ユグドラルにアリティアの元剣闘士をブチ込んだ話   作:塩焼きそば啜郎

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兄として

混成軍が加わった王都での戦いは、僅かだが俺達が有利になっていた。単純に戦力が増えたってのもあるが、何よりマルスが来たのが大きい。ロートリッターもゲルプリッターも士気が爆上がりだと。

 

「しゃあ、久々の仕事だ!」

「俺達で敵を分断させるぞ!」

 

ヴォルツとベオウルフが勇んで突撃する。二人共攻撃をものともせずに大剣を振り回していた。傭兵軍団もそれに続く。

 

「ホリン、アイラ、負けてられんな!」

「おう!」

「あぁ、私達も加勢するぞ!」

 

俺達三人も敵陣に突っ込む。アイラの流星剣で怯んだ敵をホリンと二人で斬り倒して行く。やっぱ流星剣強えわ。……と思ったのも束の間、俺は絶句する事となる。

 

「……は?」

「おい、嘘だろ!?」

 

奥からは、広い大地を埋め尽くす鎧、鎧、鎧。どこを見渡しても重厚な鎧で埋まっていた。

 

「あんな戦力がアグストリアに残ってたのか!?」

「いや、恐らくはアカネイアのドルーア軍だろう。私達が王都に向かう間に輸送されてきたと思っていい」

 

だとしても多すぎる。……一体どんなカラクリを使ったのかは知らんが、これが現実だ。

 

「一旦防御に徹するしか……!?」

 

すると突然、辺り一面に地響きが走った。見ると、何やらゲルプリッターの方から悲鳴まじりの絶叫が聞こえてくる。

 

「……遂におでましか」

「サムソン、一体何が現れ……」

 

今度はアイラも絶句する。そこには、人間を優に越す巨体があった。その目は体色と同じく赤く輝いている。

 

「火竜……!」

 

竜族が出て来たか……しかしこんな早く出て来るなんぞ反則以外の何物でも無い。

 

「くっ……とにかく目の前の敵を片付けるぞ!」

「おう!」

 

俺達は再び剣を振るい始めた。ヴォルツとベオウルフが先陣を切ったおかげで大分戦いやすくなっているが、それでもきつい。今は一刻も早くシグルドの元に合流して火竜に立ち向かうしか無いだろう。

 

「退け!」

 

必死に銀の剣を振り回す。これだけの大軍に囲まれたのは随分と久しぶりかも知れないな。戦い続けていると、ようやくシアルフィ騎士団が見えてくる。

 

「アイラ、合流するぞ!」

「分かった、ホリン急げ!」

「すぐに終わる!」

 

俺達はシグルド達への合流を急いだ。

 

 

 

サムソン達が戦っている時、ゲルプリッターは悲鳴と怒号に包まれていた。歴戦の魔導騎士であるレプトールさえも、火竜の前ではただの獲物に過ぎなかった。

 

「ば、化け物!」

「逃げろ!」

「馬鹿者!ここで我らが退いたら陛下に会わせる顔が無いわ!トローンを喰らわせろ!!」

 

逃げ惑うゲルプリッターを、レプトールが必死に纏める。何人かがトローンを唱え、数本の雷が火竜に放たれた。

 

「グオオーッ!!」

 

だが、全ての雷が火竜のブレスによって相殺される。兵士達は更に慄いたが、そこに無慈悲にもブレスが直撃した。

 

「なっ……」

 

兵士達は重装備にも関わらず、声を上げる間もなく焼け死んでいく。これを見て、レプトールを含めた全員が死に物狂いで魔法を放ち始めた。

 

「撃て!撃たねば死あるのみだぞ!!」

 

全員のトローンや、レプトールのトールハンマーが空を駆け巡り、荒れ狂う雷を形成する。全方位からの雷魔法には火竜も耐えきれず、その巨体を地に沈めた。

兵士達から喝采が起こるが、レプトールが怒鳴る。

 

「馬鹿者、一体だけとは限らぬぞ!もしや、アルヴィスの所にも……とにかく、戦闘態勢を崩すな!!」

 

ゲルプリッターは、再び緊張感を取り戻して警戒にあたった。周りでは、まだ火竜は出現していない。

 

「こんな筈では……」

 

レプトールは、一人呟いた。

 

 

 

「おぉ、火竜が倒れたぞ!」

「流石はトールハンマー、火竜にも通じたか」

 

一方、混成軍の近くで戦っていたロートリッターにもゲルプリッターの勝利が伝わっていた。兵士達が喜ぶ中、アルヴィスは険しい表情を崩さない。

 

「何という……重騎士があぁも簡単にやられるとは……」

「アルヴィス様!」

「!」

 

兵士の声によって、アルヴィスは思考の海から現実に戻される。

 

「大変です、二体目の火竜が出現しました!」

「何……!?だがこちらには英雄王がおられる。到着まで何とか耐え抜くのだ!」

 

十数人のロートリッターが火竜を囲み、メティオやエルファイアーを浴びせて行く。しかし同じ炎の魔法では相性が悪いのか、さほど効いてる様子は無かった。ブレスがメティオの相殺に使われているのが唯一の幸運だろう。

 

「やはり効かぬか……。……!あれは英雄王!」

「後は任せてくれ!」

 

そこに、駆けつけて来たマルスが到着する。マルスはレイピアを収め、もう一本の剣を引き抜いた。

 

「あれが……ファルシオン……」

 

その剣からは、見る者全てを圧倒するオーラが漂う。それはアルヴィスも例外では無かった。

 

「行くぞ!」

 

マルスは火竜に突撃する。火竜は迎撃にブレスを放とうとしたが、メティオによって阻まれた。その隙に、マルスがファルシオンの刃を振り下ろす。

 

「ギャアアーッ!!」

 

もろに一撃を喰らった火竜は、ゆっくりと地面に倒れた。辺りに砂埃が舞う。

 

「マルス様!」

 

そこに、アリティア騎士団やシアルフィ騎士団の面々が集まって来た。アルヴィスはそれを見て、マルスに近付く。

 

「ありがとうございます、マルス様。貴方がいなければ私のロートリッターは甚大な被害を受けていた」

「礼は後で貰うよ。それよりも今は早く勝利して、彼らの汚名を晴らさなければいけない」

「……」

 

アルヴィスはシグルドを見て、隣にいる自身の弟であるアゼルを見た。その成長ぶりに喜ぶ自分を抑え、魔法を準備する。

 

(反乱軍は反乱軍だ……例え弟であろうとな)

 

やがて、それぞれの軍が戦いに戻ろうとして背中を向けた時。おぞましい咆哮が響き渡る。

 

「何!?」

 

倒れた筈の火竜が立ち上がり、シグルドの面々に向けてブレスを放とうとしていた。マルスは離れており、とても間に合いそうに無い。

 

「グオアァッ!!」 

 

そして、最大級の炎がシアルフィ騎士団に放たれた時。

 

「なっ!?」

「……兄様!?」

 

シグルドとアゼルの目の前には、自らを庇うアルヴィスの姿があった。

 

「…………ファラフレイム!!」

 

アルヴィスが放った巨大な火柱によって、火竜は灰となり消えていった。そして、アルヴィスが力無く倒れる。

 

「アルヴィス卿!しっかりしてください!」

「兄様、兄様!」

「……」

「誰か!今すぐ彼に治療を!!」

 

静まり返った戦場に、シグルドの怒号だけが響いた。




この作品の敵には基本的にいい人補正をかけまくってます。元が大罪の集まりだしまぁ多少はね?
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