モモンガ様、総愛され物語   作:風煉

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お待たせしました、原作ヒドイン登場ですw


死の支配者、転生する【自称正妃!とその父襲来編①】

「あ〜ん! ふふっ、美味しい♪ はいはい、フェンとクアドラシルも欲しいよね、はいっ!」

 

ある日の昼下がり、モモンガが支配する森の中の一角、広場のような場所でアウラはペットと共に休憩していた。

ビーストテイマーである彼女に従う魔獣二匹、狼と蜥蜴を従えて、この日も探索をしている。

支配下にあるとはいえ、探しきれていない箇所もあるので、アウラはそんな場所を調べるよう任を受けていた。

ちなみに彼女の双子の弟であるマーレは、ドルイドとしての能力を発揮して農園の仕事などに協力している。

茶釜(あるじ)やモモンガの側にいられる分け身に対して不満はあるが、彼女自身に与えられた仕事を軽んじてはいない、むしろ誇りにしていた。

どんな形であれ、主人のために働けるのは嬉しいことであり、無為に過ごすよりもずっと良いと考えている。

鬱屈が溜まれば弟を弄れば良いと、姉としての特権を遠慮なく発揮するつもりだ。

そうして張り切って、しらみつぶしに探索したところで、適当な場所で腰を落ち着け、持参した林檎をペットたちと分け合い、長閑な時間を過ごす。

 

「でも、最初は怖かったなぁ。 アンデッドって聞いたからどんなものかと思ったけど、モモンガ様があんなに優しい方で、食べ物にも寝ることにも困らないのはすっごく良いよね!」

 

アウラ達がモモンガの拠点へ正式に越してきてから、既に数ヶ月以上が経過していた。

越してきたばかりは不死者と暮らすことに多少なりとも忌避感はあったが、それも数日のうちに霧散する。

まだ幼いアウラたちを前に、支配者は優しく頭を撫でたり、ペットたちをすごいと褒めもしてくれた。

自分たちだけでなく大切なペットも受け入れ、日々穏やかに過ごせることを闇妖精(ダークエルフ)の少女は感謝している。

生まれたばかりの捨てられた自分たちを拾い育ててくれた茶釜も敬愛しているが、この地の主はまた違う慈悲深さで包みこんでくれた。

そんな姿にアウラはシャルティアと同じくらいに、モモンガへ密かに好意を寄せている。

 

「でもなぁ、あたしはまだ子供だし、モモンガ様とはーー、うわっ!? なになに、いきなり? えっ? 『自信を持て、主が思うほど()()()()()()』……、って何言ってんのよ二人とも!? は、恥ずかしいからやめてよね!?」

 

アウラとしてはまだ子供なので相応しくないと悲観されるが、フェンたちはそんな主を応援する。

クアドラシルに顔を舐められ何事と驚くも、フェンたちは少女の素晴らしさを懸命に伝える。

いきなり褒められて顔を真っ赤にする乙女な姿に、ペット達はやれやれとため息をついた。

これではいつになったらと考えた時、森の中に奇妙な気配を感じる。

それはアウラも例外ではなく、全員が同じ方向へ視線を向けると少女は真剣な表情で獣たちに命令した。

 

「誰かいるね、よしっ偵察に行くよ。 二人とも、付いてきて!」

 

探索することもアウラの仕事だが、他にも支配地域に闖入者が現れた際に偵察することも彼女の任務になっている。

休憩から仕事へ即切り替え、立ち上がって気配の元へ隠密行動で進んでいった。 それほど時間が掛かることなく、対象を発見して草むらに隠れて息を潜める。

獣たちも主に倣って気配を殺し様子を窺った。 まずアウラがどんな奴らかと確認すると、その一団を見て少し驚く。

 

「一人は、人間かな? でもあの付き従ってるっぽいの、悪魔? いやっサキュバスかな? どんな組み合わせだろう?」

 

小声だが、言葉にしてしまうくらいに驚いたのもある。

それというのも、森の中を歩いているのは二人組で、一人は身なりのいい格好をした人間の中年男性で、もう一人は白いドレスを身に着けた、絵画からそのまま出てきたような絶世の美女だった。

濡羽色の腰まである長い髪に、同色の腰に生えた翼、金瞳に陶磁器のような透き通った肌は、同じ女性から見ても憧れを抱かせる。

更に頭部には白い角も生え、それすらも彼女の魅力として引き立てていた。

だが人と悪魔らしき組み合わせなどそうそうあるものではないため、急ぎ戻って報せなければと考えたとき、アウラの頭の中に先程まで考えていた死の支配者の声が響いた。

 

『アウラ』

「『あっ、はいっモモンガ様。 聞こえてます!』」

『お前の目の前にいる二人は私の客だ。 侵入者ではないので安心してくれ、それとすまないが、連れてきてもらえるか? そのままだと仕掛けが作動してしまうかもしれないからな』

