ユグドラルにアリティアの元剣闘士をブチ込んだ話   作:塩焼きそば啜郎

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前回までのあらすじ……デマジオが手槍の犠牲になった。南無三。


エバンス城からの刺客

俺達は奪還したユングヴィ城で合流したレックスとアゼルと共に一旦の休息をとっていた。まぁこの城にエーディン公女はいなかったから、すぐに出発する事になるが。すると、一人の兵士がシグルドに駆け寄った。

 

「シグルド様、この先の川に橋が架けられエバンス城からヴェルダン兵が出撃しました!」

「付近の村は!?」

「安心してくれ、シグルド公子。俺達が村門を閉めてきた」

「ありがとう、レックス、アゼル。よしみんな、出撃するぞ!」

 

皆が急いで出撃準備を整え始める。エバンス城にもいなかったらいよいよヴェルダン王国に乗り込む事になるが……あそこ森しか無いんだよな。地図を見た時は驚いたわ。……さて、俺も出撃しますかね。

 

「私に続け!」

 

シグルドの白馬を先頭に、何頭もの馬が草原を疾走する。対する歩兵組は……

 

「アゼル!走れぇーっ!おいていかれるぞ!」

「歩兵に厳しい……!」

「アーダン、守備は任せたァ!」

 

後ろを必死に着いてくるアゼルに激励する。遠くなった城に向かって呼びかけると、アーダンが手を振り返してくれた。先の戦いの疲れもあり、馬には乗せられないのは分かる。分かるのだが。

 

「騎兵率高くないか!?」

 

おかしいだろ!マルス王子のアリティア軍でも歩兵率はもうちょっと高かったぞ!?なんて事を考えていると、先を行くシグルド達の遥か先、橋を超えてきたヴェルダン兵達の所から巨大な火柱が上がった。天を突き破る程に高く上がったそれは、ゆっくりと消滅していく。

 

「あれは……」

「心当たりがあるのか、アゼル」

「多分、兄だと思います。でもなんで……」

「無断でこの軍に加わったのか?」

「はい。兄には王都バーハラを離れるなと言われていたのですが……」

「……そこは私が首を突っ込む問題では無い。ともかく急ぐぞ、アゼル」

「はい!」

 

しばらく走り続けて着いた時には既に炎は消え去り、焼け焦げた地面のみが広がっていた。

 

「シグルド公子。何があったのだ?」

「先程、ヴェルトマー家のアルヴィス卿が来られた。陛下から様子を見られるように命じられたようだ」

「そういう事だったのか……所であの火柱は?」

「恐らく、神器の一つ、ファラフレイムだろう。初めて見たが、恐るべき力だ……」

「神器……」

 

めっちゃ強くね?(恐怖)え、アカネイアでは炎属性最強のボルガノンでさえもこんな威力は無かったぞ?インフレ凄くね?

 

「ともかく、敵は一掃されたな。これよりエバンス城に突撃する!」

 

神器の威力にビビりながらも、俺は再び走り出した。

 

 

 

 

「……」

「えぇ……」

 

城門前のヴェルダン兵を撃破し、エバンス城に突入してから僅か数分後。俺達は絶句して立ち尽くしていた。少し時間を遡ろう。

 

 

 

城に入ってしばらくすると、一人のヴェルダン兵が出て来た。多分こいつがリーダーだろう。

 

「ちぃ、デマジオの奴、ガンドルフ王子からユングヴィを任せられたってのに使えねぇ野郎だ!」

「長い台詞だな。遺言はそれで良いか?」

「けっ、グランベルの腰抜け共め、なんか顔が似ている奴がいるがまぁいい、死ねぇ!!」

 

その瞬間、手斧が勢いよく放たれる。シグルドはそれを難なくかわしたが、問題はその後だった。

 

ドガッ!

 

「あっ」

「えっ……」

 

放たれた手斧は城の壁に突き刺さり、抜けなくなった。一瞬の静寂が訪れた後、シグルドが俺をちらっと見た。俺は迷わず首を縦に振る。

 

「……突撃ーッ!!」

 

その言葉と同時に、誰もが思っただろう。

 

(((((狭い所で投げたらそりゃそうなるよね!!)))))

 

因みに手斧はレックスが貰った。良かったね、レックス。そして残った敵を片付け、今に至る。

 

「なんという……あっけなさ……」

「拍子抜けだな……」

「油断させる為の作戦か何かか?」

 

シアルフィとドズルとレンスターのお偉いさんが三者三様の反応を見ている所に届いた知らせは、あまり良いとは言えない物だった。この城にエーディンはいないらしい。

 

「こうなったら、ヴェルダンに攻め入るしかあるまい……」

「シグルド様、バーハラから国王の使者が来られました」

「シグルド殿、この度の戦い見事でありました。国王もいたく喜ばれ、そなたに王国聖騎士の称号を下だされた。……はて、そちらのお方は……」

「……丁度良い、全員集まっているようだし、少し自己紹介の時間を貰いたい。よろしいか?シグルド公子」

「あぁ」

「感謝する。改めて、私の名はサムソン。一ヶ月前にシアルフィに越してきた者だ」

「サムソン殿、そなたは一体どこから?」

「……アカネイア大陸のアリティアからだ」

「アカネイア!ってぇと……」

「暗黒戦争に、英雄戦争。二つの戦乱があった大陸か……」

 

レックスとアレクがそれぞれ言う。その認識で間違いないだろう。

 

「私は二つの戦争にどちらとも参加した。一時期は違ったが、アリティア騎士団の所属だ」

「おお、アリティアと言うと、あの英雄王マルスの……」

「うむ。彼も大変なものだ、まだ二十にもなっていないのに英雄と持ち上げられている」

「サムソンも騎士団の生まれなのか?」

「いや、俺は元は剣闘士だ。アリティアの村に身を置いていた時にマルス王子と出会った」

「……」

「なんだアゼル」

「いえ、アカネイア出身なのに何故そんなに似ているのかと……」

 

そこかよ。まぁ似てるのは否定しない。実際キュアンには間違えられたからな。間違えるか普通?服装だいぶ違うぞ。

 

「シグルド公子、ちょっとこちらへ」

「なんだ?」

「サムソンも来てくれ」

 

アレクとキュアンに呼ばれ、俺とシグルドが並んで立つ。ノイッシュと使者の爺さんはなんだかまずそうな顔をしていた。苦労人なんだろうな、あの二人は。

 

「…………感想は?」

「「「「「めっちゃ似てる」」」」」

 

 

 

結論:めっちゃ似てた。




因みにここではグラン暦757年と英雄戦争終結はほぼ同時期という事になっています。その為ユグドラルの紀元前が1000年ほど伸びました。

レックス……ドズルのいい男。やはりアレクと同様にシグルド、サムソン双子説を疑う。

アゼル……アルヴィス卿の弟。レックスに付いていく為に走り続けている為、顔は幼いが下半身から下がまぁまぁゴツい。

アーダン……三拍子揃った男。中々出撃させて貰えない。不遇。

アルヴィス……シグルドと話している最中サムソンを見かけて吹きそうになったが我慢した。偉いぞ貴族。

使者……キャッキャキャッキャとはしゃぐ若者達を見て憧れを抱いた。
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