密猟者の朝は早い 作:密猟者
彼はドラゴンが好きだ。
鋭く、堅牢で、危ない光沢を放つ鱗も
全てを切り裂かんばかりに、全てを砕かんばかりに鋭く、太い牙も
あの巨体を浮かべる、強大な翼も
全てが愛おしい。
というわけで
ドラゴンの卵を買った。
これで累計5つ目だ。
お陰さまで、パフスケインを売っぱらってパンパンだった財布は見る影もない。
財布の紐と同様、卵を抱えて姿くらましする彼の表情は緩みきっていた。
先が見えないほど広大な草原
空は青く澄んでいて、太陽が燦々と輝く
遠くに見える森からはディリコールの美しい鳴き声が響き渡り、豊かな自然を象徴する。
日光の下では、巨大な大岩かと見間違うような体躯を誇るドラゴン、ウクライナ・アイアンベリー種が体を丸めて眠りこける。
恐ろしい程に雄大で、豊かな自然
ここは、彼の箱庭、もといトランクの中
トランクに、検知不可拡大呪文を掛け、そこに密猟してきた動物を飼育しているのだ。
ピシッ
鋭い音が響いた。
弾かれたように膝に抱えた卵を確認すると、数本の罅が走っている。
コツコツという音が響く。
中から殻をつついているようだ。
既に罅は広がり、穴が空く寸前だ。
固唾を飲んで見守る中、小さな口が顔を出した。
ドラゴンの幼体だ。
降りたたまれていた翼を伸ばし、数度はばたかせる。
始めてみる外界にキョロキョロと忙しなく顔を動かしながら、口を大きく開き欠伸をするドラゴンから、小さな火花が舞った。
愛らしく、それでいて荘厳なその姿を見て彼は杖を振る
「インペリオ」
通常、ドラゴンに呪文など殆ど効かない
いかに強力な魔法とはいえ、異常なまでの魔法耐性を持つ鱗には弾かれる
だが、ドラゴンが幼体だった場合はどうだろうか
捕食し、栄養を送り、光沢、大きさを増す
その度に、その鱗は強靭となり、その守りは鉄壁となる
つまり、結論を言うと
幼体に彼の呪文を防ぐほどの力はまだない
彼の命令は
自分に危害を加えないこと
彼の命令には絶対服従
彼を親と思い、敬愛すること
の3つだ。
呪文を浴びた幼体は、よちよちと覚束ない足取りで彼にすり寄り、キュアと甘えた声を出す。
彼は頬擦りするドラゴンに若干の痛みと、それを上回る愛おしさを感じながら、じっくりと観察した。
ハンガリーホーンテール種か
幼く、小さい体躯ながらも、その特徴は顕著に現れている。
黒い鱗に、猫のように縦に裂けた瞳孔。
そして、何より目立つ全身に生えた鋭いスパイク。
世界で最も凶悪な品種の名に反しない、戦闘用の体だ。
美しい
そして、そのような美しく、強大な生物が、自分を親だと錯覚し、敬愛を抱いていることに、彼はなんともいえない快感を感じた。
奇神さん、怠惰なみどりさん、お気に入り登録ありがとうございます!
すごく励みになります
お気に入り登録、感想、評価、是非よろしくお願いします