ユグドラルにアリティアの元剣闘士をブチ込んだ話   作:塩焼きそば啜郎

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王の誇り

ノディオンが制圧され、ガンドルフ達も合流した。今は束の間の休息だ。

 

「先程戦った男がこんな物を持っていた」

 

そう言ってエルトシャンが見せたのは、水色の透き通ったオーブ。……ん?どっかで見覚えが……

 

「それ星のオーb「星のオーブ!?」

 

……マルスに台詞を取られた。ともかく、オーブは本物のようで、マルスは封印の盾にオーブを嵌め込んだ。

 

「よし、これで完成に近付いた」

「なぁ。俺も似たようなやつを拾ったんだが……」

「君も!?」

 

ガンドルフが茶色のオーブを取り出す。大地のオーブか。ドルーア城ごと地震に巻き込まれて転んだのは今となっては良い思い出だ。

 

「……それを落とした奴は自分を四将と名乗っていた。恐らくあと二つのオーブもその四将が持っているだろう」

 

エルトシャンが推察する。確かにその通りだ。アグスティ城やマディノ城あたりが狙い目かな?

 

「さて、ここからハイラインやアンフォニーを奪還しようとしたが、待ったがかかった」

「待っただと?」

「言ったのは私だ」

 

部屋に入って来る一人の男。赤い髪は整っており、顔にも傷一つ無い。……もう治りきったらしいな。

 

「アルヴィス卿……」

「私……いや、私達も戦場に出ねば陛下に会わせる顔が無い。西方の制圧はロートリッターに任せて貰おう。ゲルプリッターも再編し終えたしな」

「シグルドよ、ここは彼らに任せても良いだろう。アルヴィス郷、アグスティ城には陛下が赴かれるが良いか?」

「それでよい、シャガール王もそれを望んでいるだろう」

 

これで決定だ。マッキリー方面にはアグストリア重騎士団が、ハイライン方面にはロートリッターとゲルプリッターが。俺達は一時休戦だ。さて、シャガールが頑張ってくれるといいが……。

 

 

 

 

アグストリアの平原を、巨大な軍隊が行軍している。先頭には銀の大剣を構えたシャガールが、隣には銀の槍を構えたロレンスがいた。

 

「陛下、前方から騎兵隊が接近しております」

「魔導士で動きを止めろ。全軍で突撃を仕掛けて殲滅してくれる」

「魔導士部隊、迎撃準備!」

 

ロレンスの号令で魔導士達が前に出る。接近して来た騎兵隊を見て、シャガールが号令をかけた。

 

「撃て!」

 

騎兵隊の足元から一斉に火柱が立つ。命中した者は焼死、当たらなくともほぼ全軍が足止めを喰らった。

 

「今だ!全軍突撃せよ!」

 

立ち込める炎を踏み越え、シャガールが敵を斬りつけた。それに続き、アグストリア重騎士団はその圧倒的な質量で正面の敵を粉砕していく。

 

「……あれならアグスティ城は任せられそうだ」

「フン、伊達に諸公連合の盟主を務めてないという事か。何にせよ、次は儂らじゃ。出撃準備を済ませておくのだな」

「言われなくとも」

 

アルヴィスとレプトールが、ノディオン城からその光景を見下ろしていた。やがて二人は屋内に戻って行き、ハイライン方面に向けて出発し始める。

 

「陛下、ノディオン城からロートリッターとゲルプリッターが出撃しました」

「よし、このまま一気にアグストリア全土を解放するぞ!」

 

騎兵隊を撃破し終えたアグストリア重騎士団は、そのままマッキリー領へと進撃した。

 

「ぬおっ!?」

「陛下!」

 

そこで待ち構えていたのは、崖上からのシューターによる猛攻だった。加えてマッキリー城からも騎兵隊が出撃してくる。

 

「ぬぅ、まんまと引っ掛かってしまったわ!後退せよ!防御を固めれば勝てない相手では無いぞ!」

「その必要はねぇなぁ!」

「何!?」

 

シャガールが崖を見る。そこには、こちらを見下ろしているガンドルフ達の姿が。

 

「感謝しろよ!シューターでも配置されてんじゃねぇかと思って苦労して偵察に行ったら、案の定いやがった!あの時はお前に散々苦しめられたからな!」

「……フン、感謝しておこう……」

「さっさと取り返して来な!」

 

重騎士団は再びマッキリー城に進撃する。今度は騎兵隊を正面から相手取り、防御に物を言わせて無理矢理突破、ロレンス率いる親衛隊がマッキリー城を制圧した。

 

「次は……遂にアグスティ城だな、ロレンス」

「必ずや奪還してみせましょう、陛下」

「どんな奴等が占拠しようとあそこは儂の都。何が何でもこの手で奪い返してやるわ!アグスティ城に向かう!」

 

