ペロ「うわ〜〜、早まったかなぁ〜〜」
居候一月後
ペロ「やだやだぁ〜〜、ここにずっといたいんだぁ〜〜!!」
こんなお話ですw
ひょんなことからペロロンチーノは、風変わりなアンデッド モモンガ宅へ居候することになった。
だがやはり不安に思うことはあり、初日から自分で申し出たくせに後悔ばかりしている。
「早まったかなぁ〜……、いやっでもモモンガさん自体は良い人っぽいし、大丈夫だと思うけど〜……」
案内された客室のベッドに腰掛け、頭を抱えるバードマンは悶々とする。
行く宛はあるにはあるが、長居すると怒られ、しまいには来るなと追い出されていた。
フラフラ野宿するのもなくはないが、冒険者に見つかると否応なく戦闘になってしまう。
負けはしないが、それも空腹というハンデがない場合でだ。
それを考えると今のこの状況は決して悪くないので、警戒心は絶やさずに持っていこうと固く決意する。
一週間後、穏やかな陽射しを一心に受けながらペロロンチーノは椅子に座り、日光浴を満喫していた。
隣にはモモンガもいて、片やバードマンの傍らに置かれたテーブルには飲み物とお菓子が、片やアンデッドは本を山積みしている。
穏やかな昼下がりのひと時を、異形種二名様は心行くまで謳歌していた。
「はぁ〜……、お日様ポカポカ気持ちいいですねぇ〜……」
「そうですねぇ〜、静かで平和な日、食べ物も飲み物もあるし、最高すぎですよぉ〜……」
うたた寝したくなる陽気に浸るアンデッドという奇妙な構図にも、ペロロンチーノは慣れてしまう。
泊めてもらうことになった次の日から誘われて、昼間は二人仲良く日光浴を楽しんだ。
ニ人がのんびりしている一方で、死の支配者配下のアンデッド達は今日も熱心に働いている。
疲労という状態異常にならない上、至高の主のために働けるという歓びに下僕たちは全力で尽くしていた。
そんな恩恵を一心に受けるペロロンチーノは、食べ物に困らず、美味しい飲み物で喉を潤し、聞き上手な親友が隣りにいるという、この状況にすっかり溺れていた。
「……もう、ここに住んでも良いかもしれない」
「えっ? なにか言いましたか?」
「いえいえ、何も!」
警戒心などすっかり心のゴミ箱に放り捨てたバードマンは、意地もプライドも無くしている。
それくらいに贅沢で、かつこの世の楽園とでも言うべき生活がたまらなく心地よかった。
「一度帰ったほうが良くないですか、ペロロンチーノさん」
「やだ! 俺は帰りません!」
「いやっ、我儘言わないでください!? もう一月も経ってるんですよ!?」
「ここに住まわせてください、なんならモモンガさんの子供になりたい! ここの生活知ったらもう姉貴のところになんか戻りたくない!」
「訳のわからないことを言い出さないでください!?」
数週間後、すっかり絆されたペロロンチーノが駄々をこねまくっていた。
最初のうちはモモンガも訳アリとして居候を許可したが、いつまでも帰る気配を見せないので、一度帰るよう促す。
するとバードマンはアンデッドに縋って、ここで暮らしたいとまで言い始めた。
今日までの日々にペロロンチーノは表で暮らしていく自信をすっかり失くしてしまう。
それくらいにモモンガの自宅は何もかもが完璧だった。
「食べ物に困らないし、それも美味しいし、ベッドもふかふかで洗濯や掃除もしなくていい! ここじゃないと生きられない体になったから、もうモモンガさんと結婚するしかない!」
「バカなこと言ってないで、一度帰った方が良いですよ」
「やぁ〜だぁ〜! モモンガさんと暮らすんだぁ〜!」
新鮮な作物が収穫でき、掃除などは魔法が施されているので問題ない。
加えて洗濯やらの雑務をモモンガの下僕たちが全自動で担当してくれた。
何もしなくて良い環境に慣れきったペロロンチーノには、帰るという選択肢はない。
地面に寝転がり、手足を放り投げるようにバタつかせ、ここから離れたくないと子供に還ってしまった。
どうしたものかとアンデッドが悩んでいると、来客の報せが届く。
「あっ、はい、どうぞ〜」
「こんにちは、モモンガさん。 ちょっと近くまでーー」
「やだやだぁ! モモンガさんが結婚してくれるって言うまで俺は帰らないーー」
「「あっ」」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!?!? イヤだぁぁぁぁ!?」
少し時間が経ち、ペロロンチーノの絶叫が木霊した。
それは何故か、モモンガを訪ねてきた来客に強制退去させられようとしているからである。
連れて行かれないよう壁にへばりつくも、信じられない怪力でバードマンを引き剥がそうとしているのは白銀の騎士ことたっちだ。
二人のやり取りにモモンガもだが、セバスも表情こそ変えないが、苦笑している様子を見せている。
「我儘言ってないで手を離しなさい! 茶釜さんも心配してるんですよ!」
「帰らないぃぃ! モモンガさんがOKしてくれるまで俺は帰らないからぁぁ!」
