密猟者の朝は早い 作:密猟者
パフスケインは素晴らしい魔法生物だ。
その一見毛玉のように見えるかわいらしい見た目はもちろん、家に出る蜘蛛を食べてくれたり、食べ残しを食べてくれたり。
人間にとってあまりに都合のいい生物だ。
まぁ、寝ている間に鼻糞を食べるという、なんとも個性的な一面もあるにはあるのだが、それを補なって余りある魅力を持つ生き物と言えるだろう。
だが、やはり最も素晴らしい点は、捨てる所が無い、という点だろう。
肉は柔らかく臭みもないため、シチューにしても、ステーキにしても絶品だ。
また、その体毛は様々な魔法薬に使うことができるし、内臓は他の魔法動物を捕獲する際の罠に使用できる。
それでいて力も弱く、簡単に仕留めることができるとなれば、密猟者にとっては最高の獲物だ。
適度に暖かく、近くに小川が流れる。小鳥のさえずり、虫のさざめきが、この地の豊かな生態系を雄弁に物語る、ホグワーツから南に50Kmほどの秘境。
そこは、数刻前が嘘かのような地獄と化していた。
黒く丸いサングラスを掛け、金色の髪をオールバックに纏め、上質な毛皮に身を包んだ彼は、死体の山を見てため息を吐いた。
彼がわざわざ普段の狩場を離れて、こんな僻地へと赴いたのには訳がある。
それは、ノクターン横丁の端にある小さな店でのこと。
彼がいつものように密猟品を卸していると、店主から耳寄りな情報があったのだ。
なにやら、パフスケインの大規模な群れが見つかったと。
なに、ただのパフスケインの群れなら、大した情報じゃない。
少し本気になって探せば5.6匹の群れなら見つからないこともないし、そもそもそんなに高く売れるわけじゃない。
だが、1000匹前後の群れ、となると話は別だ。
塵が積もればなんとやら。その儲けはかなりになる。
こうして、彼は重い腰を上げた。
そして、現在に至る。
パフスケインは、前述の通り、非常に需要の高い動物だ。その素材はもちろん、ペットとしても、非常に人気がある。
そこで、その高い需要に応えるため、秘密裏に大規模な養殖が行われることがあり、つまり…
どうやら、今回はそのレアケースだったようだ。
彼は最初、退散するつもりだったのだ。
こんな大規模な養殖、どこの有力者がやっているか分からない。もしかすると、とんでもない相手からの恨みを買う可能性だってあるのだ。
リスクが大きすぎる。
彼がそう判断し、姿くらましの準備をした瞬間
「何者だ!!」
制服に身を包んだ、一人の魔法使いに見つかってしまったのだ。
その魔法使いの一声を皮切りに、十数人の魔法使い達が彼の周りに現れる。
既に完全に包囲されていて、数多の杖が彼に向けられている。
姿くらましする暇はない。
彼は覚悟を決めた。
一触即発の空気の中、彼が口を開く。
アバダケダブラ
屋敷しもべ妖精に命令するかのような気軽さで、彼は簡単に許されざる呪文を発動した。
緑の閃光が飛び、突然の出来事に呆けるリーダー格の男が地に伏した。
「ッ敵だ、一斉に掛かれ!ステューピファイ!!」
その声を皮切りに、数多の閃光が彼に向って飛来する。
だが、彼の顔色に焦りはない。
「プロテゴ」
完璧なタイミングで発動された盾の呪文は、魔法を跳ね返すだけに留まらず、全方位に衝撃波を生み、魔法使い共を吹き飛ばした。
「クルーシオ」
すぐさま、彼は杖を振った。
魔法使いの一人がうずくまり、余りの苦痛に声を上げる。
追い打ちとばかりに、彼が苦しむ男に赤い閃光を飛ばす度に、周囲の魔法使い達に呪いが飛散する。
別に何も支障はない。苦しくもないし、痛くもない。飛散した呪いに当たった魔法使いは困惑した。
分かるのは、呪われた、ということだけ。
しかし、すぐに思考を切り替える。支障が無いならば問題ない。
早く、狂ったように追い打ちを加えるあの男を止めなければ。そう判断し、彼に呪文を打つも、巧みな身のこなしで躱され、いなされ、弾かれ、ただ時間だけが過ぎていく。
気づけば、呪われていない魔法使いはいなくなっていた。
ふと、彼の追撃の手が止まった。
瞬間、目が合った。
やけにスローに見える彼の杖から、緑の閃光が飛んだ。
アバダケダブラ
最後に、一斉に人間が倒れる音が聞こえた
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