ユグドラルにアリティアの元剣闘士をブチ込んだ話   作:塩焼きそば啜郎

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六章 反撃
エバンスの戦い


バーバラ城の前に、大規模な軍隊が整列した。シグルド率いるシアルフィ騎士団……いや、もう正式には『グリューンリッター』か。そして隣にはエルトシャンのクロスナイツとシャガールのアグストリア重騎士団。そしてエーディンのバイゲリッター、ランゴバルトのグラオリッター、レプトールのゲルプリッター、アルヴィスのロートリッター。この四名の騎士団は先の戦いで大部分を失っているので、合わせてグリューンリッターと並ぶ程度だ。更にはエッダの魔導士軍、ガンドルフとジャムカのヴェルダン軍、キュアンのランスリッター、イザークからはアイラとホリンが、シレジアからはレヴィンとマーニャとフュリーが加わり、アカネイアからはアリティア騎士団とマケドニア竜騎士団もいる。ここにユグドラル史上最大の連合軍、『ユグドラル・アカネイア連合軍』が誕生した。

 

「……なんつー眺めだ……」

「レックスやミデェールが元の軍に戻ったとは言え、かなりの数だ。まさか王都が埋め尽くされるとはな」

 

隣で呆れているアレクを見てから、もう一度軍に目を向ける。この勢力がなだれ込んだら流石に勝てそうだが、そうは簡単にいかない。なんせ相手はあのガーネフとメディウスだ。あいつ等の前ではこの軍勢がほぼ無力化されるからな。

なんでアルヴィスを始めとした反クルト派もいるのかって?それは先程王宮でアズムール王が諸公……いや、聖戦士達を集めたのが理由だ。彼はマルスと話をした後、聖戦士を集合させた。

 

 

 

「アルヴィス卿、ランゴバルト卿、レプトール卿。今、このユグドラルに暗黒神ロプトウスを超える脅威が迫っているのはマルス王から聞いた。貴公らがこのユグドラルを護りし聖戦士だと言うのなら、今一度グランベル諸公……いや、聖戦士として一つとなり、厄災を退けよ。貴公らの処分はその後に行うものとし、今は不問にする」

「……御意」

 

 

 

アルヴィスがそう答えたのを皮切りに、二人も同じく答えた。気がかりはトラキア王国のトラバントだが……今は前進するしか無い。王都バーハラを出発した連合軍は、まずシアルフィに辿り着いた。シグルドもまさか、ドルーアに制圧された故郷を見るとは思わなかっただろう。だがそこには必要最低限の兵力しか無く、楽に制圧出来た。ユングヴィも同様だった。恐らくエバンスに勢力を集中させたと見られる。

連合軍はかなり大人数なので、複数の陣に分かれて移動する事となった。一陣はグリューンリッター、ヴェルダン軍、バイゲリッター。何とも因縁深い構成だ。比較的機動力が高い俺達で敵を翻弄し、重騎士団が押し潰すそうだ。容赦ねぇな。

 

「私達が先陣を切る!」

 

シグルドの呼びかけに、グリューンリッターが呼応する。その中には、魔導書を持ったディアドラもいた。光の神器、『ナーガ』。俺もアカネイアで伝説は聞いていたが、まさかディアドラがその力を継ぐ者だったとは。

 

「どうしたサムソン、考え事か?」

「いや、何……一般人にはスケールが大きすぎる話だと思ってな」

「確かに……ん?」

 

ノイッシュが前方を見る。俺も釣られて見ると、そこには敵の重騎士団が。それは分かるが、その上空には何かが飛んでいる。天馬騎士でも、竜騎士でも無い。俺が嫌な予感を覚えた時だった。

 

「危ないッ!!」

 

その何かから、高速で火球が放たれた。しかも丁度俺に。何とか盾で受け止めるが、その衝撃は凄まじい。

 

「なんだあれは……!?シグルド公子、迂闊に近付くな!まずはあれを撃墜しなければ近付けない!」

 

