ユグドラルにアリティアの元剣闘士をブチ込んだ話   作:塩焼きそば啜郎

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一章 精霊の森の少女
立ちはだかる剣士


ヴェルダン王国第二王子、キンボイス率いる軍がエバンス城に向かい出撃した事が分かったのは今朝の事だった。数日前にこの城を制圧してからは、しばらく休養を取るという事だったが……もうちょっと休ませて欲しかったな。

 

「よし、各自出撃準備は出来たか?」

「用意は出来ている」

「だな」

「えぇ。準備万端ですよ」

「分かった。我らの後方はエルトシャンが守ってくれるそうだ。みんな、前面の敵に集中してくれ。ここから少し行った所に小さいが深い森がある。そこを壁にして戦うぞ!」

 

シグルドが作戦を告げ、満を持して俺達は出撃した。キンボイスの拠点であるジェノア城よりも、こちらの方が深い森には近い。奴らを待ち受ける形になるだろう。

 

「シグルド様、遠方にキンボイス軍を発見!」

 

ノイッシュが告げる。シグルド、ノイッシュ、アレク、レックスが横並びとなり、後ろにはエスリン、フィン、ミデェールが。俺はキュアンと最後尾の守りを担当する。

少しづつ前進していると、やがてキンボイス軍と向かい合う形になった。

 

「現れやがったな。野郎ども、エバンスを取り戻せぇ!」

 

その合図と共に、大量のヴェルダン兵が突撃してくる。総数はこちらよりも圧倒的に多く、弓兵も多い。

 

「サムソン!決してヴェルダン兵に挟み撃ちをさせないでくれ!」

「了解した!キュアン王子、頼むぞ」

「任せてくれ、サムソン。人数は不利とはいえ、蛮族に負ける程へこたれては無い」

「そう言ってくれると頼もしいな」

 

前面ではシグルドがアルヴィスから貰ったという銀の剣を振るいヴェルダン兵を足止めしている。勿論俺も油断せず、森を回り込んでくるヴェルダン兵をキュアンと共に足止めした。しっかし数が多い。敵の本拠地は規模が違うな。

 

「くっ……」

 

振り下ろされた斧を盾で受け止めた。ずっしりとした衝撃が体に伝わってくる。動きを止めたヴェルダン兵にキュアンの槍が突き刺さり、地面に倒れて動かなくなった。だがその後ろから、新たな敵がやってくる。

 

「大丈夫か、サムソン」

「大丈夫だ。だが流石に連戦は三十路にはきついな……」

「フッ、冗談を」

「冗談であって欲しい物さ。来るぞ!」

 

軽口を叩き合いながら、襲いかかってくる敵を次々に斬り倒す。敵の大部分は前面に集中しているのが幸いと言った所か。

次第に敵は少なくなって行った。戦力を分けるよりも前面に集結させ、突破を試みたのだろう。しかしもう遅い。数が減ったヴェルダン兵達ではシグルド達の相手にならず、次々と撃破されていく。やがて大将のキンボイスも討ち取られ、この戦いは幕を閉じた。

 

「終わったか……みんな、この付近の村が混乱に乗じて盗賊に襲われているそうだ。村を救出してから森を抜け、ジェノア城を制圧しに行こうと思う」

 

俺達は戦場から南西の村に向かった。するとやはり、数人の盗賊が村を荒らしているのが見えた。先の戦いで後方支援だったフィンとエスリンとミデェールが中心となり盗賊を全滅させてくれた。

やっぱりミデェールは弓兵らしく支援が似合うな。どこぞの超火力詐欺師ハンターとは違う。あいつ、元気にしてるかなぁ……

 

「どうしましたか?サムソンさん」

「フィンか。いや、少し昔を思い出してな……シグルド公子も出発する事だし、早く行かないと置いてかれるぞ」

「は、はい」

 

フィンを急かし、シグルドの後に着いていく。流石に深い森の中でシグルドを見失ったら出会える自信は無い。

 

 

 

森の中を進む事、しばらく。少し開けた場所に出た俺達は、そこで意外な人物と出会った。金色の長髪の下から覗く眼は、すっかり怯えている。傍らには、剣を構えた幼い少年がいた。

 

「……シグルド様!」

「君はエーディン!無事だったのか!」

「はい。ジャムカ王子が逃がして下さったのです。ですがガンドルフ王子の軍が私達を追って来ています。シグルド様、どうか……」

「任せてくれ。ヴェルダンの蛮族共には負けはしないさ」

「ありがとうございます……!」

 

