ユグドラルにアリティアの元剣闘士をブチ込んだ話 作:塩焼きそば啜郎
サムソンが戦場から離脱した後、戦況は僅かにグランベル軍に傾いて来ていた。元々士気が低かったザクソン軍をレイミアの強さが纏め上げていたからである。
そのレイミアが戦死したのでは、士気は下がり続ける一方だった。唯一健在なのは、パメラ隊だけだった。だがそれでも依然として風魔導士のブリザードは激しい。
「エルトシャン様が敵将を討ち取ったぞ!」
「エルトシャン様に続け!」
グランベル軍に朗報がもたらされたのは、その時だった。風魔導士部隊の大将がエルトシャンによって討ち取られたのだ。
「残るは傭兵部隊と天馬騎士団のみだ!我々はザクソン城を叩くぞ!」
エルトシャンはクロスナイツを集合させ、ザクソン城へと進軍し始めた。
一方、空中では未だに激しい戦闘が繰り広げられていた。フュリーの剣とパメラの槍が激突する。一対一なら互角だったが、そこにフュリーも加わるとなるとパメラにとってはいささか分が悪かった。
「クソッ!こんな筈では……」
「要らぬ野心を持った末路よ、パメラ!」
二人の猛攻を受けながらも、パメラは何とかそれを凌いでいく。だが凌ぐのが精一杯で、それ以外に気を配るのは不可能だった。
「……ッ!?」
パメラの背中に矢が突き刺さる。風魔導士部隊のブリザードが弱まった事により、地上からでも空中のパメラを狙い撃つ事が可能になった。
「今だ!総員矢を放て!」
ジャムカが弓兵達に命じる。パメラは放たれた二撃目と三撃目をもろに喰らい、天馬から落馬する。
だがそれを、マーニャが防いだ。パメラの下に回り込み、その体を受け止めて支える。
「姉様!?」
「いいのよ、フュリー。……敵とは言え、貴方も共に修行した身。最期は私が看取ってあげます」
「…………相変わらず……甘い奴……」
それを最後に、パメラの体から力が抜ける。マーニャはゆっくりと地上へ降りると、雪原の上にパメラを置いた。
「必ず埋葬するわ……だから今は待ってて頂戴」
マーニャはその場を後にし、再び空に舞って行った。天馬騎士団の団長も討たれた事で、ザクソン軍の士気は更に低下していく。
「みんな、ここが正念場だ!一気に突っ切ってザクソン城を叩く!」
シグルドは銀の剣を掲げ、仲間に叫ぶ。グランベル軍はそれに呼応するかのように次々と傭兵部隊の残兵を倒して行った。やがて、戦場に吹き荒れていたブリザードも止んで、先が見えてくる。
「シグルド様!クロスナイツが既にザクソン城に進撃した模様です」
「エルトシャンがか。なら、私達も遅れをとる訳にはいかないな。ノイッシュ!みんなを集めて来てくれ」
「はい!」
シグルドは周りの敵を片付けながらも、周囲にいた仲間に集合を促した。そして徐々に集まって来たグランベル軍を見て、違和感を覚える。
「……サムソンがいない……」
「すまない、シグルド。サムソンはレイミアとの戦いで負傷し、後方にいる」
「サムソン程の者が……分かった、ありがとう。アイラ。……私達もクロスナイツに続き、ザクソン城に向かうぞ!」
シグルドの号令で、グランベル軍が動き出す。ガンドルフは移動と戦いの連続で必死だった。
「畜生、ヴェルダンではこんなに動く事は無かったのによぉ!」
「俺達、森からの奇襲しかしてなかったですもんね」
「ついてくしか無いぜ、兄貴!」
「んなもん分かってらぁ!」
シグルドが戦場を抜けて見たのは、ザクソン城の守備部隊を蹴散らすエルトシャンの姿だった。ミストルティンを一振りするだけで、分厚い重騎士の鎧が簡単に裂けていく。
「シグルド!遅かったな」
「すまない、エルトシャン」
「何、クロスナイツの敵では無い。このまま一気に決着を着ける」
「私も共に行こう!もしかしたら、彼と話をつけられるかも知れない」
「……お前らしいな」
シグルドはエルトシャンと共にザクソン城へと侵入する。そこには、ダッカーが苦悶の表情を浮かべて立っていた。
「ダッカー公!今すぐ兵を止めて下さい。このユグドラルに新たな敵が現れた時に、こんな戦いは無意味です!」
「何を言うか!ここまでシレジア王家に牙を立てたんだ、もう儂に残された道は一つよ!死ね!!」
「ダッカー公……!」
「来るぞ、シグルド!」
「トルネードッ!!」
先に戦ったマイオスのよりも強大な嵐が、二人に向かって来る。直撃は避けたが、余波で二人の鎧に傷が付く程の威力だった。
「なんて威力……」
「喰らったらひとたまりもないな」
「シグルド!援護は頼んだ」
「何!?……分かった!」
エルトシャンが駆け出す。圧倒的な加速によって、一気にダッカーに接近した。
「馬鹿め、近付けば近付く程命中しやすいわ!」
「そこだ、シグルド!」
「はあッ!!」
エルトシャンの背後から、シグルドが槍を投擲する。その槍は魔導書を持ったダッカーに命中し、一瞬動きを止めた。
「この距離だ。確実に仕留める……!」
エルトシャンがミストルティンを横薙ぎに振る。黒い刃が空中を走り、ダッカーを深く切り裂いた。
「ぐはっ!?…………儂の野望もここまでか……」
ダッカーの巨体がザクソン城に崩れ落ちる。この事は外のザクソン軍に伝わり、ようやくシレジアの雪原は静かになったのだった。
〜〜〜〜〜
やぁ、皆さんご存知サムソンだ。現在は左手の薬指と小指を欠損している。握力半分になっちゃうね。……正直ショック過ぎて明るくやってないとヤバい。痛みと傷口は治ったが、精神的に辛すぎる。やっぱつれぇわ……。
「しかし、どうやって盾を持つか……腕にくくりつけて貰うしか無いか」
「失礼する、サムソン殿」
「ロレンス将軍!」
「貴方も遂に儂の仲間入りだな」
「うーむ……盾は腕に着けて貰うしか無いな……」
「そうするしかあるまい。それより、戦いはグランベル軍の勝利に終わったそうだ」
「それは良かった……しかしこの先、どんな戦いが待ち受けているものか」
「少なくともドルーア城よりはマシでしょうな」
「違いない」
いやほんとにそうであってくれ、割とマジで。
結構強引かもしれんけど許して