ユグドラルにアリティアの元剣闘士をブチ込んだ話 作:塩焼きそば啜郎
ガンドルフ達がヴェルダン城奪還を目指し出発した直後、今度はクロスナイツがエバンス城から出て来た。
「陛下、我々はノディオンを奪還した後、ハイライン方面を攻めます。アグスティは陛下にお任せします」
「任せておけ」
クロスナイツとグリューンリッターが先陣を切り、ロートリッターを始めとする重騎士団が各地を制圧していく事が軍議で決まった。
「シグルド、この戦いが終わったら共にワインを酌み交わそう。勿論キュアンも一緒だ」
「楽しみだな。あの時果たせなかった約束、今度こそは守ろう」
城門でシグルドとエルトシャンが話している。にしても地の文で俺の語りが入るのは久々かな?最近はいろんな所の話があったからな。
「おいサムソン、何ボーッとしてるんだ?」
「悪い悪い」
アレクに急かされ、俺は行軍に加わった。ノディオンの国境に繋がる道はとても細い。そこで、マケドニア竜騎士団が上空から偵察して、機動力に優れた騎兵を先行させる事になった。今回はクロスナイツを中心とする軍だ。……お、丁度帰って来たな。
「森の中にもシューターはいなかった。出撃するなら今だろう」
「よし、行くぞ!クロスナイツ、ノディオンへ向けて全軍出撃せよ!!」
「グリューンリッターも続け!」
よし、行くか。ほぼ一列となり、素早く国境を抜けていく。抜けた後はヴェルダンとの国境に沿って迂回し、ノディオン城を取り囲んだ。
「む!」
エルトシャンが空を見る。……やっぱ竜人か。しかも三体。中々骨が折れそうだ。同時に、ノディオン城からは重騎士団と騎兵隊が出て来る。
「騎士共はクロスナイツが止める。グリューンリッターは竜人を始末してくれ」
「任せてくれ。もう遅れは取らん!」
そう宣言したシグルド君、なんと言う事でしょう、突撃して来た竜人の内の一体に向かい白馬ごと跳躍、その胴をティルフィングでぶった斬ったではありませんか(ビフォーアフター並感)
「何やってんだあの公子ーッ!?」
「フフ……フハハハ!やはりシグルドは大胆な奴だ!クロスナイツ、続け!」
本当に何やってるんだあの野郎!?(不敬)しかも敵陣に着地してティルフィングを振るってるし!ヤバイよ!あの人危機感全く持って無いよ!
「畜生、ガンドルフも中々だがあの公子はもっとヤバい!」
「とにかく援護だ!竜人はミネルバ様に任せよう!」
ノイッシュが横から騎兵隊を叩く。俺もそれに続いた。一方シグルドは全方位を囲まれながらティルフィングで無双している。オグマとナバールかな?
「エルトシャン!君はノディオン城へ!ここは私が押さえる!」
「感謝するぞ、シグルド!」
エルトシャンが僅かな兵を連れてノディオン城内に侵入するのを見届け、再びシグルドに視線を戻す。あの人この短時間で敵の内部から穴をこじ開けて出て来ちゃったよ。もう全部あの人だけで良いんじゃないかな。
「数ではこちらが上だ!包囲を維持しろ!」
「よくあそこから指示飛ばせるな……」
俺はシグルドの事を少し甘く見てたかも知れんな。反省しよう。
「もうすぐ大将が出て来てもおかしく無いな……」
エルトシャンは部下と共に、ノディオン城内を進んでいた。途中で出会う敵は全てミストルティンで撃破し、あらかた片付いている。
「貴様がエルトシャンか」
「……そういう貴様がここのドルーア軍の大将か。名を名乗れ」
「俺はジュノン。ドルーア四将が一人!」
「ならその四人、俺が全て斬ってやろう」
「フン、貴様は勝てん。俺にこいつがある限りな……」
「!?」
ジュノンは後ろに立てかけてあった槍を取る。その槍は黒く輝き、金の意匠が施されていた。
「その槍は……」
「これか?俺がノディオンからアグスティに出撃した時に手に入れた物だ。しかしこの槍の持ち主は馬鹿でな、大軍に少数で正面から挑んで来おった。奴の首は俺が直々に刎ねてやったわ!」
「……」
「間抜け過ぎて言葉も出らんか?」
「……よくも俺の
「ほう……」
「奴は確かに馬鹿だった……だがな、奴はどこまでも誇り高き勇者だ!!」
「ほざくな!!」
ミストルティンと黒槍セプトネイルが激突する。火花が散り、両者を照らした。エルトシャンは距離を離し、再度突撃する。
「はあぁッ!!」
「ぬうっ!」
ミストルティンの一撃を、ジュノンは大盾で受け止める。しかしその一撃で大盾は真っ二つに割れた。
「何!?」
「そこだッ!!」
ミストルティンの刃が、構えられたセプトネイルごとジュノンの鎧を切り裂いた。ジュノンは断末魔を上げ、よろよろと後ろに下がって行く。
「あぐッ」
そして無防備な頭に、降ってきたセプトネイルの刃が突き刺さった。エルトシャンは倒れたジュノンから刃を引き抜く。
「……すまない、エリオット……」
折れた黒槍を持ち、エルトシャンは城を出た。
「あれは……」
ドルーア軍を退却させ、竜人も全滅させた頃。ノディオンからエルトシャンが出て来た。手には折れた槍を持っている。
「エルトシャン!……その槍は……」
「俺はこれからハイラインに行く。……故郷へと返さなくてはな」
「ならアンフォニーは任せろ」
「……お前には助けられてばかりだな、シグルド」
「私達は親友だろう」
「友、か……」
エルトシャンは槍を一瞥し、遥かな空を見上げた。