エーディンを中心に陣形を組んだ俺達は、やがてヴェルダン軍と対峙した。木々の隙間から投げ込まれる手斧には少し苦戦したが、先程のキンボイス軍よりかは楽に勝利する事が出来た。やがて森を抜け、ジェノア城に向かおうとしたのだが……

 

「シグルド様、マーファ城から更なる増援部隊が出撃しました!このままジェノア城に向かっては挟み撃ちにされます!」

「何!?……サムソン、ジェノア城の制圧、任せれるか」

「任せてくれ。だが流石に一人では無理だ」

「……レックス、アゼル、頼んだ!」

「はい!」

「任せておきな」

 

かくして、俺達三人でのジェノア城攻略が開始された。

開けた草原の先に見えるジェノア城からは、ヴェルダン兵が出撃してくるがその数は少ない。恐らくキンボイスはほぼ全戦力を投入したのだろう。

 

「私とレックスで道を拓く。アゼルは援護を……いや、やはりアゼルはレックスと共にジェノア城に向かってくれ。私が()の相手をする」

 

ヴェルダン軍の中心から向かってくるのは、女剣士。だがどこかおかしい。服装もまるで違うし、何よりあの顔は何か訳アリな顔だ。今まで戦って来た奴の中にも、何人かそういう奴がいた。

 

「確かにあの女はヤバそうだな。アゼル!さっさとジェノア城を落とすぜ!」

「あぁ、分かった!」

 

二手に分かれ、ヴェルダン兵を撃破していく。勿論レックス達は女剣士の射程に入らないように回り込みながら、俺は自ら彼女に近付いた。周りの兵士を倒し、女剣士と対峙する。

 

「……お前が私の相手か」

「そうだ。しかしお前、何故ヴェルダンに協力している?」

「っ……!お前には関係無い、行くぞ!」

 

そう言って一気に距離を詰める女剣士。持っているのは……鉄の大剣か!俺は慌てて盾で受け止めるが、ヴェルダン兵の斧とは比べ物にならない程強烈な衝撃が走る。

 

「なんて威力だ……」

「よく見切ったな。だが、その盾はいつまで保つか……」

「なに、年下の女の剣に負ける程こいつはやわじゃないさ」

「減らず口を……!」

 

女剣士は先程よりも素早く接近してきた。そして射程内に入った瞬間。

 

「喰らえ、流星剣!!」

「……!」

 

女剣士の剣が、まるで五つに分かれたように見えた。そして五方向からの鋭い斬撃が俺を襲う。俺は即座に後ろに飛び退いた。

 

「……くっ……」

 

防げたのは、僅か二撃。残りの三撃は両腕と右足に命中し、鎧を砕き鮮血を滲ませる。中々深いな。腕が切断されなかっただけ幸運と言うべきか。

 

「終わったな。せめて楽に逝かせてやろう」

 

女剣士は奇襲を警戒したのか、ゆっくりと近付いてくる。これが最後のチャンスだと、俺の直感が叫んだ。痛みを堪え、俺は勢い良く盾を投擲した。

 

「なっ!?」

「今だ……!」

 

女剣士の視界が塞がれた隙に、跳び上がる。勿論すぐにばれ、大剣を構えられたがそれで良いのだ。もとより殺そうなんて思って無いからな。

 

「とりゃぁあーっ!!」

「お、重いッ……!」

 

全力で振り下ろされた銀の剣は、ガードの上から女剣士を押さえ付け、地面に膝をつかせた。衝撃で傷口から血が噴き出すが、ここは我慢だ。

 

「お前、なんのつもりで……!」

「……待っているのさ。お前の人質が開放されるのを」

「!!シャナンを知っているのか!」

「……シャナンとやらは知らん。だが、お前のような奴は大抵人質をとられて戦っているタイプだ」

「……そうか、そこまで推測出来るのか……」

「だが、ここでお前を解放する訳には行かん…………と、やはり人質だったらしいな」

 

俺はゆっくりと剣をどけた。後ろからは、幼い子供を乗せたレックスが走って来ていたからだ。アゼルは相変わらず必死でついて来ている。

 

「……シャナン!」

「アイラ!」

 

なる程、名はアイラと言うのか。先とは打って変わって、年頃の少女らしい表情を見せた。アゼルがこちらを見て何か言っているようだが、よく聞こえない。

 

「……やはり、三十路には、きつい、か……」

 

一人愚痴ったのを最後に、俺の視界はぼやけて行った。




アイラ……流星剣の使い手。強い。ただ一言でいい。強い。あと可愛い。

サムソン……今作で初めて出血して倒れかけた。これまでの疲れと久々の強敵との戦いで蓄積していたダメージが限界を迎えたか。


ここから原作沿いじゃ無くなって来ます。
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