キング・アーカイブ 作:寿司
ドレスアル天井したので初投稿です。殺してやるぞ…
「この本によれば普通の高校生、常磐ソウコ。彼女には魔王にして時の王者“オーマジオウ”となる未来が待っていた」
預言者が一冊の本を読み上げる。
「彼女が住まう学園都市キヴォトスは、連邦生徒会長の失踪により混沌を極め、その秩序は崩壊の危機に陥っていた。そんな折に起きた脱獄犯によるテロ騒ぎ。我が魔王・常磐ソウコは会長が居ないだけでこの体たらくの連邦生徒会のあまりの不甲斐無さを憂い、助力に向かうのだった」
まるでオペラ歌手のような仰々しい語り口。預言者は全ての民へ、世界へとしろしめすように言葉を紡ぐ。
「テロリストを退け、そこで出会ったのは何とヘイローの無い大人だった。彼は失踪した連邦生徒会長自ら招いた連邦捜査部、通称“シャーレ”という部活の運営を担う“先生”だという」
ババン、といつの間にか設置されていたスクリーンに映し出されるのは幼児が描いた落書きのような三頭身程度の人らしき絵画。話の流れから察するに、これがシャーレの“先生”とやららしい。
「シャーレとは、連邦生徒会長によって付与された権限の下に、ありとあらゆる規約や法律による規制や罰則を免れる超法規的機関。そんな突如としてキヴォトスに出現した特異点に対して興味を示した常磐ソウコはその門を叩き……おっと、これまだ先の話でしたね」
パタンと預言者は本を閉じる。
「……何をやっているのですか? ソウコさん」
その様子を伸ばしっぱなしで手入れの行き届いてないボサボサ髪の少女がジト目で眺めていた。
「無論、我が魔王こと私の歴史を語る預言者としての勤めだとも。ウイくん」
「その喋り方、気持ち悪いので止めてください」
「えー? そう? ごめんごめん」
預言者──常磐ソウコはそう言いながら本を机の上に置く。ボサボサ髪の少女は溜め息を吐いた。
“古関ウイ”。トリニティ総合学園三年生。図書委員会所属。
彼女が居ることからも分かる通り、ここはトリニティ総合学園の図書館であり、その中でも古書館と呼ばれる区画である。
「いやぁ王様自ら預言者を演じなきゃいけないから、大変だよね」
「意味が分かりません。どこからツッコめば良いのやら……そもそも何ですか預言者って」
「だって王様には預言者が必須でしょ? いつも祝ってくれるんだ」
「祝う……? いや、預言者ってそういうものではないような気がするのですが。別に役職でも何でもないですし」
「え?」
「え?」
沈黙。
二人の認識は明らかにすれ違っていた。
「……とにかくそういうのは金輪際止めてください。突然音読し始めたかと思えば、自分で我が魔王とか……頭がおかしくなったのかと思いました。いえ、普段からおかしい人ではありますが……」
「えー。じゃあさ、ウイが私の預言者になってよ」
何気無しにソウコは提案する。
「は? い、嫌ですよ? というかこの前は書記長に任命するって言っていたじゃないですか」
「あ、そうだった。本当になってくれるんだね、よろしくウイ書記長」
「えぁ!? しまった……!」
つい過去に勝手に任命された書記長を認めてしまった。キラキラと目を輝かせるソウコに対し、ウイは白目を剥いて頭を抱える。
この王様になるとかいうブッ飛んだ夢を抱く少女とは決して短くない付き合いではあるが、何故か気に入られて以来、いつも振り回されてばかりだった。
「と、ところで何ですか? そのシャーレというのは」
「私も詳しくは知らないんだけど連邦生徒会よりも自由に動けて色んな学校とか生徒とかを手助けする部活……って感じかな? で、そこの顧問が……」
「先生……ヘイローの無い、外から来た大人……」
先程読み上げていた内容が正しければあの連邦生徒会長が自ら招き、任命した人物。その影響力は計り知れず、あらゆる勢力が注目していることだろう。
無論、我らがトリニティ総合学園も。ウイは政治には全く興味無いが、聡明であるが故にこれを察した。
「貴方から見て、どんな人だったのですか?」
「うーん……良い人そうではあったよ。少ししか会話してないけど、誠実さは感じた」
あの後、先生との邂逅を果たしたソウコは彼らが先を急いでいることもあって軽い自己紹介だけ済ませ、ソウコは付近の敵の制圧を担い、先生らを先へと向かわせて別れた。
それからどうにかサンクトゥムタワーの制御権を確保したことで事態は収拾し、治安もついこの前の世紀末っぷりと比べると目に見えて改善されたことからシャーレの活動は大なり小なり実を結んでいるようである。
「ま、あいつ……連邦生徒会長が選んだ人間だし、信用していいとは思うよ」
連邦生徒会長の失踪。
誘拐やら暗殺やらと様々な憶測が成される今キヴォトスで最もホットな話題であるが、ソウコはこれは他ならぬ連邦生徒会長自身が自ら姿を消したのだと予想していた。
