ユグドラルにアリティアの元剣闘士をブチ込んだ話   作:塩焼きそば啜郎

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再開

二体の火竜が倒されてからしばらくして、ドルーア軍は形勢不利と見たのか撤退していった。だがこちらの被害も大きい。ゲルプリッターの多くが火竜によって焼かれ、ロートリッターは君主であるアルヴィスを失っている。かなりの打撃を受けたが、何とか勝利したと言って良いだろう。

 

「アルヴィス卿……」

 

シグルドは相変わらずアルヴィスを案じていた。仮にも自分が他の諸公と敵対している立場なのになぁ。

 

「しかしどうするのだ?シグルド公子。早く無実を証明せねばならんぞ」

「今、クロード様が陛下に説明を行われている所だ。私が説明しても信じて貰えるかどうか……」

「それもそうか」

「……」

 

話していると、クロード神父が入って来た。なんだか重い表情だ。

 

「クロード様?」

「シグルド殿……陛下は貴方とランゴバルト卿、レプトール卿を連れてくるよう私に言われました。ですが……」

「?」

「……いえ、説明してもどうにもならない。実際に貴方が見た方が早いでしょう」

「……?分かりました。みんな、行ってくる」

 

そう言い残してシグルドは部屋を出て行った。

 

「う〜む、何か嫌な予感が……」

「どうした、アレク」

「クロード様だよ。なんか暗かったろ?」

「きっとシグルド公子の無実が証明されるか緊張しているのだろう。どちらにせよ、ここからは彼の問題だ」

「……だな」

 

アレクは再び椅子に座り思案する。確かに俺も不安だが、ここは信じるしか無い。

 

 

 

 

シグルドはクロードに連れられ、アズムールの下に来た。隣にはランゴバルトとレプトールの二人が。ランゴバルトは静かにアズムールを見ており、レプトールは焦りを含んだ目をしている。

 

「クロード神父よ、貴公の申した事が本当なら、クルトを暗殺したのはランゴバルト卿であり、シグルドとその父バイロンは汚名を着させられた……という事になる。それで間違い無いか?」

「はい、陛下。大司祭ブラギに誓います」

「ランゴバルト卿、レプトール卿。貴公らがクルトを暗殺したのか?」

「いえ、陛下!私共がそんな事をするなど有り得ませぬ!」

「……陛下、確かにこのランゴバルトがクルト殿下を暗殺し、バイロン卿のグリューンリッターを壊滅させました」

「ランゴバルト!?」

「ランゴバルト卿!?」

 

ランゴバルトが静かに言った。レプトールは目を見開き、汗を流す。

 

「何故だ!?」

「考えてもみよ、レプトール。儂のグラオリッターやダナンは負け、貴公のゲルプリッターも甚大な被害を受けた。そしてアルヴィスも昏睡状態だ。最早儂らに反逆の力は残っておらん。それに、いつかはボロが出るだろう」

「……」

 

レプトールは力無く項垂れた。今度はシグルドが声を上げる。

 

「ランゴバルト卿、何故アルヴィス卿の名が出てくるのです!?」

「元はこの計画をレプトールに伝えたのがアルヴィスだからよ。自身が未来のグランベルを、儂とレプトールをイザークとアグストリアの王族に、とな」

「なんと……」

 

アズムールが弱々しく声を出した。まさか、自身の側近として信頼していたアルヴィスが一連の黒幕だったとは……だが同時に、疑問も生まれてくる。アズムールが考えようとした時、一人の女性が現れた。

 

「お爺様……」

「おお、ディアドラよ、心配するでない。安心するんじゃ……」

「……え?」

 

シグルドから、間の抜けた声が出る。

 

「シグルド公子よ、彼女が王女ディアドラじゃ。お主は知らなかったの」

「始めまして、ディアドラと申します……」

「……」

 

シグルドの頭が真っ白になった。目の前にいるのは、確かに自分と愛し合い、結ばれた筈のディアドラ。だが彼女はどうか。自分の事など全く覚えていない様子だ。

シグルドが何とか声を出そうとした時、鋭い叫び声が響き渡る。

 

「ぎゃあぁぁああっ!!」

「何事じゃ!?」

 

壁を突き破り吹っ飛んで来たのは、黒いローブを着た老人だった。ここにいる全員がそれをロプトマージだと認識する。そしてもう一人の男が出来た穴から歩いて来た。

 

「や、止めろ……よくも、ロプトウス様の力を……」

「元は竜族の力であろう。ならばこれはドルーアが持つに相応しい」

「……ガーネフ!!」

 

シグルドが叫ぶ。ガーネフの手には黒い魔導書が握られていた。

 

「お初にお目にかかりますな、アズムール王。我が名はガーネフ、ドルーア皇帝メディウスの下僕……ご覧の通りロプトウスは貰い受けた。その娘も頂くとしよう」

「!」

 

シグルドが反射的にティルフィングを抜き、ガーネフに斬りかかる。ランゴバルトとレプトールもそれぞれ神器を構えた。

 

「無駄よ!」

 

瞬間、シグルドの体が動かなくなる。無防備になった体に、怨霊の塊が直撃した。

 

「ぐあぁっ!?」

 

シグルドは大きく吹き飛び、床に叩き付けられる。ガーネフは怯えるディアドラを見て、不敵に笑った。

 

「貴様さえ消せば、最早邪魔者はあのマルスだけ……死ね!」

 

ディアドラに、更に大きな霊魂が放たれた。しかしその霊魂は光と共に消滅する。見ると、マリクを始めとしたアリティアの面々が武器を構えていた。

 

「……スターライトか」

「ガーネフ!お前はあの時、僕がこの手で倒した筈だ!」

「若造が……ゾロゾロ入って来おった。ここまでにしておこう……この男は貰って行くがな!」

 

ガーネフの闇魔法が、倒れているロプトマージを包み込む。そのままガーネフは何処かへと消えて行った。

 

「逃げられた……」

「シグルド殿!」

 

クロードが倒れたシグルドに近付く。リライブの杖を発動したが、受けた傷は大きかった。そこに、ディアドラが来る。

 

「……シグルド様……」

 

ディアドラが放った光が、暖かくシグルドを包んだ。

 

「リカバーの杖です。これなら……」

 

シグルドが受けた傷が一瞬で全て消え、ゆっくりと目を覚ました。

 

「……あぁ、ディアドラ……」

「シグルド様……」

「ディアドラよ……シグルド公子を知っておるのか?」

「はい……私は今まであの男に記憶を奪われていました。シグルド様は……私の愛する人です」

 

一同、絶句。衝撃的すぎるカミングアウトに、諸公は勿論、アズムールさえも目を見開いて黙り込んだ。

 

「シ、シグルド公子よ。ディアドラの言う事は真か?」

「はい。確かにディアドラと私は結婚して、セリスという子も授かりました」

(既に子供までおるのか!!)

「シグルド様、セリスは……」

「オイフェやシャナンと共にイザークへ避難させている。いつかまた会えるさ」

「…………ともかく、事の顛末はアルヴィス卿が目を覚ましてから聞く事にする」

 

勿論駆けつけたアリティア陣も絶句。とんでも無い展開になったが、ひとまずの収拾が付いた。

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