「『畏まりました!』……へぇっ、モモンガ様にはあんな知り合いもいたんだな」

 

伝言(メッセージ)で仔細を伝えられ、アウラも敵じゃないと知って警戒を解く。

この辺りはモモンガが管理する場所で、普通の人では相手にならない強力なアンデッドも見張りについていた。

だから少女も問題ないと思い草むらから出るように立ち上がると、客人らに近づいていく。

すると向こうも気がついたのか、二人が顔を向けた。

 

「おやっ? 可愛らしいお出迎えだな」

「こんにちは、モモンガ様のお客様ですよね? お迎えするよう言われました!」

「そうか、良かった。 森の雰囲気が少し変わっていたから、連絡しようと思っていたーー」

「……お父様、少し不用心が過ぎるかと。 私が対応いたします、お下がりください」

「んっ? おいーー」

「貴女、一体何なの? その尊き御名を軽率に口にするのは止めてもらえるかしら?」

「はぁっ?」

 

男性が柔らかい笑みを浮かべると、アウラは失礼のないように対応する。

モモンガの客に無礼がないように気を配ったつもりだが、男の3歩後ろにいた女性が厳しい顔を浮かべた。

父と呼んだ男の前に出ると、尊大な態度で闇妖精の少女を見下ろしたため、辺りは剣呑な雰囲気に包まれる。

 

「何、いきなり。 モモンガ様をモモンガ様と呼んで何が悪いの?」

「気に食わないわね、そもそもお前はこんなところで何をしているの? 此処はあの御方が支配される、いと尊き場所。 虫風情がうろついて住処を築いていいところではないのよ」

「なっ!?」

「やめなさい、アルベド! 全くお前は、モモンガさんのことになると頭に血が上りやすいんだから……」

「ですが!」

「大方、モモンガさんの側にその子がいるってのが嫌なんだろうけど、事情があるんだろう? 気持ちはわかるが、自重しなさい。 もしその子に何かあれば、嫌われてしまうかもしれないぞ?」

「ーー! そ、それは……」

 

あまりの物言いにアウラも気分を害し、思わず喧嘩腰になってしまう。

だがそんな少女をさらに怒らせるような言葉を、女が発言したので聞かされた側は絶句した。

まさかの扱いにペット達も怒りを露わに威嚇するも、女はひと目見ただけで制してしまう。

ただの威圧で無力化できる辺り、それだけの実力者だと言うことだ。

出迎えを命じられているので手は出さないが、言い返すくらいは良いだろうと少女は構える。

そんな彼女たちを宥めたのは父という男性で、アルベドという名の娘をきちんと諭した。

思うところがあるのか、渋々と怒りを抑える辺り、効果覿面といえる。 静かになった頃合いで、男が再び前に出ると改めて話しかける。

 

「すまなかったね、不快な思いをさせてしまって」

「い、いえ、大丈夫です……」

「それと、念のために言っておくのだが、私は人間ではない」

「えっ? だってーー」

「これは擬態しているだけでね、本来の姿はこっちなんだ」

「ーーうわっ!? ブ、脳食い(ブレインイーター)!」

「ははっ、驚かせてしまったね。 自己紹介しておこう、可愛いお嬢さん。 私はタブラ=スマラグディナだ。 こちらは娘のーー」

「お父様、私はもう子供では御座いません。 自分でできます」

 

身内の無礼を謝罪する姿に、アウラは人間とはいえ真摯な態度に感心し、それを受け入れる。

ただ娘の態度に親として大変なんだろうなと苦労を察するも、男は見た目通りの姿ではないと言い出したので、少女はキョトンとした。

証拠とばかり指を鳴らした直後、男の姿は異形種のソレへと変化する。

魔法で姿を誤魔化していたことにアウラは驚きつつも、さすがはモモンガの客だと納得した。

タブラと名乗った男の紹介を遮り、女性が胸を張るように少女を睨みつける。

若干ではあるが、女としてその胸部に膨らむものに嫉妬しなくもないと、幼い闇妖精は悔しさを胸に押し留めた。

 

「アルベドと申します、見たところ貴女はモモンガ様の下僕かしら?」

「……アウラよ。 一応は下僕だけど、直属ではないね」

「そう、分かったわ。 ではこれからよろしくね」

「これからって、貴女は客でしょ?」

「違うわ、私はあの尊き偉大なる王であらせられる御方の……、正妃よ♡」

「……はっ? えっ、はっ、はぁっ!?」

 

相変わらずの上から態度に不満を隠しきれず、アウラは物言いが厳しくなる。

叱られることも覚悟しているが、それにしてはアルベドの様子がおかしかった。

あくまで客なのにと指摘すると、サキュバスは顔を紅潮と染め、頬に手を当てて告げる。

一瞬何を言われたのか理解できず、しかし意味を咀嚼して驚かされた。

その後ろで父親はまたかとばかり、頭を抱えた姿は哀愁に満ちていた。

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