ユグドラルにアリティアの元剣闘士をブチ込んだ話   作:塩焼きそば啜郎

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オーガヒルの悪夢

俺達は平原を通り抜け、マディノ城に到着した。だが気は抜けない。ハイライン騎士団が足止めしているとは言え、いつ大軍が攻めて来るかも分からないからだ。シグルドもどうするか考え込んでいる。

 

「……そうだ、クロード様とティルテュは無事だろうか」

「確かお二人はブラギの塔へ……」

「シグルド公子、クロード神父は何者なのだ?」

「サムソンはエッダ公爵家を知らなかったな。クロード様は大司祭ブラギの末裔なんだ。だから、クロード様のみがブラギの塔で真実を知る事が出来る」

「そんな大物だったか……」

 

やっべぇ、俺めちゃくちゃ不敬な事しちゃったじゃん(手遅れ)むしろ手を強く握りしめられただけで済んだ事に感謝するべきか。とにかく今は二人と合流する事が大切だと思うが……。

 

「シグルド様!」

「アレク!?」

「オーガヒル島で、海賊と謎の軍隊との戦闘が起きています。ですが海賊は防戦一方のようで……」

「これも仕組まれた物なのか……!?」

「恐らく。マディノに行く途中で海賊に邪魔されたという所でしょう」

「クロード様とティルテュが危ない!今すぐにオーガヒルへ橋をかけてくれ。その軍隊を撃破する!」

 

シグルドの意見はシャガールやエルトシャンにも通された。二人もこのままじゃ挟み撃ちにされるとこれを承諾。こうしてマディノを捨て、全軍でオーガヒル島に進軍した。

 

 

 

「あそこが戦場か……急ぐぞ!」

 

シグルドとエルトシャンが先頭に立ち、騎馬兵達が後に続く。後続の歩兵はシャガールを中心に騎兵に着いていく形となった。戦場に近付くにつれて、敵がはっきりと見えてくる。敵は重騎士中心に魔導士がちらほら。だがどこの軍までかはもっと近付かないと分からないな。

 

「サムソン殿」

「ロレンス将軍。どうされた?」

「はっきりとは言えぬが……何か嫌な予感がする。先程から不安でならないのだ……」

「貴方程の方がそこまでとは……だが戦わねば未来はありません」 

「ですな。まだ運命は儂を戦争から離してくれないらしい」

 

そんな話をしながら、俺達は着々と近付いては行く。シグルドはもう海賊と合流しそうだ。

 

「ちっ!後ろからも敵とはね!」

 

海賊の頭らしき女性が弓を構えた。シグルドは止まって叫ぶ。

 

「待ってくれ!我々は敵では無い!今我々の後ろからも別の敵が迫って来ている。このままでは挟み撃ちにされるぞ!」

「私にどうしろってんだい!?」

「君はブリギットだろう。村の人々から聞いている。私はシグルド。ここは共に戦ってくれないか」

「……どうやらそうするしか無いみたいだね。お前達、援軍のご到着だ!今はこの騎士達と共闘だよ!」

「ありがとう。よし、全軍突撃せよ!」

「シグルドばかりに良い格好をさせる訳にもいかん。クロスナイツ、突撃するぞ!」

「歩兵部隊も出撃せよ!儂に続け!」

 

シグルド、エルトシャン、シャガールが出撃を命じる。よし、傭兵らしく働きますか。

 

「相手はボロ布を纏った魔導士共だ!斧で引き裂いてやれ!!」

「全く兄貴は……」

 

ガンドルフも敵に向かって行った。

 

「アイラ、ホリン、行くぞ!」

「任せろ!」

「久々に月光剣のお披露目と行くか」

 

俺も戦場に加わる。敵の放つサンダーをかわして銀の剣を叩き込んだ。シグルド達の方を見ると、重騎士の防御に攻めあぐねているようだ。エルトシャンもミストルティンを振るうが、それ以上に魔導士の攻撃が激しい。

 

「サムソン!」

「すまない!」

 

背後の敵を、ホリンが斬る。アイラも斬鉄の剣を大いに振るっていた。だがきりが無いな。相当数が多い。

 

「サムソン、無事か!」

「キュアン王子!……なんだその槍!?」

「これは地槍ゲイボルグ。私は槍騎士ノヴァの直系だ」

「神々の子孫多すぎないか!?」

「そうだな。ブリギットも弓騎士ウルの直系だと言うしな」

「……」

 

ブリギットは厳つい弓で敵を貫いていた。いつの間に手に入れたんだよそれ。

 