無論、その目的は知らない。けれど、彼女のワンマンで成り立っていた連邦生徒会に、キヴォトスに対して残した置き土産がシャーレと先生。それはつまり連邦生徒会長は彼が自分の代わりを務められると認識しているということを意味している。
故に、期待は大きい。
「……そうですか」
実のところウイは連邦生徒会長がどんな人物なのか全く知らず、顔すら見たことがないのだが、ソウコの人を見る目に関しては一定の評価をしていた。
彼女が“良い人”だと判断したのなら、その通りなのだろう。
「ソウコさんはそのシャーレに?」
「うん。入部するつもりだよ。私としては今以上に自由に動けるからメリットが大きいし。部活入ってないから丁度良いし」
シャーレの権限はかなり魅力的と言えよう。ゲヘナとトリニティ、そしてミレニアムもこぞってシャーレを取り込もうとしてくるだろうと確信出来るくらいには。
通常他の自治区での戦闘行為は違法であるが、超法規的期間であるシャーレであればある程度は見逃されるということ。それは大義名分さえあれば他校へ攻め込むことも可能なことを意味し、ティーパーティーは策謀を巡らせ、万魔殿は既に動いていることは容易に予想できた。
ソウコも限りなく黒よりのグレーゾーンの中で好き勝手やっている活動の幾つかがシャーレに所属することによって改善され、権限も増えるため入部しない手はない。
「……そうですか。というか、相変わらずろくに登校もせず人助けに興じているのですね」
「うん。そりゃ民を救うのって王様の役目だから、当然でしょ?」
「……本当に、昔から変わりませんね。ソウコさんは」
あっけらかんと言い放つ。言葉にすると素晴らしい精神だが、かといって正義実現委員会にも自警団といった治安維持組織には「だって王様だもん」と所属せず、自治区を飛び越えてあちこちでそういった行動を無断で行っている。
それだけでなくキヴォトスの法律や規則に縛られず、彼女自身が抱く正義と価値観を基準に動くが故に、各方面から色々と問題視されている事を知っているウイは微妙な表情をする。
その結果が“トリニティの魔王”という異名。二年前の“連邦生徒会襲撃事件”といい、何度か停学になるような事もやからしている訳であるし、三年生にして退学など笑い話にもならない。そういう意味ではウイは危うい立場に居るソウコの事を口にはせずとも身を案じていた。
恐らく本人は退学になった場合はその時はその時だと、微塵も気にしてはいないのだろうが……。
「そう言うウイは引き籠りに拍車が掛かったね」
「わ、悪かったですね」
「たまには外に出た方が良いんじゃない?」
そう言えば露骨に顔をしかめるウイ。人見知りで出不精、おまけに引き籠っていたせいで日光が苦手という吸血鬼みたいな弱点のある彼女を、ソウコは純粋に大丈夫かと心配している。
いずれは書記長になってもらう訳だし、外の世界を少しは知ってもらいたくもあった。
「あ、そうだ。何ならウイも一緒にシャーレ行こうよ。見学でも良いからさ」
「えっ!? うぁっ……い、いや! お、お断りします! そ、外は怖いですし私には、この子達さえ居れば……」
思わぬ提案にウイは吃りながら拒否する。実のところシャーレという組織に興味が無いと言えば嘘になるが、それでも以前よりマシになったとはいえ生来の疑り深い性格もあってまだ抵抗があった。
「そっか。気が向いたらいつでも言ってよ、怖いなら私が守ってあげるから」
「っ……よ、よくもまあおくびにも出さずにそんなことを……」
「?」
そこに臣下や民を守るという感情以外存在しないのだと理解しながらもウイは頬を僅かに赤らめ、そっぽを向く。
「えぁ……その、き、気が向いたら……その時は、よろしくお願いします……」
「……ふふっ うん。待ってるよ」
くすりと笑う。
変わってないと思っていたが、彼女も彼女なりに変わろうと努力しており、その一歩を踏み出そうとしているようだ。
「じゃあさ、まだ授業まで時間あるし何かオススメの本ない? 出来れば歴史物で」
「あっ! そ、そう言う話でしたら、この子とかどうですか! ソウコさんの好みに合ってると思います!」
待ってましたと言わんばかりに目を輝かせ、予め用意していた一冊の本をソウコへと手渡し、ウイはそれが如何に名作なのかを熱弁する。
これが、二人の他愛の無い日常。
王様になるなどと宣い、いつもこちらを振り回してくる変人の極みのような人間。初めて会った頃は自分とは絶対に合わないし、関わりたくないと思っていた。
しかし、今は違う。これは確信を以て言える。
(王様……ですか。あなたが本当になるというのなら……書記長というのも悪くないかもしれませんね)
