拙作のペロロンチーノさん、かなりBL色が強めで、屈指のギャグキャラ仕様になっております、その辺りご注意ください
「……お腹減ったな」
ある日のこと、空を飛んでいたはずの
場所はどこかの森の中、辺りに気配はなく、誰かが通る様子もない奥深いところだった。
そもそも今の自分は間違いなく捕食される側なので、そちらの方が心配だったりする。
それでも男は、ペロロンチーノは希望を捨てていなかった。
「そうだ、こんな状況だからこそ可愛いロリっ娘が現れて助けてくれるかもしれない……! そのまま恋愛フラグを立てまくってゴールする! そうしたらもうペロペロしまくりの甘い生活が待っているんだぁぁぁぁぁ!!!!」
うつ伏せで寝転びながら、何とも元気な妄想を語る様は、あまり見ていて気持ち良いものではない。
ペロロンチーノ的にも誰もいないから言えるだけで、第三者がいたら悶絶必死だ。
それくらいの妄言を吐き出している自覚はあるが、ある意味で遺言と言えるのかもしれない。
鬱蒼とした森の中、そう易々と人が入り込む場所ではないため、ここで終わりかと諦めへと至りそうだった時だ。
不意に誰かが草を踏む音が聞こえてきたので、まさか本当にとバードマンは胸を躍らせる。
現れた美少女が戸惑いながら水を差し出し、甲斐甲斐しく介抱してくれるまでの光景が脳内にありありと浮かんだ。
生きていたら良いことがあるとは言うけど、天国は本当にあったんだなと思って目を閉じる。
ウキウキと死の淵に近い場所へいるはずの残念すぎる男は、来訪者を待った。
音が大きくなり、やがてペロロンチーノのすぐそばまでたどり着く。
どうしたものかと悩んでいるのか、とりあえず声をかけようと屈んだのを気配で察した。
「(チャンス! では、どんな人が来たのかなぁ〜♪)」
本来ならすぐにでも助けを求める場面なのに、男は己の欲望に忠実で機会を見計らっている。
薄目で現れた人はどんな素敵な女性なのかと期待するも、ペロロンチーノの視界に飛び込んできたのは、一言で言えば死だ。
骸骨、骨、見るからにアンデッドと言う風貌に高鳴っていた心臓が急激に静まる。
このまま停止してしまうのかと思うくらいの状況に、生物として本物の終焉を確信した。
「(ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!?!? よりにもよってアンデッド!? 何でこんな真っ昼間に!? 存在感半端ないんですけど!? って、ひぃぃぃっ!? 歩いてきた方向の草、全部枯れてる!? エルダーリッチ? いや、それ以上の上位種!? 聞いたことないんですけど!? うわぁぁぁぁぁ、すぐにでも逃げれば良かったぁぁぁ! 腹減って動けないけど!?)」
安穏としていたペロロンチーノの思考は情報過多となり、混乱へと至る。
何しろ突然不死者が現れたのだから、彼の望んだ展開とは180度違った最悪な方向へと至ろうとしていた。
今すぐ逃げ出したいが、空腹で動けないほど弱っているせいで、どうすることもできない。
ほんのわずかな可能性で気にも留めず立ち去ってくれたら、と言う思いもあった。
だが死体を自らの僕とするアンデッド術に活用される可能性もあるので、望みはなさすぎる。
「(あぁ、姉ちゃんゴメン……! 調子に乗って女の子ナンパしまくって、人間たちの不興を買った俺をしばき倒して、逃げた俺が間違っていたよ……! シャルティア、ゴメンな……、もう俺帰れそうにないよ……)」
ペロロンチーノの脳内に走馬灯がよぎり、これで自分は終わるのだと自覚したらどうにでもなれと思い至ってしまう。
せめて家族に会いたかったと遺言を残そうとした時、場違いな声が響く。
「……あの、大丈夫ですか?」
優しげな男の声に、何か変なものを聞いたとバードマンは驚く。
気配を探り、ここには自分たち以外誰もいないことを確認しつつも、目を開けないように様子見した。
「もしも〜し? 生きてますかぁ〜?」
ペチペチと骨の手が頬を叩いて生存を確認してくる、それが地味に痛かった。
いやそれよりもまず、アンデッドが生死確認するとは一体どうなんだと言いたくなるものの、起き上がったら即死させられるかもしれない。
おかしな状況に良いからどこかへ行ってくれと、死んだふりをしてやり過ごそうとした。
ペロロンチーノの無駄な抵抗にアンデッドは体を揺すったりして反応を伺ってくる。
それに答えないようにすると、諦めたのか立ち上がった。
これで少しは生存の可能性があると思ったものの、男の予想はあっさり裏切られる。
突然地響きがなると、近くの地面がボコリと穴が生まれた。
魔法を行使したらしいと思った直後、ペロロンチーノの体を持ち上げるアンデッドが恐ろしいことを言い出した。
「全く、人の家の近くで死ぬのは勘弁してもらいたいんだよなぁ〜。 今は実験用の死体なんてたくさんあるから、別段使う必要もないし。 埋めれば良いよねーー」