「……考えないでおこう。心強い事には変わりないしな」

「うむ。行くぞ!」

「あぁ!」

 

キュアンの援護により、敵軍に少しづつ穴が開き始めた。弓兵達の援護もあり、重騎士を撃破、それに守られていた魔導士も撃破していく。シグルドと合流も出来た。

 

「クロード様は!?」

「見てないな」

「クロード様なら、私達に保護されています」

「……ブリギット?なんだその口調は?」

「妹のエーディンからイチイバルの弓を渡された時、記憶が蘇ったのです」

「お姉様は小さい頃海賊に連れ去られました。ずっと探していたのです」

「そういう事か……」

 

一つの謎が解けた所で、シャガールの重騎士団も合流する。凄いな、防御力に物を言わせて南の敵軍を一層したようだ。流石アーマー、なんともなさそう。

 

「ふぅ、やっと終わったか」

「さて、後はあの船だけですな。陛下」

 

俺達は西の海岸に停まっている帆船を見た。遠くにあるが、かなり大きな船だ。貿易船よりも少し大きい。

 

「シグルド公子、攻めるなら今だ。敵の補給が済まない内に大将を撃破するのが良いだろう」

「そうだな。キュアン、エルトシャン、準備は出来ているか?」

「私は出来ているぞ、シグルド」

「クロスナイツも集まった。いつでも行ける」

「フン、船上の残党なぞ儂一人で全滅させてやるわ!」

「それは心強い。全軍あの船へ……」

 

 

「その必要は無いの」

 

 

「……!?」

 

その声を聞いた瞬間、俺の背筋に悪寒が走った。この薄暗く、それでいてドス黒い声……俺は信じたく無かった。だから、シグルドをどかしてまで思わず先頭に出て行った。

 

「サムソン、何を!?」

「……嘘だ……そんなまさか……」

 

黒いローブはここでは見られない、アカネイアの魔導士の物だった。生気が感じられない肌の奥から覗く目は、怒りに燃えているようだった。

 

「お主らはここで……儂のマフーに殺されると予言しよう」

「ガーネフ!!」

「お主は確か……サムソンだったか。かつては四人組の勇者で儂に挑んで来たが、今は一人か?」

「シグルド公子、逃げるんだ!殺されるぞ!」

 

魔王ガーネフ。俺が二度と見たくなかった存在。今俺達に出来る事は、逃げる事だけだ。

 

「そのマフーがなんだと言うのだ。我がミストルティンは、全てを切り裂く!」

「止めろ、エルトシャン王!」

 

エルトシャンは俺が止める前に、ガーネフへと向かって行く。そしてミストルティンを振り上げようとした時。

 

「!?う、動かん……」

「これが死者を操るマフーの力。そして死ね!」

 

数多のおぞましい霊魂が、エルトシャンの体を包んでいく。その衝撃でエルトシャンは後方に吹き飛ばされた。

 

「うぐ……」

「エルトシャン!」

「ほう、マフーを耐えるか……そのミストルティンとやらの力かの」

「陛下……お逃げを……!」

「くっ、しっかりしろ、エルトシャン!全軍後退せよ!距離を取るんだ!」

 

俺達は急いで後退し始める。シャガールの重騎士団はガーネフから離れていたが、グランベル軍は最前線。マフーの射程に入れば良くて重傷、悪くて即死だ。

 

「少し決断が遅かったの。まずは貴様からだ!」

「なっ!」

 

その牙にかかったのは、アイラだった。無防備に背中を向けるアイラに、霊魂が迫る。

 

「アイラーッ!!」

 

だがその背をどけた者がいた。

 

「……ホリン!?」

「ぐああぁっ!!」

 

ホリンはマフーの直撃を受け、その場に倒れる。

 

「ホリン!……いや、まだ生きている……サムソン!急いでエーディンの下に!」

「分かった!」

「なんと!しぶとい者共よの」

 

ガーネフも驚いていたが、俺にはどうでもいい。俺はホリンの肩を持ってアイラと走り始めた。これならなんとかガーネフの射程距離外に脱出出来る筈だ。

 

「フフフ……逃げても反乱軍にすり潰されるだけ。いずれお主らは死ぬ運命よ」

 

そう笑いながら、ガーネフはワープで消えて行った。その事に気付いたのは、俺とアイラが逃げ終わった後だった。




ガーネフ……マフーおじさん。僕は二部でチキで引き付けてから倒してワープで制圧してました。

ホリン……マフーからアイラを庇い、重傷を負って昏睡状態に。
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