ユグドラルにアリティアの元剣闘士をブチ込んだ話   作:塩焼きそば啜郎

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これ今年中に終わるかな……(一抹の不安)
頑張ります。


精霊の森を踏み締めて

エバンス城が連合軍により制圧されてからしばらく。全軍が集結した城内では、兵士の休息と軍議が行われていた。

 

「ここからノディオンに行くには道が狭すぎる。ヴェルダンもドルーアに占領されたままだ」

 

エルトシャンが言った。それにガンドルフが答える。

 

「ヴェルダン城奪還はヴェルダン軍に任せて貰うぜ。親父の墓をこれ以上荒らされてたまるかよ」

「俺も兄貴と同じ気持ちだ」

 

皆、二人の意見に異議は無かった。

 

「では私が加勢しよう」

 

声を上げたのはキュアンだった。

 

「かつては敵だったが、今は共に戦う仲間だ。それに、ヴェルダンの地理を把握している中では私のランスリッターが最も少数勢力だ。ドルーア城があるアグストリアにはなるべく戦力を温存させておきたい」

 

こうして進んだ軍議により、ヴェルダン城奪還にはヴェルダン軍、ランスリッター、イザーク軍、エッダから一部のプリーストが抜擢された。残りは順にアグストリア制圧に回された。

 

 

 

エバンス城の城門から、ヴェルダンの森林を見渡していたキュアンに、ガンドルフが近付く。

 

「頼りにしてるぜ、槍騎士さんよ」

「それはこちらの台詞だ。……行くぞ!ランスリッター、出撃せよ!」

「行くぞてめぇら!故郷を取り返せ!」

 

こうして、ヴェルダンを巡る戦いの幕が切って落とされた。ガンドルフと護衛の兵士を先頭として、連合軍は森に囲まれた道を進んで行く。

 

「ガンドルフ、もう少し慎重に行った方が良いのではないか?」

「安心しとけ。奴らは騎士が中心の筈だ。この鬱蒼とした森の中からの奇襲は不得意だろうよ。第一俺達にはそんなのお見通しだがな……来たぞ!」

 

前方から、騎馬兵を中心とした舞台が現れる。ランスリッターも前に出る。

 

「槍騎士は任せた。剣持ちは我らが相手しよう」

「私達イザークの剣士も忘れて貰っては困るな」

「勿論お前達も信頼してるぜ。行くぞ!」

 

ガンドルフが勇ましく突撃する。ヴェルダン軍も斧と弓を構えそれに続いた。左右をイザーク軍とランスリッターが埋める。両軍は激しく激突し、戦闘を開始した。

 

「オラァ!」

 

突き出された槍をかわし、斧を騎士に叩きつける。別方向からの攻撃は到達する前に刃により叩き折られた。ランスリッターも剣撃を槍で弾いて反撃する。特にキュアンの持つゲイボルグの力は圧倒的だった。回り込んだドルーア軍は、ジャムカ隊とイザーク軍に阻まれる。

形勢不利と見たドルーア軍は重騎士を出しつつ後退するも、進路を森に阻まれたせいで撤退が遅くなり、勢い付いたヴェルダン軍に殲滅されて行った。

 

「兄貴、ジェノア城は俺とイザーク軍に任せてくれ。マーファ城を頼む」

「任せとけ。とっとと終わらせろよ!」

「よし、行くか。アイラ、ホリン」

「このような形でジェノア城に行くとは……承知した」

 

二手に別れたガンドルフは海岸沿いの狭い道を通り、マーファ城が見える平原に到着した。城門前には重騎士団が並んでいる。

 

「さて、どう出るか……」

「ここは私が先陣を……あれは!?ガンドルフ、気を付けろ!」

 

キュアンが空を指差す。ガンドルフも見ると、そこにはシグルドの報告にあった竜人がいた。それも二体。竜人は素早く降下すると、ガンドルフに向けて剣を振り下ろした。

 

「危ねぇ!畜生、なんて速さだ!?お前ら、防御を固めとけ!」

 

ヴェルダン軍はいつでも防御出来るように斧を構えた。キュアンが一体に手槍を投擲するも、ギリギリでかわされる。

 

「くっ……想像以上の強敵だな」

 

連合軍は空からの強襲で足止めを喰らった。それと同時に、重騎士団がマーファ城から押し寄せてくる。

 

「チッ……俺達が重騎士団を引き受ける、竜人は頼んだ!」

「辛い役回りだが……断る訳にもいくまい!」

 

ランスリッターは必死に手槍を投擲し、竜人を近付けないようにした。が、竜人はその防御をかいくぐって少しずつダメージを与えていく。防戦一方になっていたその時、キュアンを別の影が覆った。

 

「ギャアァア!」

 

