「国興し? そんなこと計画しているんだ?」
ある日の昼下がり、ぶくぶく茶釜はモモンガ・たっち、そしてウルベルトとお茶の席についていた。
ここにいないペロロンチーノは、現在進行形でモモンガ配下のアンデッドたちと共に働かされている。
一月以上も居候し、戯言を抜かし続ける罰として姉が課したもので、誰も反対することなく刑が執行されていた。
時折、『モモンガさんは俺の嫁ですからね!?』などと戯言を発しては、騎士と悪魔が力づくで黙らせているのを、家主は苦笑して見守る。
ようやく落ち着いたところで、いかにも超越した存在感を放つ面々が集う理由を聞かされ、茶釜は納得したように頷いていた。
「それでなんですけど、茶釜さんも参加しませんか?」
「えっ、それは素直に嬉しいんだけど、いいの?」
「もちろん、防衛面において貴方ほど優秀な方もいませんし」
「こいつの意見に賛同なんて絶対したくねぇけど、貴方の防御力には俺も苦戦させられましたから……」
「本当に、貴方は一言多いですね」
「つうか俺はまだお前が参加することを、認めた覚えはねぇけどな?」
「モモンガさんが問題ないと判断した時点で、すでに決まりです。 それも話はついているはずですがね?」
異形種とはいえ、なかなか濃い面子に囲まれながら茶釜は緊張することなく過ごす。
それというのも此処、モモンガの拠点に弟と家族と共に越してきたのだ。
今まで、などと比べるべくもなく遥かに過ごしやすく、食料調達などにも不便しないのもある。
水にしても魔法で井戸を作ったので問題なく、快適過ぎて逆に震えた。
確かにここにいたらダメになりそうだと考えたとき、モモンガ達からの提案は彼女としても琴線に触れるものがある。
興味もだが、今後を踏まえると選択肢として十分アリだからだ。
「ーーうん、いいよ。 これからを考えたら願ってもない話だもんね」
「よし、これで10人ですね!」
「……10人? あの、モモンガさん? アウラ達はともかく、まさかうちの弟を勘定に入れてる?」
「えっ、ダメですか?」
「良いんじゃないですか? ちょうどいい塩梅にこ……、いや手……、人手は欲しかったですから」
「そうですね、空を飛べるというのも利点ですから。 どこぞの悪魔は手頃な駒としか仲間を見ていないようですがね」
「人聞きが悪いですねぇ。 捕縛した後で黙らせるために殴った人の台詞とは思えませんよ」
「何か問題でも?」
「騎士ともあらう奴が正々堂々してねぇってことだよ」
「はっはっはっ……、斬り捨てますよ?」
「やってみろよ、返り討ちにしてやる……!」
断る理由はない、それに尽きる思いで茶釜は了承する。
快諾してもらえたと喜ぶモモンガが口にした人数に、姉という立場からすると蔑ろにする発言が溢れた。
ただウルベルトにしろ、たっちですら雑な扱いを匂わす雰囲気にペロロンチーノの立ち位置が決まった瞬間でもある。
それを感じさせないとばかりに殺伐とする騎士と悪魔が一触触発の状況の中、闖入者が現れた。
「ーー終わったァァァァァ! モモンガさんお仕事終わったよぉぉぉっ!」
「お疲れ様です、ペロロンチーノさん」
「よぉし休憩! 俺もお茶を……」
「あたしのも淹れて」
「俺もよろしく」
「では私の分も」
「ちょっと!? 姉ちゃんはともかく、野郎は自分でーー、ひぃっ!? 何で殺気だってんの、二人とも!? 分かったよ、淹れればいいんだろう!?」
扉を勢いよく開け、ペロロンチーノはヘトヘトだとばかりモモンガによりかかる。
ゴツい骨の手で頭を撫でられてご満悦の鳥人が自分も加わろうとすると、姉らからお茶を催促された。
完全に上位者である茶釜には逆らえないが、騎士と悪魔の要求は突っぱねようとする。
すると文句は言わせないと笑顔の圧がニ方向から放たれ、抗えず渋々と4人分用意し始めた。
力関係がはっきりした瞬間をまざまざと見せつけられたモモンガ的には、面白いと感じる。
「何で俺がお茶淹れるんだよぉ〜……、セバスがいるんだから任せりゃいいのにぃ〜……」
「セバスには他に仕事を任せてますからね。 ただ、こうなると従者はもう少し増やしても良いかもしれませんね」
「なら、俺のアンデッドを増やします?」
「でも細かな命令は受け付けないんでしょう? スケルトンならまだしも、上位種ともなれば素体の用意も面倒ですよ?」
「それに国ともなれば、あたしたち以外にも人手は欲しいわよね? もう少し勧誘するんでしょ?」
「えっ? なになに!? 何の話してんの?」
「お前は早くお茶を用意しろ」
「遅ぇな、蒸し鶏にすんぞ」
「ソテーも良さそうですよね」
「俺の扱い酷くない!? モモンガさんからも言ってやってくださいよ!?」
「ーーペロロンチーノさん」
「はい!」
「お茶請けはそこの棚にあるので、お好きなの用意してくださいね」
「モモンガさぁぁぁぁん!?!?」
ブツブツと不満を垂れる鳥人を放っておいて、4人は今後について話し合う。
ちなみに有能老執事は、最近出来た子飼いの剣士を教育するのに忙しくしていた。
そのあまりに苛烈な訓練に、剣しか知らなかった男は根を上げたくても上げられない、しようものなら死が待っている。
彼の嘆きは主たちには当然、届くこともなく、挫折も許されなかった。
話を戻して、モモンガ達の話題が気になる内容だったのでペロロンチーノは振り返るも、早くしろと圧をかけられてしまった。
冷たすぎると嘆こうとしたところで、親友のアンデッドが助け舟を出してくれるかと思いきや、逆の反応に泣きたくなる。
結局モモンガを除いた4人分のお茶とお菓子を用意したものの、味に不満があると淹れ直させるまでがワンセットになった。
次回、いよいよパンドラズ・アクター回です!
サンライフさん、誤字報告ありがとうございます!