気がついたらテレッテでお手上げ侍 作:TTT
間が空いてすみません。これからも不定期更新していきます。
「順平! 起きているか!?」
「はいはい、なんっスかー?」
テスト勉強もほどほどに、そろそろ寝ようかと思っていると部屋の扉が激しくノックされる。何事かと扉を開けると興奮気味な真田先輩が立っていた。
「でたぞ。あの大物のシャドウが!」
「っ!すぐに用意します!」
記憶が曖昧だったが、アルカナのシャドウはテスト前に出現するらしい。慌てて制服に袖を通し、壁に立て掛けてある得物が入ったバットケースを肩にかけて部屋をでる。
「いよいよっスか」
「あぁ、腕がなるな」
少しでも自分の緊張感を和らげようと階段を登りながら真田先輩に声をかけるが血の気の多い返答が返ってくる。
「いやいや! 緊張で心臓がバクバクっスよ!? タルタロスのシャドウなんかとは訳が違うっしょ!?」
「なに、心配するな。いざとなれば守ってやる」
「いざとならないようにしてほしいんスけど……」
会話もそこそこに作戦室へと入ると、すでに湊とゆかり、桐条先輩がいた。
「お疲れ様」
「遅いわよ、順平!」
「いや、呼ばれたの最後でしょ、オレってば……」
二人の顔を見て、少し落ち着く。
「なに? ジロジロみて」
「いや、結構緊張してんだけど、二人をみてたら少し落ち着くっつーか……」
「……なにそれ」
ゆかりが毒気が抜かれたようにそっぽを向く。それをみていた湊がこちらへ寄ってくる。
「ってなに? ミナっちゃん」
「もっとみてくれて良い」
「……相変わらずだねぇ。いまはその感じがすげぇ助かるけどサ」
いつもの突拍子のない行動に余分な力が抜ける。うん。もう大丈夫。
「っし! じゃあ、気合い入れていきますか!」
両手で頬を叩き、気合いを入れる。
「何か声をかけるべきかとも思っていたのだが、余計な心配だったようだな。まだ特定はできていないが、おそらく例の大物がタルタロスの外に出現した。影時間は一般の者にとっては『ない』ものだ。建物が破壊されたりすれば矛盾が生じる。タルタロスの外に出たシャドウをそのままにすることはできない」
「まあ、要は倒さなきゃいけないってことっしょ? 大丈夫っスよ。オレ、マジやるっスから!」
「無理しちゃってさ」
「む、無理ちゃうわ!」
精一杯に強がってみるが、隣のゆかりに呆れられる。男の子の意地なのに……
「一人じゃない」
「そうそう。別に順平一人で戦う訳じゃないんだからさ。もっと、頼りなよね」
「……そうだな! オレたちマジやるっスよ! 桐条センパイ!」
「ふっ、頼もしいな。それに、私も全力でバックアップする。前線には明彦もいる。存分に頼ってくれ」
「ベテランの力を見せてやるさ。今回は前衛をはる」
俺達は顔をあわせ頷く。もう緊張感はなくなっていた。
「うへぇ……たけぇ……下から風が吹き抜ける感覚ってこんな感じなのか」
「普通は線路の上なんて歩かないもんね」
「下は海だから尚更涼しい」
「これを涼しいで片付けるとは……やはり有里は大物だな」
シャドウの反応がある列車へ向かうため線路を歩いているのだがお世辞にも歩きやすいとは言えない。
「なんでこんな面倒なところにいるんですかねぇ、ホント」
「知らないわよ。口より足を動かしなさいよ」
「オレっちから喋りをとったら魅力半減どころの騒ぎじゃないっしょ?」
「見えてきたな。あのモノレールだろう」
軽口を叩きながらも歩みを進め、目的のモノレールへとたどり着く。
『みんな、聞こえるか。シャドウの反応は間違いなくその列車から出ている。心して中にはいってくれ』
「「「「了解!」」」」
桐条先輩の通信に全員が声を揃える。列車の中にはいるには梯子をつかってドアの方へ行かなければならないらしい。
それまで前を進んでいたゆかりは梯子の前で急に立ち止まる。そして何を考えたのか俺の後ろへと下がる。
「え、なに? どしたの? ゆかりっち」
「順平、あんたが先に登りなさいよ」
俺の言葉にゆかりは心なしか顔を赤らめながら言う。どうやら危険があるかもしれないことに思い至ったらしい。そしてゆかりの性格から考えて、その事が恥ずかしいのだろう。
「なになに? ひょっとして怖い感じ? よっしゃ! ここはこの男、順平に一番槍を任せてもらおうじゃないの! 安全が確認できたら呼ぶから、登ってきてネ」
ウインクしてからカンカンと音を立てながら梯子を登る。なんやかんや言っててもゆかりも女の子なんだな。
「存外鈍いな。まあ、順平らしいが」
「ん? 何がっスか?」
「気にするな。俺も一緒に行こう。警戒は怠るなよ」
「流石にここで気は抜かないし抜けないっスよ……」
周囲を警戒しながら車内を見渡すと、座席に棺桶が並んでいる光景が目に飛び込んでくる。異質の一言に尽きる。
「なんつーか、凄い光景っスよね。とりあえず危険はなさそうかな? ミナっちゃんとゆかりっちも上がってきてくれて大丈夫!」
「俺はすっかり見慣れてしまった。こんなもの、早く消し去らなければな……」
「そのためにも、シャドウは倒さなくては」
「同感。こんな光景、見慣れたくないし」
真田先輩の言葉に車内に入ってきた湊とゆかりが続く。それと同時にモノレールのドアが閉まる。
「ウソっ!?」
「マジかよ!」
慌てて俺とゆかりがドアの扉に向かうが閉まった扉はびくともしなかった。
「閉じ込められたか」
「やることは変わらない」
「わかってるじゃないか、有里。ここのシャドウを倒して、堂々と外にでるとしよう」
扉の前で呆然とする俺たちを置いて、真田先輩と湊が先に進む。
「肝が据わりすぎっしょ!?」
「ちょっ、ちょっとまってってばー!」
俺とゆかりは慌てて二人を追うのだった。