気がついたらテレッテでお手上げ侍   作:TTT

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俺の日常

 

 「いったぞー!」

 

 「マイボマイボ!」

 

 「ジュンペー、それバスケでしか聞いたことねぇぞ!」

 

 今日も今日とてグラウンドで野球に打ち込む。コーチのノックを華麗に捌く。周りを盛り上げるのも忘れない。人気者に必要なコツなんだよね。

 

 「ヘヘッ、どっすか、先輩! このままスタメンも狙ってきますよ!」

 

 「バカやろう! ジュンペーがスタメンなんて半年早いわ!」

 

 「負け認めてるじゃん、お前」

 

 練習終わりのストレッチをしながら先輩二人と駄弁る。

 

 「そういや、今日はあの子来てないのか?」

 

 「ミナっちゃんっすか? タイミングが会うときに一緒に駅まで帰ってるだけっすよ」

 

 「え、マジで? この前、わざわざ学校に戻ってきてたぞ?」

 

 「それこそ意味わかんないじゃないっすか。ただのクラスメイトっすよ? 一緒に帰るときも一方的にオレが話してる感じですし」

 

 流石にゲームじゃないから割りと自由に動きまわるとはいえ、一度他のやつと帰ったのにわざわざ戻ってくる意味もないし、まだそんなに仲良くなったっていう感覚もないし。

 

 「そりゃ、お前……アレだろ」

 

 「アレだな」

 

 「アレ……っすか?」

 

 先輩二人がニヤニヤしながらこっちを見てくる。浮わついた話ってのはいつの時代も盛り上がる。今の俺らみたいな高校は特に。

 

 「まあ、オレってばモテるんでね! と言いたいところなんすけど、やっぱないっすね。転校してきて日が浅いし、書類でも持ってきたんじゃないっすか?」

 

 「まあ、ジュンペーだしな。それもそうか」

 

 「最速1日でフラれたのは記憶に新しいしな」

 

 「ちょっ、それはいわない約束でしょ!?」

 

 モテはするんだが、野球部補正がほとんどらしく、なんか思ったのと違うと言われてフラれるのを繰り返すこと3回。最速の1日でフラれた偉業は野球部で話題になった。2年になった今年はお互いにいい記憶で終わるために告白は全て断ろうと心に決めた。

 

 「ジュンペーは今日も自主練か?」

 

 「まあ、親父があんなんで家帰りにくいんでね……今日も今日とて日付が変わってから帰りますよ」

 

 「飯とか大丈夫なのか?」

 

 「もうずっとコンビニ飯っすね。母さんが出てく前に残してくれてた残高もこのまま行くと卒業までは持たないんでどっかでバイトしなきゃっすかねぇ」

 

 「大変だよなあ……まあ、今度ラーメンでも奢ってやるよ」

 

 「あざーす! ゴチでーす!」

 

 先輩から若干の同情と親愛を感じる。俺が主人公だったらコミュニティが発生していたかもしれない。身内には恵まれてはいないが周りの人には恵まれているのかもしれないなと感じた。

 

 

 

 

 

 「お疲れ様」

 

 「おっとと! なになに、差し入れ? サンキュー!」

 

 部活が終わり自主練のために神社へ向かおうと学園の校門を出ようとしたところで後ろから声をかけられ、なにかを放り投げられる。慌ててキャッチして視線を移せばそれは缶ジュースだった。

 

 「これから帰り?」

 

 まったく気配を感じなかったが、いつからかいたのか湊が立っていた。基本的に最小限の単語で会話してくるので意図を読み取りにくい。わざわざ声をかけてきたってことは、一緒に帰りたいのかな。

 

 「自主練しに神社に向かうとこ。健全な高校球児ですから。自己鍛練は欠かせないってワケ。そういうミナっちゃんも今から帰り? また駅までご一緒しようかなー?」

 

 「よろしく」

 

 「ほいさ。んじゃ、行こうぜ。日が暮れちまったら素振りくらいしかできなくなっちまう」

 

 湊は相変わらずの無表情。そのまま俺の横を歩き出す。なんとなくいい匂いがした。

 

 「あー……っと、運動終わりで汗臭いんであんまり近く歩かなくていいぜ。男の汗の臭いなんて不快だろ? 程よい距離感でいきましょーってことで」

 

 「別に気にしない」

 

 湊は本当になんとも思ってないようにそう言って、変わらず俺の横を歩く。いや、こっちが気にするんだよ。何かあったときにあのときあいつ臭かったなって思われたくないじゃん。

 

 「気にしないってことは臭いはするって事じゃんか。こっちが気にするんで離れて離れて! オレってばフローラルないい香りがする系男子目指してるんで。いや、特になにもしてないんだけどネ? 香水とか高ぇし、運動すると混ざってよりひどい感じになりそうだし。あー、でも休日とかならアリか? やっぱ、いい匂いのする男の方が好みだったりする?」

 

 「どうでもいい」

 

 「はい、まったく興味なしっ!」

 

 伝家の宝刀『どうでもいい』が炸裂した。日常系の会話は割りとバッサリ切られがちである。なにに興味あるんだ、この子。

 

 「まあ、とはいえオレたち学生だしサ。浮いた腫れたの話の1つあってもバチなんて当たらないじゃない? クラスに興味あるやつとかいないワケ?」

 

 「どうでもいい」

 

 「再放送ーーーっ! あれか!? 空気詠み人知らずか!?」

 

 「…………」

 

 のれんに腕押しとはまさにこの事で心底どうでもいいらしい。しかし、俺のオーバーリアクションに湊は真面目に考え込んでしまった。

 

 「あー……いや、そんなマジに考え込むことでもないんですけどネ? 世間話みたいなモンだからさ。一方的に会話のボール投げ続けるのもなんかなーって思っただけだからサ」

 

 「強いていえばジュンペー」

 

 「強いてないよ!? てか、オレ!?」

 

 「最初に話しかけてきたから」

 

 「雛鳥の刷り込みかよ……それはそれとして嬉しくはあるんで、ジュンペーポイントを1つプレゼント! 10ポイント貯まればオレっちとデートできます! 要らない? あ、そう……」

 

 割りと好印象であったことに気分をよくしつつ俺たちは駅へと向かって歩くのだった。

 

 

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