前回から時間が大きく飛んでエイジ50年、刑亥項は60歳を迎えていた。
「一気に老け込んだ気がする、気でピチピチなんだけどさ……」
そんな事をのたまいながらも、一人山に籠もり修行の日々を送っていた。
前回の続きとして、まずガスコーロンとの修行は大変有意義なものだった、九蘭程の気を扱う才能があった訳では無いがそれを埋めるだけの経験と技があった、それこそ当時の刑と張り合える程の上達を見せ、良きライバルとして今日まで互いに高め合ったきた。
九蘭はそれとなくしていたが刑と結婚しめでたく3人の子宝に恵まれた、その3人の子も育て切ると親元を離れそれぞれやりたいことが有るからと旅に出た。九蘭は刑の性格上子育てが終われば修行に戻ると踏んで居たのでそれを後押しした。
よって今、刑は山の上で一人修行に打ち込んでいる。
ガスコーロンは年齢も年齢な事もあり武道家を引退した、今は行進を育てるために頑張っているようだ。九蘭は定期的に刑に会いに来る、ガスコーロンは残念ながら覚えられなかったが彼女には舞空術がある。それに九蘭は気を使ったアンチエイジングに成功しており全盛期から変わらぬ美しさを保っている、あくまでも見た目だけの話だが。
刑に至っては自然界の気と自分の気を循環させることで飲まず食わずでも問題なく動けるようになっていた、当然のように全盛期から齢を取っていない。中身も見た目相応である。
「鍛えれば鍛えるほど奥が見えなくなってくる……
「『気』の力とは生きとし生けるものそのものなのかもしれない……まさに可能性の塊だ」
気をそう評する彼の手には様々な形を持った気のオブジェが握られている、人型であったり武器型であったり草花であったり……
訓練を積む必要はあるが望む限りの形質形状を実体化出来るエネルギーと捉えると恐ろしいのだ。メリットに相応しい条件がいくつもあるにしろ、鍛え高め扱いきればそれこそ新しい神になることも出来る。かの破壊神のように。
「神……目指す所は遠いな……ビルス様、かぁ……」
遠い遠い空を見つめて、独り言をポソリと漏らす。地獄耳な破壊神お付きの神官であれば飛んできそうな独り言である、後から気がついてそれ以降喋ることはなくなったが。
「よし、そろそろアレやるか……」
刑は山頂に作った専用の修行場へ場所を移した。修行場とは言うが野ざらしの開けた土地があるだけだ、だがそれで良い、彼の修行に必要ない。
それに今から試す実験での暴発の恐れがあるからだ、下手をしたら自分と山が無くなることになる。
彼は軽く力を込め気合を入れると修行場のど真ん中に立ち、気を集中させる。
「集中……」
今からやろうとしているのは『界王拳』、ドラゴンボールといえばと言う技である。
界王拳とはその名の通り『界王』と呼ばれる神様の上の閻魔大王の上の神様的存在、天国と地獄の間にある蛇の道の先にある小さな星に住む。
上記の通り余程のことが無い限り出会うことが出来ず、ましてや修行をつけて欲しいなど言っても本人の前の前の段階で思いっきり突っぱねられるだろう、そもそも会いたいから会える存在ではないのだ、本来は。……本来は。
「集中……」
だが、界王拳と言うのは強くなる上で外せない技であることに変わりなく、修行をつけてもらえないならば独学身に付ける他になく、刑はそもそもの界王拳の解釈から始めたのだ。
彼が『気』に触れ合い操る事で得た体験や経験、原作からの情報を統合して解釈を導き出した。
刑の解釈を語るならば……
“まず気そのものは個々人で保有量が異なり鍛えることで気の総量を増やすことが出来る、ただし種族毎の上限値のようなものがある。そして気は全身を血管のように流動しているもの”
と言う、刑の気の解釈を前提にすると……
“界王拳の強化つまり戦闘力の大幅な上昇は=気の総量増大と結び付けられがちだが実はそうではなく潜在的な気を含めたすべての気を任意の倍率で圧縮して出力すること”それが刑の界王拳の解釈だ。
よって気が増えれば増える程、圧縮される気が増やせ倍率を高めることが出来る。
口をすぼめたホースは勢い良くなるのと同じであり、当てはめるなら刑と言うタンクから流れる気を界王拳と言う技で噴射する、ということになる。界王拳の倍率アップとはホースをすぼめる口が狭ければ狭いほど勢いを増す事であり、ホースを流れる水(気)が増えればその勢いは更に増す。
結論として、界王拳と呼ばれる状態では気の出し方が変わりそれが全身に一時的な強化を施す、気が赤くなるのは恐らく圧縮された気では色が変わって見えるのだろう、超サイヤ人など種族特有の技も概ね同じことが言えるのではないかと、刑は考えている。
「____来たっ! ハァァァァッ!!」
その解釈が当てはまったのか、刑の全身を赤い気が包み込む
「界王拳ッ! 三倍だぁぁぁっ!」
一段と気が強くなり、周囲に暴風を巻き起こしていく。
「出来たぜ……界王拳……ここまで長かったな……」
界王拳に至るまで多くの時間を費やした、十年、二十年、もっと使ったかも知れない。だがそれだけの苦労をした事は事実だった。やはりやって見て初めて分かる孫悟空の才能と言う所だろうか、あるいは界王の師匠適正が異常に高いのかもしれないが。
「ふぅ、やっぱり独学にも限度があるな」
そう言いつつ界王拳を四倍に高めていく、気の操作に慣れてきたのかそのまま動き出す、まずは徒歩、出来たらパンチやキック、それも問題ないレベルで動けると舞空術で空を飛び、しばらくは身体に掛かる負荷を調べるべく全力で青空に飛行機雲を作っていった。
「ふぅむ、成る程なぁ……」
そして、それを見ているのは、一体誰だったか……
刑はそれを知るよしもない