シャガールは再び兵を率いてアグスティ城へ出発した。アグスティ城が建つ丘からはドルーア軍が出撃して来る。今度は騎兵と重騎士が混ざった混成部隊だった。

 

「慌てるな、左右に魔導士を配置して騎兵隊を牽制しろ。ロレンス、正面を突っ切って城に突入するぞ」

「御意。魔導士部隊は左右へ!護衛の重騎士を忘れるで無いぞ!」

 

ロレンスが的確に指示を出し、部隊は素早く配置に着く。敵の動きが鈍った瞬間、アグストリア重騎士団全軍が突撃、中央をシャガールとロレンスの親衛隊が突破して城内へと入った。

 

 

「もうすぐ謁見の間か……」

「陛下、城内の敵は粗方片付けました」

「伏兵がおるかも知れん。警戒を続けろ」

「はっ!」

 

シャガール一行は辺りを警戒しながら慎重に謁見の間へと近付いて行った。そして、勢いよく大扉を開く。玉座には、シャガールよりも大きな男が腰掛けていた。

 

「ほう!貴様がシャガールか」

「如何にも。私こそがアグストリア諸公連合盟主、シャガール。貴様こそ名を名乗ったらどうだ」

「私はゴルザ!この大剣で貴様を叩き斬る者だ」

「面白い……ロレンス!下がっていろ。この不遜な輩はこの手で始末してやる!」

「行くぞ!」

 

共に重厚な鎧を纏った両者が謁見の間を駆ける。銀の大剣がぶつかり合う度に、衝撃音と火花が散った。

 

「どうやら剣の腕は私が上のようだな!」

「ぬぅ……私が剣だけと思ったか!」

 

シャガールは気合いでゴルザの大剣を跳ね返す。そして、魔導書を取り出した。

 

「喰らえ、ボルガノン!」

「ぬおぉっ!?」

 

至近距離で放たれたボルガノンは、ゴルザの巨体を見る見る焼いて行く。シャガールは念の為離れたが、勝利を確信した。

 

「フハハハ!魔法は私が上だったな!」

「……」

 

炎の幕が晴れると、そこにはゴルザが倒れていた。だがシャガールはすぐに異変に気付く。

 

「む……焼け跡が無いだと?」

 

露出している箇所は間違いなく焼けている筈だったが、ゴルザの体には傷一つ無い。シャガールは再び剣を構えた。 

 

「良く気付いたな。近寄った所を斬ってやろうと思ったが……」

「何!?」

 

ゴルザは何も無かったかのように立ち上がる。その体にはやはり傷は無かった。

 

「一撃で仕留めた筈……!」

「陛下!その男が持っているのは恐らく命のオーブ!完全に一撃で仕留めなければ勝ち目はありませぬ!」

「ほう……オーブの事を知っているとは、貴様アカネイアの者だな!?」

 

大剣の矛先がロレンスへ向かう。だがそれはロレンスへと届く事は無かった。

 

「む……」

「言っただろう。儂が始末してやると!」

「ほざけ!」

 

ゴルザは先程よりも熾烈な攻撃を繰り出す。シャガールは防戦一方になり、大剣で受け止めるのが精一杯だった。

 

「口ほどにも無い奴め!」

 

シャガールの鎧をゴルザが切り裂いていく。遂には隙を突かれ、大きく弾き飛ばされた。

 

「死ね!」

 

倒れたシャガールに向けて大剣が振り下ろされる。シャガールはそれを何とか剣で受け止めた。

 

「……」

「その剣ごと切断してくれるわ!」

 

ゴルザの大剣に更に力が入る。その瞬間だった。

 

「今だっ!」

「何!?」

 

シャガールが自身の大剣を引き抜く。当然一撃が鎧に叩き込まれたが、シャガールはそれを受け止め、大剣を抱えて固定した。

 

「馬鹿なっ……」

 

逆に自身の大剣をゴルザの頭部に叩きつけた。ゴルザから力が抜け、シャガールの上に倒れ込む。

 

「む!?どけ、この……不敬者が!」

「陛下!」

「ロレンス……」

 

立ち上がり、言いかけた所でシャガールは吐血する。ロレンスは急いでゴルザから命のオーブを奪い、シャガールに渡した。

 

「……ふぅ、これを期待してなかったら負けてた所だったな、ロレンスよ」

「陛下……ご無事で何よりでございます」

「少しは父上も儂を見直したかも知れん。……さて、最後の仕事だ」

 

シャガールはアグスティ城のバルコニーへ出て、戦場を見渡した。そして叫ぶ。

 

「ドルーア軍よ!侵略者ゴルザは儂の手により討ち取られた!!もうアグストリアは貴様らが我が物顔で歩ける国では無いと知れ!!」

 

その日、アグストリア全土で歓喜が沸き起こり、各地で解放軍が結成された。だが、皇帝メディウスへの道のりは遠い。

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