ユグドラルにアリティアの元剣闘士をブチ込んだ話 作:塩焼きそば啜郎
イード砂漠の街フィノーラで、俺達はマケドニア竜騎士団に連れられたキュアン達と合流していた。
「キュアン!無事だったか!」
「シグルド、エルトシャン……すまないな、こんな情けない格好で……」
「何を言っている。お前が生きているだけでも俺は嬉しい。だろう、シグルド」
「あぁ。そしてエスリンも……」
「お久しぶりです、お兄様」
シグルドはミネルバの方に振り向いた。
「ミネルバ殿、二人を救ってくれてありがとうございます」
「礼はいらん。……さて、王都まで後少しだな。マルス」
「うん。ドルーアの事もあるし、一刻も早く向かわないとね」
「……って、貴方は英雄王!?」
「そう言えば説明していなかったな……キュアン王子、かつて私が仕えていたマルス王だ」
「サムソン、そんな堅苦しい言い方はよしてくれ」
いや無理だって。表面上は傭兵だけど中身はゴリゴリの温室育ちだからな。舐めんなよ?(謎の強がり)
話していると、奥からもう一人、見覚えのある人物がやって来た。
「……マリク!」
「お久しぶりです、サムソンさん。今までずっと後方でクロード様と支援を行っていたので……」
「彼はとても優秀な魔導士ですよ。私が保証します」
すっげぇなマリク。クロード神父に認められてんじゃん。
「勿論スターライトはあります。マフーに対抗出来る物はこれしかありません」
「……なぁ、さっきから聞いてたんだが、そのマフーってのはなんだ?」
「俺もだ。あいにく学が無いんでね」
ヴォルツとベオウルフが聞いてくる。するとマルスが何か考えた顔をして答えた。
「……そうだね。一旦全員をフィノーラ城に集めてくれないか?話したい事があるんだ」
「……?分かりました」
その後、全軍がフィノーラ城の広間に集まった。流石に多いので、二階からも兵士が話を聞いている。
「集まってくれてありがとう。これから話すのは……ドルーア帝国についてだ。確かに僕らは十分に強力な軍隊を持っている。だがそれでも、ドルーア帝国は強大な敵なんだ」
雰囲気が変わった。マルスは話を続ける。
「まずは竜族についてだ。彼らは途轍もない力を秘めている。それこそ、どんな鎧だろうが一瞬で焼き尽くされる程の……人間がいくら束になっても、損害は計り知れないだろうね」
「そんなに……」
「そしてドルーア帝国の皇帝……メディウスは、強大な地竜族の王だ。君達はマムクートは知っているかい?」
「確か、力を失って人間になった竜族の蔑称……でしたか」
「シグルドの言う通りだ。メディウスは人を恨むマムクート達を集め、ドルーア帝国を作り上げた。……これからは、その竜族と戦う事になるかも知れない」
「ちょっと待ってくれ。マルス王、アカネイアには封印の盾があった筈だ」
あれがあれば二度とメディウスが目を覚ます事は無いとガトーは言ってたが……
「……それが、突如として封印の盾からオーブが消えたんだ。残ったのは、光のオーブだけ……残りは全て無くなった。そしてユグドラルでドルーア帝国が再建されたのを聞いて、やって来たんだ」
「ではアカネイアは!?」
「そこは安心してほしい。まだオーブが外されてからそんなに時間は経っていない。いくら地竜族とも言えども復活には時間がかかる筈だ」
俺はほっと胸を撫で下ろした。あんな化け物がうじゃうじゃ復活したらたまったもんじゃ無いからな。
「次は……マフーについてだね。マフーは魔王ガーネフが創り出した闇の魔法で、普通の装備では太刀打ち出来ない。マフーが操る死霊によって行動が封じられるんだ。対抗策は……マリクが持つ光魔法のスターライトのみ。恐らく、神器さえも届かないだろうね」
軍の間にどよめきが広がる。まぁその気持ちは分からんでも無い。俺もマフーと対峙した事があるが、ありゃ驚いたね。
「だが、ここには勇敢な歴戦の戦士が揃っている。僕らの力なら、必ずドルーアを倒せる筈だ!」
兵士から歓声が沸き上がる。流石は一国の王、人々の心を掴むのが上手い。
さて、今の戦力をざっと確認すると……シアルフィ騎士団、クロスナイツ、シレジア天馬騎士団、アグストリア重騎士団、ヴォルツの傭兵軍団、ヴェルダン軍、アリティア騎士団……って所か。多国籍だなぁ。
マルスの言葉で話はお開きになり、急いでバーハラに出発する事になった。イード砂漠を、大軍が通り抜ける。
だが、砂漠からアルヴィスの領地、ヴェルトマーに入る門にも誰もいなかった。そして同時に、何かが聞こえてくる。
「……何処かで戦いが……?」
「シグルド公子」
「サムソン?」
「考えたくは無いが……バーハラにドルーア軍が攻めているのでは無いか?」
「ッ!!……全軍!これよりバーハラに急行するぞ!!」
「シグルド様!?」
「恐らく、バーハラで戦いが繰り広げられているのだろう。クロスナイツ、シグルドに続くぞ!」
慎重に門に入った全軍は、慌ただしく王都バーハラを目指して走り出した。近付くにつれ、音は大きく、鮮明に聞こえてくる。……やっぱりか。
「あれは……」
シグルドが見たのは、バーハラ城に押し入るドルーア軍と、それを食い止めるアルヴィスのロートリッター、レプトールのゲルプリッターの姿だった。戦場に、炎と雷が舞う。ノイッシュがシグルドに聞いた。
「シグルド様、どうされます?」
「今はドルーア軍を撃退するしかない。全てはその後だ」
「……お気を付けて」
「分かっている。全軍、突撃するぞ!」
シグルドが走り出すと共に、シアルフィ騎士団が突撃をする。すると、隣のホリンが話しかけて来た。
「シグルドは大丈夫なのか?」
「……分からん。だがドルーアを倒さないと王都が陥落するからな。今はシグルド公子の無事を祈ってやるしかあるまい」
「しかし……」
「安心しろ。今の彼はティルフィングを継承している。並の魔法や攻撃じゃ倒れない筈だ。レプトール、アルヴィスの両公爵に気を付けるぞ」
「分かった」
俺は横目でレプトールを見た。……なんかブラックホールみたいなのから雷が四方八方に出てる。やっべぇシグルドを守りきれる自信無くなって来たわ。トールハンマー強くない?
「アルヴィス卿!」
「……シグルド公子!?」
「今だけは、私の事を信じて欲しい!どうかお願いです!」
「…………いや、君が反逆者では無いことは分かっている。レプトールとランゴバルトが元凶の事もな……だが、陛下の護衛の為と証拠が無かったので手出しが出来なかったのだ。すまない、共に戦おう」
「アルヴィス卿……ありがとうございます!それと、一つ」
「なんだ?」
「ドルーア帝国の復活を聞き、アカネイアからマルス様率いるアリティア騎士団が来られました」
「!?!?!?!?……あ、あぁ、それは心強い事だな……この戦いが終われば、ぜひお会いしたいものだ」
アルヴィスは振り返り、シグルドから顔を背ける。
(……シグルド、貴様だけでも絶対に始末してやる……)
王都バーハラの戦いは、未だ激しく続いていた。
アカネイアに残されたオーブを星から光に変更。
光のオーブ無しでどうやって闇のオーブに立ち向かうんですかね……?(自問)