開祖様は転生者。   作:テムテムLvMAX

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2話 危機

 刑亥項、ピンチに陥る。

 

 

「亥項、いつになったら身を固めるんだい?」

 

 

 父親のその一言で刑は恐怖のドンドコに突き落とされた、哀れ。

 

 

「父さん待ってください、まだ16なんですよ……? 早いとは思いませんか?」

 

「? 、いや、早くはない。むしろ遅いくらいだぞ。

 いいか亥項、俺はお前の選択には文句はないが、将来が心配になる生き方をしているのが見てられん」

 

 

 最もな意見だった。

 

 

「ですが父さん……僕は身を固めるつもりはないですよ、まだまだこれからなんです。目指す所はもっともっと高いんだ……お願いです」

 

 

 刑は父親に頭を下げる、父親が刑が心配なのは汲み取った上でこれから先誰かと一緒にはならないと宣言した。

 彼はこの先1000年は余裕で生きるつもりでいる、ドラゴンボールがあれば可能な話であり、ドラゴンボールがなくとも不老不死と似たような事は出来ると考えていた。

 

 そんな事はもちろん親には話していないし、話すつもりもない。人を辞めることを勧めるつもりはこれっぽっちもない。

 

 

「亥項…………分かった。もう何も言わん」

 

「父さん……わかっ「出ていけ」……え?」

 

「お前は家から出ていくんだ、こんな所で燻るお前じゃない……だろ? 亥項」

 

 

 刑亥項は16にして、家から追い出された。理由も告げられず、一方的だった。だがそんなもの……上辺だけの話だ。刑も父親も心では分かっていた、いつか家を出て行くだろうと。それが今だっただけだ。刑の父親は息子を信じ家に縛られないように追い出した形を取った、刑もそれに甘え最後の親孝行として精一杯の感謝を込めた書状を書き上げ、自分の気を込めた、戻ることはないだろう、でもいつでも家がここにあると知るために。

 

 家を出る前日、九蘭は刑を訪ねてやってきた。

 

 

「亥項、本当に行くの……? 考え直す気はないの?」

 

「無いな、俺はもっと……もっともっと高みに行く、父さんも分かってくれたんだ。今更無しとは言わないよ」

 

「その旅はいつ戻って来るの?」

 

「分からない。二度と帰ってこないかもしれない」

 

 

 九蘭は俯いた、いつのまにか惚れていた男が自分の手が届かない所へ行ってしまう事に。刑は止まらない、どんな言葉も意味はない……ならば九蘭が出来ることは何だ。その答えは……

 

 

「刑、私も行く」

 

「なんッ……!?!」

 

 

 九蘭は刑に口付けする、柔らかく優しく、それでいて喋らせない強さもある口付け。刑も不意をつかれて極端に驚いていた、こんなのは転生して以来だ。九蘭はこうして刑と共に旅に出ることになった。行く宛はない、ただただ刑の強さを高めるだけの旅だ。

 

 二人は故郷を離れていく……そして、この旅が……彼の人生を大きく左右することになる。

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 刑と九蘭の旅は順調に始まった、まずは故郷の山村から馬で丸10日掛かる近場の村を目指す、そこは人も多く情報も豊富、強くなるためのヒントが無いかと彷徨うよりも聞いて回ったほうが確実性が高い。九蘭の提案でそこへ行くことにした。

 

 しかし馬で10日というのなら、人間の足だともっと掛かる。刑は言わずもがな、九蘭に関しては山村という環境で鍛えられたとはいえ人間の域を出ない。ということで刑が九蘭に修行をつけることにした。修行することになったのは九蘭の願いだ。刑は九蘭を抱いて飛ぶつもりだったが……まぁ先を急ぐ旅でもないので、ボチボチと歩きながら稽古をつける。

 

 そして旅を始めて20日後のこと、九蘭は気を操作することに成功した。操作できる気は微々たるものだがここまでスムーズに覚えたことに刑は素直に称賛を送った。九蘭はそのたわわな胸を張った。

 

 

「これが気なんだね、刑の見てる世界がちょっと分かったよ……」

 

「それはなにより、しばらくは気の操作を練習すること。扱える気が多くなったら次の段階に行こう」

 

「亥項は凄いね、こんなの思いつきもしなかったよ。やっぱり天才だよ」

 

「ふっ、大した事ないさ」

 

 

