった、そうなって欲しかった未来がずっと見られるから。

 

『このまま起きないつもりなの?覚めない夢に浸ったままで?』

 

「わかってる。でも、こんなモノを見せられたら、私は⋯」

 

 

 

 

 

『⋯⋯生命体はなぜ眠るのか?』

 

「⋯え?」

 

『招待状の質問。それに対する私の答え、覚えてる?』

 

覚えている。

あの場所でのことを私が忘れるはずがない。

 

「「夢」から覚めるのが怖いから」

 

『うん、正解。⋯夢の中では全てが許され、あらゆる可能性がある。振り返りたくない過去は泡のように消えて、向き合いたくない明日は永遠に訪れない。⋯そう、まさに今の君のように』

 

「⋯⋯」

 

『私はそれを悪いとは思わないよ。夢の中に閉じこもって幸せに浸るのも、明日を迎えないのも、全部人の自由』

 

「だったらっ!」

 

『でもね──それを許してくれない人が、あなたにはいるんだよ』

 

────ピシッ

 

黒い何も無い空間に亀裂が入った。

いやそれどころか、亀裂はどんどん大きくなっていく。

 

「これ、は」

 

『お寝坊さんな君を起こしに来てくれたらしいね。お友達かな?どうやら私もそろそろ君とお別れみたいだね』

 

「ま、待ってホタル!」

 

慌ててホタルに手を伸ばしたが、透明な壁に阻まれ触れることはできない。

 

『最後に君に私から1つ問題をあげる』

 

「⋯何?」

 

『生命体が眠るのが『「夢」から覚めるのが怖いから』、なのだとしたら⋯⋯『なぜ生命体はそれでも起きるのか?』。ふふっ、難しいことを言ってるように聞こえるけど、君にはこの問題は易しすぎるかもね。だって』

 

『答えは君のすぐそばにあるから』

 

その言葉を最後に夢は完全に壊れた。

 

 

 

 

 

「星っ!星っ!!起きて!」

 

ハッと目を覚ます。

寝ながら泣いていたのか頬を涙が伝う感覚がする。

そして必死そうな顔をしたなのと目が合った。

 

「よかった〜、目を覚ました!」

 

「なの、どうしてここに?」

 

「どうしてって、あんたがいつまで経っても起きないから心配して部屋に行ったら鍵は空いてるし、うなされてるし、かと思ったら手を掴んで離さないし。本当に心配したんだからね!」

 

自分の右手を見ると今もまだなのの手を掴んでいた。

離してみると余程強く握っていたのか少し赤くなっていた。

 

「なの、ごめん」

 

「ううん、大丈夫。ちょっと痛かったけど、手を握ってる間はあんたがまだ楽そうだったから。あんたこそ大丈夫だったの?ずいぶんうなされてたけど⋯」

 

すごく心配そうに覗き込んでくる。

なんだか久しぶりになのの顔を見た気がする。

気分が落ち込んで顔が下を向いていたせいだろうか。

そうか、私はこんなに心配されているのに、ちょっと気を使ってくれてる程度の認識しかできてなかったんだ。

 

「ごめんね、なの」

 

「え、ええっ!?だからそんな謝らなくていいって!⋯それよりさ」

 

「それより?」

 

「どっか遊びに行こうよ!今日はウチも一日中一緒に居てあげるからさ!」

 

「⋯⋯!」

 

何かに気づいた気がする。

そしてそれを今確かめに行くことができる気がする。

 

「うん、遊ぼう、なの。」

 

「やったー!」

 

「それと、ちょっと付き合って欲しいことがある。いい?」

 

「うん、いいよ!何するの?」

 

 

 

「答えの証明」

 

 

 

 

 

 

それからなのと一緒に黄金の刻に向かった。

まず最初にクロックレストランに食べ物を買いに。

 

「うわーどれも美味しそう!これ奢ってくれるって本当!?」

「ただし20000信用ポイント以内ね」

「そんなに沢山買わないよ〜。じゃあこれにしよ〜っと。あんたは?」

「ん、このオークロールを3つ」

 

次にエディオンパークにゲームをしに。

 

「おっ!あんた昨日ここでビッグミラクルを引いたお嬢ちゃんじゃないか!今日も期待してるぜ!」

「えっ、あんた昨日あの雰囲気でそんなことしてたの!?」

「そういえばそうだった」

「そういえばそうだったって、あんた⋯」

「心配しないで、今日はなのの分までビッグミラクル当てるから」

 

ブラザーハヌになり。

 

「フンッ」

「あははっ!ちっちゃくなっちゃった!」

「フンッ」

「ああ、あんたそれ喋らないんじゃなくてそれしか喋れないんだね」

「フンッ!」

 

夢境ショップで頓珍漢な夢を見て。

 

「ええ、なにこれ?そこら中にゴミ箱の、人?が沢山?」

「ここから私はこいつらに認められ晴れてゴミ箱キングになる」

「ご、ゴミ箱キング?」

「そう、そして悪しき魔王サ=ンポを打ち倒す熱い戦いが始まる!」

「うーん、ちょっとウチには話のレベルが高すぎるかも⋯」

 

 

 

「んーっ、やっぱり友だちと遊ぶのは楽しい〜!次はどこに行くの?」

 

「⋯⋯」

 

「星?」

 

「ああ、ごめん。次は⋯⋯私の秘密基地に行こう」

 

 

 

 

 

 

「ふぅ〜。結構歩いたけど目的地はまだなの?」

 

「もうちょっと、この階段を登った先」

 

