密猟者の朝は早い 作:密猟者
密猟者の朝は早い。
重い瞼を無理やりこじ開け、羽毛をふんだんに使った毛布を引きずるように歩く。
呪文で生み出した水を顔面に被り、冷たい水が彼を夢から現実へと引き戻す。
余りの寒さに凍えそうになりながら、身支度を済ませていく。
指紋や油で白濁した鏡に向かいあう。
見るも無残な姿へと変貌した、美しい黄金の髪を、丁寧にゆっくりと櫛でとく。
僅かに生え始めていた髭を剃り、すっかり大人しくなった髪を整えていく。
鏡に映った己の姿に満足した彼は、それから40分、たっぷりと様々なポーズの自分を見つめた後、衣服の選別に移った。
ベットに散乱した衣服の山目掛けて杖を振り、めぼしい服を浮かせていく。
30分後、一昨日殺した誰かが着ていたドラゴン皮のローブに身を包んだ彼は、お気に入りの帽子を手に取り、テントを出る。
直後、テントは彼のポケットへと吸い込まれて消え、彼自身もまた透明となって消えた。
もう朝だというのに、ほとんどの光を頭上の木々が独占してしまうほどに鬱蒼とした森の中。
黒い毛並みの、カモノハシのような嘴を持ち、モグラの様なずんぐりとした胴体に、短い手足を持つ、奇妙で愛らしい生物、二フラーが巣穴から顔を出した。
早朝は、蜥蜴やヤモリなどの生物がただでさえ少ない日光を浴びるために開けた場所へと現れる時間。そういった獲物を狩るために、普段地中で暮らす二フラーも地上へと出てくるのだ。
不運にも、ある一匹の小さな蜥蜴が二フラーに目をつけられた。
機敏な動きで近づく二フラーに対し、未だ体温が低く、動きの鈍い蜥蜴は簡単に捉えられる。
が、不運なのは蜥蜴ではなかったようだ。
突如、赤色の閃光が空気を割いた。
二フラーの体から力が抜け、静かに地に倒れる。
杖を下ろし、気絶した二フラーを無造作に掴み上げた彼は、少しの逡巡の後、ミシミシと嫌な音を立てて二フラーの頸椎を握り潰した。
この方法の方が、魔法で〆た時より毛皮として使える面積が大きくなるのだ。
死体をポケットに突っ込んだ彼は、生前二フラーが使用していた巣穴に杖を突っ込んで呟いた。
アクア エルクト デュオ
轟音と共に、彼の杖から洪水を思わせる量と勢いの水が飛び出し、巣穴を蹂躙する。
やがて、巣穴が水で溢れ返り、彼周辺の地面がぬかるんできたころ、彼は杖を一振りし、水の放出を止めた。
アクシオ
そう唱えたと同時に、ぬかるみ柔らかくなった地面を突き破り、既に事切れた数匹の二フラー達が勢いよく飛び出した。
その死体の中に、小さな子供を発見した彼は、機嫌よさげに呟いた。
「二フラーの子供は高く売れるんだ」
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