「往生際が悪い! セバス、手伝え!」
「か、かしこまりした……!」
「ちょっ、それは反則ーー、イヤァァァァァ!? モモンガさん助けてぇ〜〜!?」
ウルベルトと互角以上に戦えるたっちをして、その腕力に抗うペロロンチーノは火事場の馬鹿力を発揮した。
本来なら正面切って戦える相手としては厳しいのだが、バードマンの欲望は果てしない。
モモンガといっしょに暮らすと強固な意思を前に、騎士がついには従僕へ助力しろと命令を下した。
さすがに二人がかりとなっては分が悪く、呆気なく引き離されるとどこからか持ち出した縄で騎士と執事が獲物を縛り上げる。
妙に手慣れた感があるなとモモンガは事の成り行きを見守っていたが、ようやく終わったところでたっちが理由を説明し始めた。
「すみません、お見苦しいところを晒して……」
「いえいえ、お気になさらずに。 たっちさん、ペロロンチーノさんともお知り合いだったんですね?」
「彼と言うよりは、お姉さんの方とですね。 最近会って、弟さんの行方を知らないかと聞かれたので、私の方でも探していたんです」
「なるほど、そういうことでしたか」
「それより、どうして彼がここに?」
「うちの前で行き倒れてたんですよ、そのまま成り行きで暮らしてまして……」
鎧の上から額の汗を拭うという、少し謎な動きを見せるたっちにモモンガが問う。
どうやらペロロンチーノの姉と顔見知りとのことで、慮って探していたというのだ。
それがまさか知り合いの家で、半ば寄生するが如く安穏と暮らしていたとは夢にも思わなかったのだろう。
だがそれ以上に、たっち的にはモモンガと暮らしていたという点がやや解せなかった。
「行き倒れはともかく、ここで生活していたのは何故です? モモンガさん、飲食しませんよね?」
「作物の本を読んで、試しに農園を作ってみたんですよ」
「農園……? 何でそんなことを?」
「俺はともかく、たっちさんとかは食事する必要があるじゃないですか。 だから来たときに困らないようにと、色々な実験も兼ねてるんです」
「ーー相変わらずモモンガさんは面白いですね」
「もがぁぁぁっ!? モゴモゴっ!(訳:モモンガさぁぁぁん!? 助けてぇ!)」
「煩いな……。セバス、連れて行け。 私もすぐ行くから」
「畏まりました」
「もがぁぁぁぁぁ〜!?!?」
ウルベルトとの会談から少ししか経っていないのに、アンデッドはまた奇妙なことを始めたと知ってたっちは苦笑する。
ただそれも自分たちのことを考えてと言われると、嬉しくないわけがなかった。
先に恩恵を受けていた家出野郎に対しては、今後辛辣に扱ってやろうと騎士らしからぬ決意をする。
一方、その当人は簀巻き状態にされて猿轡もかまされながらも、ジタバタと暴れていた。
懸命にモモンガへ助けを求める様子に、思わず舌打ちをするたっちがセバスへ命令する。
片手で担ぎ上げ、ズンズンと立ち去る従者を見送り、来たばかりだが騎士も帰る他ない。
二人きりで話したかったが、まずあの荷物を届けなければと頼まれた事の片付けを優先することにした。
またそれ以外にも所用はあったので、そちらも済ませておくべきと無理やり納得する。
「それじゃあモモンガさん、アレは私が責任持って届けますので」
「いいんですか? なんかすみません」
「モモンガさんが謝ることは何も無いですよ。 送り届けたらまた来ますので、その時にでもゆっくり話しましょう」
「分かりました、待ってますね!」
何はともあれ、知り合いから頼まれていた案件を片付けると共に、モモンガの元へ来れるという算段も付けられて、たっちは満足する。
片手を上げて颯爽と立ち去る姿に
それからしばらくしてから、また別の来客がやってくる。
「こんにちは、モモンガさん♪」
「ウルベルトさん。 今日は来客が多いな〜」
「ーーたっちの野郎、来てるんですか?」
「いえ、もうお帰りになりましたよ。 ちょっと色々あって、うちに住んでいた人を送り届けてもらっていたんです」
「はっ? 住んでいたって、誰かと同居していたんですか?」
「色々ありまして。 あっそうだウルベルトさん! 確か飲食ってされますよね?」
「え? まぁ、別に必須というわけではないですが……」
示し合わせたわけではないだろうが、同じ日にデミウルゴスを共連れたウルベルトもまたモモンガの元へやってきた。
家主の態度に悪魔たちは表情を強張らせるも、ムカつく主従がすでにいないと知って内心ガッツポーズをかます。
だがそれ以上に、ここにモモンガと暮らしていたという存在を聞かされて、少しだけ解せなかった。
これは本格的に計画を早める必要があるかもしれないと考えた矢先に、アンデッドが唐突に話題を振ってくる。
驚きながらも問題ないと告げると、ウルベルトとデミウルゴスの主従コンビはモモンガ作の作物を心ゆくまで満喫するのであった。
次も幕間、今度はブレインさん後日談です