ユグドラルにアリティアの元剣闘士をブチ込んだ話   作:塩焼きそば啜郎

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三章 帝国再臨
マディノの雷鳴


シグルドがアグスティ城に留まって半年が過ぎ、ディアドラとの子、セリスも無事に生まれた。めっちゃ可愛い。……だがある日、聞きたくなかった知らせが届く事となる。

 

「何!?オイフェ、本当か!」

「はい!シャガール王の軍が、我々を包囲しています!現在判明しているのは、北と東から重騎士団が、北からは更に弓騎士団も出撃したそうです」

「くっ、もうすぐで国に帰れると言うのに……」

「その上、混乱に乗じてオーガヒルの海賊も動き出しました」

「……こちらも、出撃するしかないようだ……」

「あなた、また戦いなのですか……」

「すまない、ディアドラ。だが今回は君を連れて行く事は出来ない。セリスを放っておく訳にはいかないしね」

「はい……」

「そう不安そうな顔をするな。すぐに戻ると約束しよう」

「シグルド様……」

 

シグルドは全員に告げた。

 

「みんな、よく聞いてくれ。恐らく敵の勢力が最も集中しているのは北だ。私達は一部の騎士を東西に行かせ、東西それぞれの部隊を撃破した後、集合してマディノ城を叩く!」

 

東の重騎士団はレックスが、そしてノイッシュとアレクがレックスについていき、二人一組で村を回って行き海賊を撃破する。西にも敵はいるだろうから、そこはガンドルフ達に任せる事にした。中央の平原に残りの勢力を全て投入する。西はシルベールがあるから、あまり近付いてはいけないとガンドルフはきつく言われた。

 

「よし、全軍出撃!」

 

シグルドの声で、俺達は城を出る。城の守備は最低限。元々包囲されているから、各隊がどれか一つでも突破されればその時点で負けなのだ。シグルド達について行っていると、前方から重騎士と弓騎士が出て来た。

 

「一気に詰めるぞ!」

 

ここでもたもたしている暇は無い。俺も遅れずに敵の懐に潜り込んだ。

 

 

 

レックス、ノイッシュ、アレクの三人は、敵の重騎士団と対峙していた。レックスは前回までの戦いでの功績が認められ、アクスナイトからグレートナイトへと昇格している。

 

「よし、チャッチャと撃破してシグルド公子の所に戻るか。お前らは村の解放を頼むぜ」

「任せて下さい」

 

レックスは馬を走らせる。斧を持っているとは思えない速度で、重騎士団の周りを駆け巡った。接近しては斧を振り下ろし、即座に撃破して離脱。それを繰り返し、難なく隊長をも撃破した。

 

「おいおい、俺より速いんじゃないか?」

「おちゃらけているが、あれでもネールの系譜の方だからな……」

「聞こえてるぜ!」

 

ノイッシュとアレクは急いで村に馬を向かわせる。レックスはやれやれと溜息を吐きながらシグルド達に合流しにいった。

 

 

 

「おいおい、敵なんているか?」

 

ガンドルフ達は、シルベールへと続く道を歩いていた。歩兵ゆえ、あまり深く進むとまずいという事で慎重に軍を進めていた。と、そこで遂に敵が出現する。

 

「……!あれか!てめぇら構えろ!相手は槍持ちだ。たたっ斬ってやれ!」

 

ガンドルフは獲物を見つけたとばかりに走り出す。兵士達も慣れ(諦め)たのか、機動力で上回る騎兵に突撃するとなっても文句を言う者は現れなかった。

手斧と鋼の斧を両手に持ったガンドルフを先頭に、隊は素早く横に広がって行く。

 

「今だ、投げろ!」

 

その合図で、ヴェルダン兵は一斉に手斧を投げた。騎兵は思わず馬足を緩めるが、何人かが手斧の餌食となった。そして部隊が崩れた所にヴェルダン兵が入り込む。近接戦となれば槍は斧の敵では無い。あっという間に部隊を分断され、残党も撃破されて行った。

 

「ようし終わったな!シグルドの所に戻るぞ」

 

こうして、西の戦闘も終わりを告げた。因みにガンドルフは知らず知らずの内にシルベールのすぐそこまで来ていた。エルトシャンが兵士達に命令しなければクロスナイツの餌食になっていただろう。

 

 

 