突然、竜人が声を上げてランスリッターから離れて行く。キュアンは不思議に思い、空を見上げた。

 

「……貴様は!」

「これが竜人……だがこのトラバントの前では雑魚に過ぎん!」

 

竜に乗った長髪の男。その手には、地槍ゲイボルグと対を成す天槍グングニルが握られていた。

 

「トラバント、貴様ここまで堕ちたか!!」

「フン、勘違いするな。俺はトラキア王である以前に、ユグドラルを守護する聖戦士だ。異界の帝国など、この手で潰してくれる!」

「トラバント……」

「竜人は我らトラキア竜騎士団が片付ける。さっさと城を落として来い」

「言われなくとも!ランスリッター、ヴェルダン軍に加勢するぞ!」

 

機動力に優れるランスリッターは、重騎士団を左右から制圧していった。射程外からの手槍やゲイボルグにより陣形は崩れ、マーファ城への道が開く。

 

「ここは俺が一番乗りよ!」

 

そう言って乗り込んだガンドルフによって、マーファ城は再びヴェルダンの元に戻って来た。そこに、ジェノア城を制圧し終えたジャムカ達も帰って来る。

 

「兄貴、一人で突っ込んだのか!?」

「当たり前よ!この俺を誰だと思ってやがんだ!?」

「……とにかく、この勢いのままヴェルダン城に行こう。だがその前に、なんでトラキア軍が来てんだ?」

「トラバントがアズムール王と話し合い、今は聖戦士として戦うそうだ」

「なら大丈夫か……」

 

連合軍はヴェルダンの深い森へと入って行く。両軍とも以前通った道なので、さほど迷わずに湖のそばまで辿り着く事が出来た。

出て来る敵も道がまだ余り把握出来ていないのか、連携が拙い。ヴェルダン軍にとっては格好の的に過ぎなかった。やがて、ヴェルダン城が見えてくる。

 

「やっとか」

「うむ。我らならきっと……む、トラバントか?」

 

キュアンが言いかけた所で、後方からトラキア軍がやって来る。

 

「我らトラキア竜騎士団にかかれば、竜人など容易く仕留められる。城の守備は我らが破ろう。貴様は敵将を討ち取れ」

「元からそのつもりだぜ」

 

トラキア軍は即座に守備隊への攻撃を始めた。そこにランスリッターが加わり、混乱で隙が出来た所にヴェルダン軍が突撃する。こうしてガンドルフとジャムカ率いる戦士達が入城した。

 

「敵将は王宮にいる筈だ」

「だな。とっとと返して貰おう」

 

ガンドルフはジャムカと二人で城の奥に入って行く。そして玉座に座っている男を見つけた。

 

「野郎、随分くつろいでやがるな」

「フン、ヴェルダンの王子共か……儂はガルファー。儂の斧で真っ二つにしてくれるわ!」

 

ガルファーは立ち上がり、立てかけてあった斧を取る。それはガンドルフの物より二回りも大きい、特注の斧だった。

 

「でけーッ!?」

「死ねい!」

 

振り下ろされた一撃をガンドルフは咄嗟に避ける。床には火花が散り、金属音が鳴り響いた。

 

「俺もいるぜ!」

 

ジャムカがキラーボウを放つ。だがそれは刃で受けられてしまった。

 

「儂の斧は攻防一体!そして刃は希少な金属を使っておるからのぉ!刃こぼれなぞせんわ!金をかけた甲斐があったわい!」

「ゴチャゴチャうるせぇぞ!」

 

ガンドルフが手斧を投げる。それも刃に弾かれたが、今度は両手で銀の斧を持って直接振りかぶった。だがガルファーの鎧は硬く、衝撃だけが伝わる。

 

「ジャムカ!動きを止めておくから、こいつを仕留めろ!顔面狙えよ!」

「畜生、無茶な事ばっかり言いやがって!!」

 

ジャムカは必死にキラーボウを引き絞る。ガルファーは防戦一方だが、中々狙いが付けられない。

 

「考えおって!」

 

ガンドルフの攻撃が緩んだ所でガルファーは斧を振りかぶる。

 

「そうする事は分かってんだよ!」

「何ぃ!?」

「オラァ!!」

 

一撃の隙に、ガンドルフは渾身の力で銀の斧を叩きつけた。遂に鎧が割れる。

 

「そこだッ!!」

 

そこに、キラーボウが突き刺さった。先程までの勢いが嘘のように、ガルファーは崩れ落ちる。

 

「ハァ、ハァ……や、やったぜ、親父……遂に、遂にヴェルダンを取り戻したんだ!!」

「あぁ……やったな、兄貴!キンボイスの兄貴も喜ぶぜ!!」

 

兄弟の歓喜を持って、ドルーア軍はヴェルダンから退けられた。

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