 刑と九蘭はそんな調子でどんどん進み、とうとう目的の村に到着する。広い平原に建つ民家は中華風の建築様式であり、まるで中華時代劇にでも迷い込んだような気分になった。ドラゴンボールの元ネタが元ネタだけにそこに関しては疑問はない。

 

 

「ざっと3倍ぐらいでかいな」

 

 

 刑の村より大きい、これは期待できそうだと二人はまず宿に荷物を置いてから腕っぷし自慢を探した。理由は簡単に刑の実力がどの程度か確かめるためだ。

 

 この村の腕自慢を取り敢えず片っ端から探し、試合をしていった。普通に試合してくれない輩もいたがそこは拳がちょっと滑って骨の一本や二本へし折ってしまったが……まぁ正当防衛なのである。

 

 村の喧嘩番長、半グレ、門番、武道家、筋肉自慢、ヤクザのにぃちゃん。試合出来そうな奴は片っ端からしばき回し……得られた結果は刑の圧勝だった。

 

 

「俺、結構強いな」

 

「何言ってんの亥項……前からはちゃめちゃに強いよ」

 

 

 上記の相手を片腕で、しかもその場から動かず軽く殴ったら気絶して……ハッキリ言って相手にならなかった。気を操作できる分九蘭の方が強そうだ、刑はそう思って九蘭に戦わせてみた。

 

 

「やーっ!」

 

「ぐぉぉっ!?」

 

 

 全然余裕で勝ちをもぎ取った、やはり気の有無は大きい。気を操作できるとは要はパンチ一発に込められるエネルギーを変えられるということであり、気を意識的に全身へ巡らせることで無駄なく力を発揮できる。

 

 刑は理屈には納得したが考えていた計画が頓挫したので不満たらたらである、ドラゴンボールでは気を知らなくとも純粋に肉体や技術で強い奴がいた。天下一武道会の面々はそうだった筈だと。

 

 

「居ないか、そうそうそんなヤツ……」

 

 

 天下一武道会決勝レベルの人間なんてゴロゴロいるわけでもないので気長に探すことにした。

 二人は腕っぷし自慢達を端から端まで殴り飛ばし、いつしかこの村の警察のような立場になってしまった。きっかけは九蘭がチンピラが店を荒らしていたので成敗した所から始まる。

 

 

「何しやがる女ぁ!」

 

「チンピラさんは大人しく帰りなさい、良いですね?」

 

「「うるせぇ! やっちまえー!」」

 

 

 三対一、どう見ても九蘭が不利なのだが飛びかかってくるチンピラを拳一発で黙らせ、控えていたチンピラには顎に一発お見舞いし、もう一人には足払いをしてからのみぞおちへのフットストンプ。見事に無傷で勝ってしまった。刑が教えたのもあるが、九蘭は技巧派なのかもしれない。

 

 

「さぁ! 次やったら貴方達の髪毟ってから焼き入れるからね!」

 

「「「ひ、ひぃ~もうしませーん!!!???」」」

 

 

 九蘭が大見得を切るとチンピラ共はどこかへ逃げていった、当分は何もしないだろう。

 

 

「中々良い動きだった、九蘭」

 

「当たり前、先生が良いもの……あー疲れちゃったな〜亥項おんぶ」

 

「はいはい」

 

 

 九蘭は意外と甘える所があって、刑は面倒見が良いので一応コンビとしては悪くないのかもしれない。

 

 と、こんな感じで九蘭が見つけ次第チンピラを成敗していった結果村の警察みたいになった二人、旅をするとは言っても仕事をしなければならなかったので嬉しい誤算と言える。

 

 こうしてこの村で一年ほど過ごす事になった。

 

 この一年で九蘭は更に伸びた、舞空術を覚えたのだ。刑が上手く教えたこともあるが九蘭のやる気とセンスが良い事もあって早く早くという感じだ。

 

 

「(そういやビーデルも悟飯に押しかけて気功術習ってたよなぁ……そろそろ気弾とか教えるか……?)」

 

 

 刑自身はというとデスビームやどどん波といった技の類を使えるようになった、その名は『貫指砲』そのまんまなネーミングだった。しかし侮る無かれ、彼は気の操作に重きを置く男、指先全てから放つことだって出来るのだ。想像するならサイコガンダムが手っ取り早いかもしれない。

 

 

 刑と九蘭の旅はまだまだ続く。

 

 

 

 

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