なのがどんな反応をするかワクワクする。

あの日、ホタルに連れられてここに来た私が、今日は案内する側。

ホタルもこんな気持ちだったのかな。

階段を登りきるとそこには、あの日と変わらない絶景が、変わらずそこにあった。

 

「わぁ〜綺麗⋯よく見つけたねこんなところ」

 

「⋯⋯うん、教えて貰ったんだ。せっかくだしクロックレストランで買ったオークロール、ここで食べない?」

 

「いいね!食べよう!」

 

クロックレストランで買ったオークロール3つを取り出し分けていく。

なのの分。

私の分。

そして

 

「あれ?それ誰の分?あ、もしかして丹恒の分?」

 

「⋯そんなとこ。さ、食べよう」

 

「⋯⋯?うん」

 

地平線の光を見ながら一切れ口に運ぶ。

おいしい。

また一切れ。

⋯おい、しい。

 

「うーん匂いとか全然木みたいな匂いするのに味は全然おいしいね〜。あんた、は⋯」

 

「⋯⋯(ポロポロ)」

 

「⋯⋯⋯ほんとに世話が焼けるんだから」

 

なのは何も聞かずに背中を撫でてくれた。

その優しさが嬉しくて、痛くて、涙がもっと止まらなくなる。

ポロポロと零れ出した涙は、次第に滝のようにとめどなく流れ、それは次第に心の内も吐露し始める。

 

「ホタル⋯また会いたい⋯!」

 

「⋯⋯」

 

「また会って遊びたかった!なのや、列車の皆にも紹介してあげたかった!」

 

「あんた⋯」

 

「でも、もうそれは出来ない⋯。あの子は死んだ!死んだの!」

 

まるで自分に言い聞かせるように。

 

「う゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!」

 

声をあげて泣いた。

2人しかいない空間に私の泣き叫ぶ声が響き渡る。

なのが何も言わずにギュッと抱きしめてくれた。

 

「な゛の゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛」

 

「そっか⋯あんたはあんたなりに、自分の気持ちに区切りをつけようとしてたんだね。⋯えらいよ、星」

 

なのは、私が泣き止むまで、抱きしめ続けた。

 

 

 

 

 

 

「満足した?」

 

「⋯うん、なの、ありがとう」

たつ

「どういたしまして」

 

どこか憑き物が落ちたかのように身体が軽い。

泣きすぎて顔が酷いことになってる気がする。

でももうそれも今更な気がする。

地平線を見ると変わらぬ景色。

それでも先程より少し輝いて見えるのは気のせいだろう。

 

「「夢」から覚めるのが怖いから」

 

「?」

 

「招待状の質問、『生命体はなぜ眠るのか』に対する私の友達の、ホタルの答え」

 

「あー。なんとなくわかるかも。だってこの世界すっごく楽しいし嫌なことなんて全然起こらない凄く愉快な所だもん。夢から覚めたくないって思っても仕方ないかも」

 

その通りだ。

振り返りたくない過去は泡のように消え、向き合いたくない明日は永遠に訪れない。

とても、とても魅力的な夢だ。

でも──

 

「ホタルが今日、夢の中に出てきて私に問題を残していったの。仮に生命体が眠るのが『「夢」から覚めるのが怖いから』なのだとして、『なぜそれでも生命体は起きるのか?』って」

 

「⋯それで、答えはもう出たの?」

 

私はこくりと頷いて答えを出した。

 

「それは『小さな身近な幸せがあるから』だと思う」

 

それだけ、たったそれだけの為に起きる。

起きたら誰かが待ってくれている。

今日の私のように。

家族、友達、仲間、起きたらおはようと言える人がいる。

覚めたくなかった夢の内容を面白おかしく聞いてくれる人がいる。

身近な幸せの種類なんて数え切れないほどある。

それが、起きる理由。

 

「それが、私の答え」

 

「⋯そっか」

 

「なの、ありがとう。なののお陰で今日それを証明できた。ここまで付き合ってくれてありがと──────」

 

その時

 

ふと、地平線の光が少し強くなった気がした。

 

だから光の屈折のせいだろうか。

 

 

 

すぐそばに、ホタルが見えた。

 

 

 

驚愕に目を見開く。

そんなバカな、と。

有り得るはずがない、と。

そんな私に彼女はふっと微笑みを見せ、そして

 

 

 

"私はその考え、凄く好きだよ。ありがとう"

 

 

 

声は無い。

ただ、そう口を動かした気がした。

突然のことで呆気に取られていると、ホタルはあの日写真を撮った日のようにピースして、溶けて消えた。

 

「⋯?どうしたの?何か凄い驚いた顔してるけど」

 

なのの声で我に返った。

先程までホタルがいた場所には何もいない。

この場には私となの、2人だけ。

幻覚だったのだろうか?

それとも私の都合のいい夢?

⋯いや、考えるのはやめよう。

 

「ううん、なんでもない。それよりなの、一緒に写真撮らない?」

 

「いいね!ここすっごく景色綺麗だし最高だね!」

 

「よし、じゃあこっち来て」

 

ホタルへの未練はない、と言えば嘘になる。

今でもまだ生きているんじゃないかと考えてるくらいには未練タラタラだ。

それでも一度、彼女はここに置いていこう。

私が現実に幸せを見いだせなくなるその時まで。

だから、今は、

 

「準備できた?」

 

「いつでもいいよ!」

 

「じゃあ撮るよ?1⋯⋯2⋯⋯チーズ!」(パシャ)

 

 

おやすみ、ホタル。




傷つく誰かの心を守ることができたなら

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