気がついたらテレッテでお手上げ侍   作:TTT

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放課後の交流

 

 「だあー、授業訳わかんねえ。なんだあの数学の問題。教科書にも載ってなくね? 黒板に図形書き出したとき教科書二度見したぞ!?」

 

 「だからってあそこまで堂々と湊に聞く?」

 

 「いや、だってわかんねぇし……てか良くわかったな、あの問題。大好き螺旋だっけ?」

 

 「代数螺旋と対数螺旋ね。何にも覚えてないじゃない。わたしも分からなかったけど」

 

 「余裕だった」

 

 放課後に湊の席に集まってゆかりと湊と駄弁る。話題は今日の数学の授業についてだ。

 

 「予習すらできない問題答えられるのすげぇよな」

 

 「ほんと、授業分からないからって聞きに来る誰かさんとは大違い」

 

 「いやいや、仲間じゃん? 助けてくれよ。部活に勉強、タルタロスってなるともう、パンクしちまうよ……」

 

 「それはわたしもなんですけどー」

 

 「ぐっ、それはそうだナ……今度飯おごるからさ!」

 

 「仕方ないなぁ、もう」

 

 「意外と真面目?」

 

 ゆかりに頭を下げてお願いする俺を見て湊が意外そうな顔をする。

 

 「意外とは聞き捨てなりませんな、ミナっちゃん。こんな絵に描いたような優等生を捕まえてサ」

 

 「一年のとき赤点取りすぎて部活に参加できなくなったからでしょ」

 

 「赤点取ると補習受けさせられて直帰させられるんだよネ……それなら多少しんどくてもベンキョーも頑張った方がいいじゃん?」

 

 帰りたくもない家に強制的に帰らされるの苦痛だった。時間潰すのに困った記憶がある。しかもしばらくは学業に専念しろとか言われて練習にも参加できなかったし。

 

 「僕も勉強教えようか?」

 

 「え、マジ!? めっちゃ助かる!」

 

 「特製でいい」

 

 「あ、はい……ラーメンね……」

 

 湊がふふっと笑いながらそう言う。タダではないらしい。こう言うところ茶目っ気あるんだよなあ。

 

 「じゃあ、二人前だね。せっかくだし、今日、前払いしてもらおうかな。ね、湊」

 

 「行こう」

 

 「あれ、オレの予定とか聞いてくれないの……?」

 

 「なによ。予定あるの?」

 

 「いや、なにも無いんだけどネ。部活も休みだし。てか、ゆかりッチもラーメンでいいの? あれだったら別日にわかつの定食とか奢るけど……」

 

 「夜ご飯食べないから大丈夫。じゃあ、決まり! 早くいこ!」

 

 ゆかりが両手をパンッと合わせ、機嫌良さそうに鞄を手に取る。もう完全にラーメンの気分らしい。

 

 「ああ、これから帰りか。少しだけ時間いいか?」

 

 俺と湊も鞄を手に取り席を立とうとしたとき、桐条先輩が教室までやってきた。

 

 「なにか用事?」

 

 「ああ、君たちさえ良ければなんだか、生徒会にはいってくれないか?」

 

 「それって湊だけじゃなく、俺たちもッスか?」

 

 「可能であれば、是非お願いしたい。生徒会の活動は定例だが、君たちを常時拘束するわけではない。時間があるときに生徒会室に来るよう心がけてくれればいいのだが……頼めないだろうか」

 

 「わたしは遠慮します。部活にタルタロス、勉強だってあるし、これ以上は無理です」

 

 「ゆかりッチ、言い方言い方! まあ、でもオレも同じッス。ちょーっと余裕無いかナ」

 

 「そうか……有里。君はどうだ?」

 

 俺とゆかりの返答に桐条先輩が肩を落として、湊のほうへ向き直る。頼ってきてくれたのに申し訳ない気持ちになる。でもキツイしな……

 

 「それだけでいいなら」

 

 「本当か! 自分で言うのもなんだが、生徒会長と言うのも中々に多忙でな。緊急時に口裏を合わせられる人が欲しかったんだ」

 

 「力になる」

 

 「ありがとう。助かるよ。生徒会所属の連絡や準備はこれからする。ただ、手続きは本人がしなければいけなくてな。なに、申請書に名前を記載するだけだ。担任の方に話は通しておくから、明日以降、所属の手続きをしてくれないだろうか」

 

 「わかった」

 

 「それでは、申し訳ないがよろしく頼む。邪魔して悪かった。あまり遅くならないようにな」

 

 桐条先輩が明るい表情で教室を出ていく。

 

 「よかったの?」

 

 「なにが?」

 

 「リーダーもしてるのに生徒会まで……大変じゃない?」

 

 「顔を出すだけだ」

 

 「たぶんそれじゃすまないと思うぜ……てか、進んで首突っ込むでしょ」

 

 湊は相変わらずなにを考えているのか無表情だ。そのクールな見た目と裏腹に面倒見いいし、頼りになるんだよなあ。

 

 「ま、困ったら言ってくれよナ。力になるぜ」

 

 「わたしも」

 

 「ありがとう」

 

 「まあ、それ言うなら生徒会に一緒に入れって話なんだけどナ……」

 

 「時間あるときでいいって言われたらわたしも順平も絶対行かないもんね」

 

 ゆかりがため息混じりに言う。本当にその通りなんだよな。桐条先輩には余裕がないとは言ったが、困ってるときに力を貸してくれってのとか、毎週この日だけは来てくれって言うなら参加もしやすかった。活動内容が不透明だとすぐやりますって訳にもな……まあ、湊を通して大変なときは言ってもらって手伝いはしよう。