シグルドは一旦接近を止める。そして、瞬時に号令を出した。

 

「ジャムカ、ブリギッド!あれを撃墜してくれ!」

「任せろ、ジャムカ隊構え!」

「バイゲリッター!」

 

ヴェルダン兵とバイゲリッターが弓を引く。バイゲリッターは少数ながら、かなりの精鋭揃いだ。何十もの矢が標的に向かって空を突き進む。流石に全てを避けきる事は出来なかったが、数本がその体に突き刺さる。そしてそれは唸り声を上げながら地面に墜落した。

 

「よし、これで前進……」

 

そう言いかけたシグルドの前には、火球が迫って来ていた。シグルドは何とか盾で受け止めたが、反動で馬から落ちそうになる。

 

「まだ息があるのか!?」

 

同時に、静かだった重騎士団が動き始めた。そしてその後ろには、なんと五体の火竜が姿を現す。

 

「何ぃ!?畜生、竜は子供を産めなくなったんじゃ無いのかよ!」

「アレク、文句を言ってる暇は無いぞ!」

 

墜落したそれは、猛スピードで地を駆けて来る。近付くに連れてはっきり見えたその姿は、頭部が竜、体は人間、そして胸に赤い石が埋め込まれていた。

 

「考えたくは無いが……竜人と言った所か」

 

剣を構えた竜人は、ティルフィングを持ったシグルドと対峙する。竜人が咆哮を上げて剣を振り下ろした。

 

「なんて力だ……私がこいつを相手する、ジャムカとブリギッドは敵を近寄らせないでくれ!」

 

再びジャムカ隊とバイゲリッターが弓を放つ。俺もシグルドに加勢したい所だが、あの野郎、ティルフィングを無理矢理パワーで押さえつけてやがるじゃねぇか。

 

「人のスピードと竜のパワーのハイブリッド……」

「ドルーアの奴ら、恐ろしい兵器を創り出しやがったな」

「だが行くしかあるまい!」

 

俺は覚悟を決めて竜人に剣を振るう。二体一となった事で多少動きが鈍ったが、それでも圧倒的だ。浅い切り傷しか付ける事しか出来ない。

 

「サムソン、こいつの動きを一瞬で良いから止めてくれ!ティルフィングなら防御を突き破れる!」

「任せろ!」

 

俺は振り下ろされた剣を盾で受け流す。刃が地面に深々と突き刺さった。

 

「はあぁッ!!」

 

無防備な首に、ティルフィングの一撃。竜人の首は地面に落ち、体は力無く崩れた。

 

「よし、後は重騎士だが……迂闊に火竜の射程内に入る訳にはいかないな……」

 

悩むシグルドを、一つの影が覆った。上を向くと、ミネルバと共にマルスが竜に乗っている。

 

「僕達が火竜を相手取る。君達は重騎士を仕留めてくれ!」

 

飛竜は更に速度を上げ、上空から火竜の気を引いた。それを見たシグルドが号令をかける。

 

「全軍突撃だ!重騎士を叩き、後続に繋げるぞ!」

 

俺達は再び、エバンス城に繋がる大地を駆ける。懐かしいな、アルヴィスがヴェルダン兵をファラフレイムで燃やしまくった所か。

思い出していると、橋の前で接敵。グリューンリッターは剣で、バイゲリッターは弓で、ヴェルダン軍は斧で重騎士共の鎧を裂いて行った。

 

「オラオラぁ!とっとと退きやがれ!!」

「相変わらず脳筋な兄貴だぜ!」

 

ガンドルフは銀の斧を両手持ちして重騎士に突っ込んでいる。あいつ俺と同い年位じゃ無かったっけ……?

 

「ゼェー……ハァー……」

「やっぱ駄目じゃねぇか!!」

 

疲労困憊の脳筋王子は置いといて、三国のトップ相手に重騎士団は徐々に押されて行き、遂には俺達に道を明け渡した。

ほぼ同時に火竜も討伐され、後続のグランベル諸公達によってエバンス城は陥落したのだった。

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