「アイラ、その剣はどうした?」

「これか。さっきレックスから貰ったんだ」

「レックスが?」

「サムソン、どうした?」

「ホリンか。この剣はなんて言うんだ?」

「これは勇者の剣だな。よくこんな代物を持っていたな」

「レックスに貰った。しかし妙な奴だ、斧使いのくせして剣を持つとは……」

 

あいつ、もしやアイラに惚れてるな?(名推理)まぁ暖かく見守って行くとしよう。今は眼前の敵を倒す事に集中だ。

 

「早速か」

 

新たな剣を手に入れたアイラの前には、鈍重な重騎士など敵では無い。あらゆる攻撃をかわし、次々と敵を斬り裂いて行った。後方から弓騎士の援護が来るが、ジャムカ隊がそれを牽制、残りの全軍が突撃する事でこれも撃破。残りはマディノ城の守備隊だけになった。

 

「シグルドの旦那、後は俺達に任せてくれ」

「ヴォルツ、どうしたんだ?」

「情報によればあのマディノ城を守ってる奴はジャコバンという奴でな。ちょいと付き合いがあるのさ。あれくらいの守備隊なら俺達だけでも突破は出来るしよ」

「……分かった。だが危険になったらすぐに戻って来るんだ」

「安心しとけよ」

「よし、では私達はアグスティ城に帰還するぞ」

 

俺達は反転してアグスティ城に向かい始めた。ヴォルツの奴、自信ありありだな。まぁ実際それに見合った実力があるしね。ャあいつの事だ、負けそうになったら一目散に逃げ出すだろう。

途中でファイアマージの部隊に襲撃されたが、これも難なく撃破。俺達はアグスティ城を眼前に捉えた。

 

 

 

ヴォルツの傭兵軍団は少数勢力だが、一人一人が数多の戦場を駆け抜けた歴戦の猛者である。彼らの前には守備隊など意味を成さず、あっという間に残るは剣士ジャコバン一人だけとなった。

 

「ようジャコバン!」

「……ヴォルツか。お前達はアンフォニーのマクベス王に雇われていた筈だが?」

「へっ、あんなとこはもう御免だぜ。さて、話はこのくらいでいいか?」

「うむ。今日こそ貴様の脳天に我が雷を落としてやろう」

「その生意気な口、首ごとぶっ飛ばしてやるぜ。お前ら!ここからは俺一人でやる。お前らは奥の村の救出でもしておけ」

「頼んだぜ!」

 

ベオウルフを筆頭とした傭兵軍団は、城の脇を通って村に向かった。ヴォルツとジャコバンが向かい合う。

 

「行くぞ!」

 

ヴォルツが馬を走らせる。ジャコバンが雷の剣のエルサンダーを放つが、それを巧みにかわしながら接近した。

 

「ちょこまかと……」

「喰らえ!」

 

振り下ろされた大剣を、雷の剣で受け止める。威力はヴォルツが上だが、手数はジャコバンの方が上回る。四方からの剣撃で、ヴォルツの動きを固める。

 

(このまま一気にエルサンダーで決着!)

 

ヴォルツの動きが鈍くなった所で、ジャコバンは密かに溜めていた魔力を一気に解放する。その刀身が眩く光った。そしてヴォルツの上空から巨大な雷が降り注ぐ。

 

「死ね!」

「……分かってるんだよ!」

「何!?」

 

ヴォルツはまるで予想していたかのように最小限の動きで落雷をかわし、ジャコバンに大剣を叩きつけた。雷の剣が地面に落ち、ジャコバンは倒れる。

 

「一体どれだけお前と戦って来たと思ってるんだ?」

「……くっ、俺も焼きが回ったか……」 

「これで終わりだな」

「ヴォルツよ……俺の雷の剣を持っていけ。この剣はまだ使える……俺と一緒に果てるよりは良かろう」

「…………そうかい。なら遠慮無く使わせて貰うぜ」

 

ヴォルツは雷の剣を拾う。

 

「……あばよ、剣士ジャコバン」

 

その一言を残し、ヴォルツはマディノ城を出た。




シャガール……しぶとい。前回アイラに滅多斬りにされたのに重傷で済んだ。

ジャコバン……ヴォルツとライバルの名を馳せた傭兵。雷の剣を操る剣士。僕はジャコバン派です(半ギレ)
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