 

 「まあ、気を取り直して、ラーメンいきましょーか」

 

 「わたし味玉つけよっと」

 

 「僕はチャーシュー」

 

 「あのー……少しは遠慮してネ……?」

 

 どれくらいトッピングが増えていくのか不安になりながら、ラーメン屋へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 「やっぱり久々に食べるとおいしー!」

 

 「油が染みわたる」

 

 「高くついたが、これも学力向上のため……! 来月はテストだしなあ」

 

 ズルズルと麺を啜って食べる。左右に座る二人はレンゲに少しずつ取っては口に運んでいる。

 

 「ゆかりッチもミナっちゃんも綺麗に食べるねぇ。ラーメンは啜ってなんぼだヨ?」

 

 「服に跳ねちゃうじゃない。それになんか恥ずかしいし」

 

 「味わって食べるにはこれが一番」

 

 「そう言うもんかねー……」

 

 女子には女子の事情があるらしい。制服だし良くないかとも思うが、ゆかりはおしゃれだからな。気になるのかな。

 

 「来月のテスト終わったら、絶対に遊ぶぞ…! もうそれだけをモチベーションに頑張るしかないからナ」

 

 「どこに行く?」

 

 「おっ、一緒に遊ぶ? 映画とか行っちゃう?」

 

 なんとなく口に出したが、湊がのってきた。やっぱり目先の目標とご褒美は大事だよな。

 

 「あ、それならわたし、観たいヤツある」

 

 「なになに? ゆかりッチも乗り気じゃん!」

 

 「流石にストレス溜まりそうだし?」

 

 「テスト前のフラストレーションすげぇよな。終わった後の解放感もすごいけどサ」

 

 テスト最終日はクラスメートも全員早々に教室出て遊びに行ってるし。 

 

 「とは言えテストまでずっと勉強ってものしんどいよな……ミナっちゃんってゲームとかやる派?」

 

 「やる派」

 

 「おっ、それじゃあ、やらなくなったオンラインゲームあるからやるよ。息抜きしたいときにやってみナ。んで、面白かったら今度別のゲーム一緒にやろうぜ」

 

 「わかった」

 

 頷く湊に俺は満足げに笑う。いきなり押し付けても迷惑かもしれないし、布教して、肌に合えば一緒にってのが一番引き込みやすいんだよな。

 

 「あ、でも時間忘れてやるなよ? ちゅーどくせいあるからな」

 

 「あ、てか、順平。時間忘れるで思い出したけど、この前みたいな長風呂やめなさいよね」

 

 「あれは男と男の勝負だったからサ」

 

 「むさ苦しい」

 

 「むさっ……!?」

 

 湊の心ない一言に言葉を失う。対話を越えたうえでの魂の勝負をむさ苦しいと言ったか!? ……むさ苦しいか。

 

 「それだけ仲良くなったってことだから……そっちはどうなのサ」

 

 「わたしたちは仲良いよ? ね?」

 

 「仲良しだ」

 

 若干へこみながら、ゆかりと湊に問いかける。

 

 「いや、桐条先輩とだよ。まあ、無理もないけどサ」

 

 「……キライじゃないけどちょっと苦手かも」

 

 「僕は普通に仲良しだ」

 

 「仲良し……?」

 

 湊はいつの間にか交流を深めていたらしい。さすが主人公。侮れない。

 

 「先輩の気持ちは分かるし、理解もするけど強引なところがあるって言うか、こっちの配慮にかけるところがあるって言うか……最初と比べたらかなりマシになったけどね」

 

 「そういや聞けずじまいだったけどさ、ゆかりッチの戦う理由ってなんなのさ」

 

 「気になる」

 

 俺と湊の視線にゆかりは誤魔化すようにラーメンを口に運ぶ。言いたくないって訳ではなさそうなんだけどな。

 

 「わたしが戦うのは、お父さんが死んだ本当の理由を調べるため。何が原因で、何があったのか。お父さんは桐条グループの研究員だったの。だからかな、桐条先輩に強く当たっちゃうのは……」

 

 ゆかりがラーメンのスープを見つめながら言う。飯食いながらする話題じゃなかったかと反省する。場の空気を変えるべくどんぶりを持ち、スープをイッキ飲みする。

 

 「水、水、水!」

 

 「ちょ、ちょっと! いきなりなに!? てかそれ、湊のやつ!」

 

 近くにあった水を一気に飲む。めちゃくちゃ熱かった。喉が焼けそうになった焼けたかもしれない。

 

 「めちゃくちゃあちぃ……」

 

 「気でも狂ったかと思った。バカなの? てかバカなの?」

 

 「驚いた」

 

 「たはは……なんつーか、オレっち暗いの苦手なんだよね。だからさ、頑張ってタルタロス攻略して、早く終わらせようぜ。この戦いをさ。そんで、何があったのか桐条グループの偉い人に聞くんだ。最後は桐条先輩と握手!」

 

 「そんな簡単なわけ無いでしょ……実際、どうなるか分かんないし。なんか羨ましいな。あんたのその底抜けの明るさみたいなの」

 

 「順平らしい」

 

 ゆかりが呆れたように笑い、湊が微笑む。自分から振っといてなんなんだって話だけど、暗い雰囲気は二人に合わない。

 

 「じゃ、早速今日タルタロス行っとく?」

 

 「わたしはいいけど……どうする? 湊」

 

 「行こう」

 

 この日、破竹の勢いで攻略を進め、境界と言われるエリアまでたどり着いたのだった。結局お預けかよ!

 

 

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