気がついたらテレッテでお手上げ侍   作:TTT

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探索を終えて

 

 「だはー……きちぃ」

 

 「わ、わたしも、もう、むり……」

 

 エントランスに戻ってきてすぐに俺とゆかりは地面に崩れる。ほとんど全力疾走してフロアを走り回ってシャドウと戦っている。これで根をあげない方がおかしい。

 

 「鍛え方が足りない」

 

 「どんな鍛え方したらそんなモンスターになれるんですかねー……ほんと。脚とかバキバキに筋肉ついてたりします?」

 

 「触る?」

 

 「え、いいの? じゃ、遠慮なく―――」

 

 「いいわけあるか。セクハラしない!」

 

 「あでっ!」

 

 湊の脚に触ろうと手を伸ばすがゆかりに叩き落とされる。純粋に筋肉に興味があるだけだったんだけどな。

 

 「だが、やはりタルタロスは凄いな。負荷が段違いだ」

 

 「やっぱり何かあるんスか? 疲れ方がおかしいと思ってたんスけど」

 

 「わたしも思った! 普段より疲れるっていうか、息苦しいような……何、コレ……?」

 

 「それは影時間のせいだ。平時よりずっと早く体力を消費するからな。心配ない。直に慣れる」

 

 俺とゆかりの質問に桐条先輩が答える。

 

 「どうだ、この状況下でのタルタロス探索は。足腰が鍛えられるだけでなく、シャドウとの戦闘は精神まで研ぎ澄ます。これ以上の自己鍛練はあるまい」

 

 「命のやり取りをする自己鍛練はご遠慮願いたいッスけどねぇ……」

 

 「同感……」

 

 心なしか声を弾ませながら拳を握る真田先輩にゆかりと二人で冷たい視線を向ける。当然ながら殴られれば痛いし斬りつけられれば血が出る。持ってきた薬は大活躍だった。

 

 「しかし、有里のペルソナ能力は圧巻だったな」

 

 「ああ。まさか一人で複数のペルソナを使役するとは」

 

 視線に堪えかねたのか、真田先輩が話題を変える。桐条先輩がそれに賛同する。

 

 「一つあげようか?」

 

 「ペルソナをなんだと思ってるんだヨ……」

 

 「いろんな意味で規格外って感じだよね、湊って」

 

 湊が冗談なのか本気なのかわからないようなことを言う。こっちは一体出すのに凄い手間かかったんだぞ!

 

 「これは明彦もうかうかしてられないんじゃないか?」

 

 「ふっ、ぬかせ」

 

 桐条先輩の言葉に真田先輩がどこか楽しそうに返事する。桐条先輩といるときが一番自然体な気がする。

 

 「湊がスゲーってのはわりとわかってたが、真田先輩もさすがベテランって感じだったッスね。オレたちのサポートに加えて、強力なシャドウには果敢に攻めて行ってたし」

 

 「助かった」

 

 「新人に負けてられないからな。先輩の意地というヤツだ」

 

 真田先輩が左の掌に右の拳を当て、頷く。いちいち動作が絵になる人だ。

 

 「私も前線に出れれば良いのだが……この通信もどこまで届くか……」

 

 「今回はこいつらがいる。意外と踏破してしまうかもしれんぞ」

 

 「なおのこと、通信強度の増強か、新しいオペレーターがほしいところだな」

 

 「だがそうなると―――――――」

 

 真田先輩と桐条先輩がバイクの近くで話し込む。次第に打ち合わせに発展していったようだ。

 

 「それにしても、ペルソナの力で幾分か軽減されてるとは言え、痛いもんは痛いよネ……ゆかりッチの回復がなかったらと思うとゾッとするよナ」

 

 「じゃあ、痛い思いしてまで庇わないでよ。自分のことは自分で出来るし、守られなきゃならないくらい弱くないし。正直不快」

 

 身体のあちこちを確認する。戦闘中に何度かゆかりや湊を庇ってシャドウの攻撃を受けていたので、回復しきれてない怪我が多数ある。その様子を見ていたゆかりがムッとしたように言ってくる。これはあれだな、女の子だから庇われてると思ってるのかな。それか回復使えるから守られてると思ってるのか。

 

 「ありゃ、言い方悪かった? ごめんな」

 

 「……別に順平は悪くないでしょ。今のは私が悪い。八つ当たりした。ゴメン」

 

 ゆかりはどこか申し訳なさそうに言って首を振る。疲れもあるのかもしれない。それでも今の言葉は普段飲み込んでいる本心なのだろう。

 

 「でもさ、自分で出来るぞ! って思ってるときってさ、わりとできてないんだよなあ……わかるよ」

 

 「あんたになにがっ―――――」

 

 ゆかりが地面に向けてた視線を俺の方へと向け、押し黙る。口からでまかせではないことを感じ取ってくれたらしい。

 

 母さんを家から逃がしたとき、いつまでも子どもじゃないから守ってもらわなくても大丈夫。自分のことは自分で出来るって説得したのに、問題投げ出して顔も会わせない。ついには家を出てるからな。

 

 物事万事上手く行っていれば自分のことは自分で出来るって言わないし、思いもしないからな。だって出来てるんだから。

 

 「俺も強い自分であろうとしてるけど、結局は一人じゃダメダメ。ビビるしヘタれる。ちょっとしたことで躓くし視野も狭くなる。実際、泣いたしネ……」

 

 「それは……」

 

 「でも皆がいたからビビっても踏ん張れたし、ヘタれそうになっても立ち向かえた。背中を預けてる仲間がいるから全力で目の前の敵と戦える。こんなに助けられてるんだ。俺が仲間のゆかりッチを助けたいって思うのは、迷惑か?」

 

 「……やっぱり順平って、ズルい」

 

 怒りがどこかに行ったのか弱々しい声が返ってくる。

 

 「単純な話、ゆかりッチも全部一人で解決しようとしないで、仲間を頼ってくれよってことサ。別に競いあってるわけでも、敵でもないんだからサ」

 

 「うん……」

 

 ゆかりは短く返事をして黙り込む。根が優しくて芯が強い子だから、心配はいらないだろう。

 

 「真田先輩は庇ってなかった」

 

 「あの人にそんな隙あると思うか……?」

 

 湊が真顔の指摘に俺は苦笑いを返した。危ないと思った場面ですらワンツーからの回し蹴りでまとめてぶっ飛ばしてたからな……

 

 「皆疲れただろう。今日のところはここら辺で終わりにしよう。お疲れ様」

 

 桐条先輩の言葉に全員が頷き、タルタロスの入り口へと引き返していく。俺も皆に続こうとするが、後ろから声がかけられる。

 

 「ジュンペー」

 

 「ん? なに? ミナっちゃん」

 

 「順平には悩み事、ないの?」

 

 俺に問いかける湊の目からは信頼と気遣いを感じた。

 

 「……ないよ」

放課後は順平と過ごそうか。(1000文字程度)

  • 順平と過ごす
  • やっぱりやめる
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