「わぁぁぁぁぁぁっ!?!? 生きてる、超生きてる! だから生き埋めはやめてぇ!?」
ご丁寧に埋葬しようとしたらしく、このままでは埋められてしまうとペロロンチーノは全力で生存報告をする。
突然の絶叫にアンデッドも驚いてしまい、思わず手を離してしまった。
結果、埋葬用の墓穴にバードマンは落ちてしまい、ひっぱり上げる羽目になる。
「アハハハハ! 反応しなかったのは、俺のせいだったんですね! 確かに、アンデッドが生存確認なんて普通しませんよね!」
目の前のアンデッド? らしき者に助けられたものの、ペロロンチーノは理解の範疇を超える事態に混乱していた。
案内されたモモンガという名の魔法詠唱者の住居は地下にあったが、見事なものだった。
豪華とはいかないものの、清廉として下品ではない高価さに溢れ、貴族が住む部屋のように格式高い。
加えてどうしてあるのかは不明だが、食べ物を用意してくれたので、飢えに苦しんでいた男は貪り始めた。
そして満腹になったところで事情を説明すると、陽気な声と態度にまたも唖然とさせられる。
「いやぁ、本当にびっくりしました、現在進行形ですけど……。 あの、本当にアンデッドですか?」
「そうですよぉ、アンデッドです。 友人たちにはこぞって、嘘つけと言われてますが」
「そりゃそうでしょ、俺も見たことありませんよ。 モモンガさんみたいなアンデッドなんて!」
「いるじゃないですか、ここに?」
「いや、そういう意味じゃなくて……」
ペロロンチーノはすっかり落ち着いて、モモンガに直球すぎる疑問をぶつけた。
本人も自覚しているので話が少し通じていない部分もあるが、邪悪な存在ではないのだけは分かる。
人間味が強すぎる異形種というのは珍しくないが、それにしてはこのアンデッドは突出して異常だ。
またそれ以上に話をすればするほど、その温厚な雰囲気にバードマンはすっかり気を許してしまう。
「そういえばペロロンチーノさんはどうしてあんなところにいたんです? 行き倒れ、ってやつですよね?」
「あ〜、まぁ色々あって、何日も飛び続けていたんですよ。 それで空腹が限界に来て、墜落しちゃったんです」
「そうですか、大変ですね。 俺はアンデッドなので飲食不要だから、その辺りがまだよく分からないんですよ」
「えっ? じゃああの、さっきの食べ物はどうしたんですか?」
ここに来てようやく本題ともいえる、ペロロンチーノがなぜモモンガ宅の近くで倒れていたかについての話題になった。
やや言いにくそうにしながらも、個人の事情にそこまで突っ込まずに納得する辺り、人柄の良さを感じる。
思わず何でも話してしまいそうになるのを男は必死に抑えながら、気になっていた疑問をぶつけた。
するとパッと明るい表情を浮かべた自称アンデッドな存在が、興奮気味に語る。
「それはですね! 最近
「かてい、さいえん? えっ、アンデッドなのに??」
「アンデッドだから生と死を学ぶのに必要なんです! 実際に見てみます? ちょっと最近の楽しみなんですよ!」
「は、はぁ……」
「どうです? 俺の家庭菜園は?」
「ーーモモンガさん? 俺の認識が正しければ、これはもはや菜園ではなく農園と呼べるものでは??」
モモンガに案内される形でペロロンチーノが見たものは、居城近くの森林を開拓してできた大規模な農園だった。
現在もスケルトンが鍬を持って畑を耕し、苗の経過確認をエルダーリッチが綿密に行い、収穫した作物を回収した死の騎士が籠に入れている。
極め付けはその籠をソウルイーターが引いて、保管場所となる倉庫へと運んでいた。
自らの価値観が全てひっくり返る思いに陥るバードマンのことなど気にも留めず、モモンガが胸を張る。
「試しにもらった本で学んだんですけど、召喚したスケルトンたちにやらせれば楽に作れるんです! 俺の友人が飲食することができるので、彼らを出迎えた時に喜んでもらおうと思って始めたら、楽しくなっちゃって!」
「……モモンガさん」
「ーー? なんですか?」
「しばらくの間、ここに住んでも良いですか?」
「えっ? なんでまた? ご家族はよろしいんですか?」
「ちょっと喧嘩して帰りづらいんですよ。 ほとぼりが冷めるまでの間で良いので、お願いします!」
飲食不要のアンデッドが蓄えておくにはもったいなさすぎる食糧の山に、ペロロンチーノは呆然とする。
友人とやらのために振る舞いたいという思いは分かるが、アンデッドのすることではないのだけは分かった。
ふとここでバードマンは今後について考える。
ダメで元々と頼み込んでみると、少し考えたところでモモンガから居候しても構わないと言ってくれた。
アンデッドと共同生活をするという奇妙な展開にペロロンチーノ自身が驚いている。
しかしそれ以上に、モモンガとはもっと仲良くなりたいと思ってしまったのだ。