ユグドラルにアリティアの元剣闘士をブチ込んだ話 作:塩焼きそば啜郎
一方的だった。ロートリッターとゲルプリッターに対抗出来る者はいなかった。天からはメティオによる爆撃、近付けばゲルプリッターの魔導重騎士により殲滅される。更には聖戦士が二名。この二人の前には例え集団で立ち向かおうとも一瞬で塵になるだろう。
「……つまらんな」
聖戦士が一人、レプトールが愚痴を吐いた。以前バーハラで相手した火竜がどれだけ規格外の存在だったかが改めて分かる。
「アルヴィス卿、ここは手分けをしよう。儂はこの先のハイライン城を落とす。貴公のロートリッターには機動力があろう、アンフォニー城を攻められよ」
「確かにその方が効率的だ。しかし火竜が出た時はどうする?」
「……今度こそ儂がこの手で焼き殺してやるわ」
「それは頼もしい。では私はアンフォニーへ向かおう」
ロートリッターは進路を変え、ゲルプリッターから離れる。今が好機と見たドルーア軍が一斉にゲルプリッターへ突撃して来た。
「奴らは我らの敵では無い!トローンの嵐を喰らわせてやれ!」
レプトールの指示の下、魔導重騎士達がトローンを放ち始める。戦場に幾本もの雷が迸り、近付いたドルーア軍は雷にその身を焼かれた。
やがてゲルプリッターはハイライン城が建つ丘の麓にやって来た。だがゲルプリッターの行軍はそこで止まる。
「……来たか!」
レプトールは丘を見上げた。同時に地響きが起き、凄まじい気配が戦場を覆った。やがてそこには、バーハラでゲルプリッターを焼き払った火竜が立っていた。
「……儂が行く!皆の者は退け!」
「レプトール様、それは危険です!」
「舐めるな!儂は雷神トードの血を引く聖戦士!あのような獣を恐れるようではこのトールハンマーを扱う資格など無いわ!!」
レプトールは部下の制止を退け前に出る。火竜は獲物が来るのを確認すると、巨体をゆさぶり歩き始めた。互いに射程圏内に入った事を確認すると、同時に攻撃を始める。
「ゴアァァッ!!」
「喰らえ、トールハンマー!!」
巨大な火炎と漆黒の雷が空中で激突した。火炎と雷は互いに反発し、火竜とレプトールは一歩も引かない。
「ぬ、ぬうぅ……!」
「グルルル……」
遂には持続が切れ、火炎と雷は消滅した。火竜はすかさずレプトールに向かい走り出す。
「近接戦のつもりか……!」
レプトールはトールハンマーを撃ち終えた反動で動けなかった。仮に動けたとしても機動力の低いバロンでは火竜の攻撃は避けられない。
諦めかけたレプトールの横を、一本の雷が走った。レプトールはトローンを放った重騎士を見る。
「何をする!?退けと言ったであろう!」
「……主君をお護り出来ず何がゲルプリッターか!例え貴方様の怒りに触れる事になろうとも、私は貴方様をお護りする!」
まともにトローンを受けた火竜の動きが一瞬止まる。
「……結局、儂もまだまだ未熟者か……ハァッ!!」
レプトールは再びトールハンマーを放つ。全身を雷に貫かれた火竜は弱々しく鳴いた後、地面に倒れた。その目には生気は宿っておらず、口からも煙を吐いている。
「……火竜は倒れた!後はハイライン城を制圧するのみ!」
ゲルプリッターは勢いそのままに、丘を駆け上がって行った。
「レプトールは……上手く撃破したらしいな」
アンフォニー城へ続くなだらかな道。ドルーア軍とロートリッターはここで戦闘を行っていた。
「アルヴィス様、ここは私めにお任せ下さい」
「部下に任せっきりにしたらあの二人に何を言われるか分からん。お前はヴァハの所に行け」
「……御意」
アルヴィスは自身の隣に控えていた将軍、アイーダに言った。アイーダは渋々といった様子で部隊を率いて前線で戦うヴァハの下へと向かう。アルヴィスはそれを見てから、戦場へと向き直った。
「さて、私も行くとしよう」
眼前には騎兵隊。銀の槍を構えた隊長が突撃して来た。
「喰らえッ!」
突き出された槍を横に躱す。エルファイアーで迎撃するが、隊長は紙一重で躱した。
「ほう、腕は立つようだな……」
「貴様の首を取れば大手柄よ!そう簡単に死ねるか!」
「勇ましい事だ!ならば我が神器を受けてみよ!」
アルヴィスはファラフレイムの魔導書を手に取る。
「発動する前に……!」
「無駄だ!」
突然、アルヴィスと隊長との間に炎の壁が現れる。隊長は咄嗟に馬を止めて自滅を防いだ。
「これは……エルファイアー!?一度に二つの魔導を……」
「さらばだ……」
地面から、巨大な火柱が立ち昇る。その灼熱に包まれた隊長は痛みすら感じる暇も無く焼かれ、それを見た他の兵士達は恐怖に包まれた。
「この私がいる限り、ロートリッターに敗北は無い!」
アンフォニーへと間近へ迫ったアルヴィスはそう叫び、再び前進を始めた。
この日、アグストリア全土の内半分が連合軍により奪還された。それと同時に、新たな情報が入って来る。
「陛下、部下を偵察に向かわせた所、オーガヒル島に巨大な城が建設されていた模様です」
「恐らくそれが皇帝メディウスがいるドルーア城であろう。後続の到着を待つのだ」
「御意」
四将の内の三人が討たれた今、決戦の日は着々と近付いて来ている。