古関ウイにとって常磐ソウコは、掛け替えの無い、大切な“友達”だった。
「そういう訳で、シャーレに入りたいんだけど」
「いや、そういう訳でと言われても」
放課後、早速とばかりにシャーレのオフィスへとやって来たソウコは、その日たまたま当番だった生徒、“早瀬ユウカ”に呆れた顔をされる。
「もしかして面接とか必要だったり? 弊社? を希望した理由ならさっき言った通りだよ」
「……打算まみれなの少しは隠したらどう? 常磐ソウコ……トリニティの魔王。その名前はミレニアムでも有名よ」
「そうなの? まあ、よく行ってるし」
ミレニアムと聞いて真っ先に思い浮かぶのはエンジニア部だろうか。武器の開発を依頼したこともあるし、彼女達の高い技術力は重宝しており、定期的にメンテナンスもしてもらっている。
浪漫だの何だの言って余計な機能ばかり付けるのが玉に瑕だが。
「で、駄目?」
「いえそれは……どうします? 先生」
“私は全然構わないよ、ユウカ”
明らかによく思っていないユウカとは対照的に山積みの書類だらけのデスクに座る先生は、歓迎ムードだった。
そもそもシャーレは、まだ設立されたばかりで人手不足。一人でも人材が欲しいのは当然の事であるし、そんな中で正式な部員になりたいと名乗り出てくれるのは、むしろ有り難かった。
「本当に良いのですか? 彼女は……」
“魔王、でしょ? でもどう呼ばれていようが、私は生徒を差別するつもりはないよ。それに最高最善……みたいだし”
初めての出会いを思い出す。ハスミからも要注意人物だと口酸っぱく言われたが、今のところ先生の視点だと常磐ソウコという生徒は、魔王なんて異名とはあまりにもかけ離れた善性に溢れる優しい生徒のように見えた。
故に、その人となりを判断するのは、もう少し親交を深めてから。元より彼は犯罪者である狐坂ワカモも生徒として受け入れているのだから今更だろう。
「はぁ……先生がそうおっしゃるのであれば判断は任せますが……」
口ではそう言うもののやはりユウカは気が気じゃなかった。
実際会ってみるとイメージと違っていたのは事実だが、常磐ソウコが如何に要注意人物であるかは上司であるあの“ビッグシスター”自ら最大限の警戒を以て語られている。
その悪評が全部事実だとは言わないが、それでも退学どころか矯正局送りになっていないのが不思議なレベルであった。
“じゃあ、決まりだね”
「オッケー、ってこと?」
“うん。入部を認めるよ。シャーレへようこそ、ソウコ”
「やった。よろしくね、先生」
こうして、ソウコはあっさりとシャーレに入部することが出来た。
「言っておくけど、シャーレの権限を悪用したりしないでよ? 先生に迷惑を掛けるようなことがあれば……」
「うん。そのつもりはないよ」
「どうだか。トリニティ以外の自治区で戦闘行為をするのをシャーレの活動として免れる為に入部したくせに」
「誰かを救うのは悪用に入るの?」
「それは……でも、迷惑は掛けているでしょ。責任を取るのは先生なのよ?」
「ふうん……先生はどう思う?」
ユウカの弁に対し、このまま話を続けても無駄な口論だと思ったソウコは先生本人に尋ねる。
“……そうだね。流石に犯罪とかは擁護出来ないけど、人助けが目的なら私は止める気は無いし、必要ならば全然シャーレの権限を使って構わないよ”
「しかし、先生……」
“それに、生徒の代わりに責任を取るのは当然の役目だから”
「らしいよ?」
「むぅ……分かりました。本当に先生はお人好しなんですから……」
先生がそう言うのなら。ユウカは不満げにしつつも、一先ず頷いて押し黙る。見たところ生徒との信頼関係は築けているようだ。
“でも、たまにはシャーレに来て簡単な書類仕事とか手伝ってくれると助かる。後で当番表を送ろうと思うから連絡先も交換してくれないかな?”
「全然良いよ。あんまり得意ではないけど」
そう言ってモモトークというSNSアプリの連絡先を交換する。シャーレに入ったことで得られるメリットに比べれば、些細なものだった。
『承認をお願いします!』
次の瞬間、タブレット内に存在するAIの少女、“アロナ”が虹色に輝く書類を勢いよく叩き付ける。
先生は手慣れた様子で指先でサインした。
☆☆☆ ソウコCV.奥◼️◼️
トリニティ総合学園 所属 UNKNOWN 戦術的な役割 STRIKER 使用武器 LS&HG 誕生日 4月28日
「改めて自己紹介しようかな。私は常磐ソウコ。トリニティの三年生で夢は王様になること。腕には自信があるからいつでも頼ってくれていいよ」 |
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──シャーレに新たな生徒が加わった。
声優は好きな声優さんをイメージしてやってください